元女囚が考える「薬物中毒者の親」問題――米『セサミストリート』では子ども番組で依存症を語る時代に

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2019年10月20日 19:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

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 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

合法の処方薬で中毒に

 突然ですが、子ども向けの番組は見ておられます? 仮面ライダーシリーズとかは主婦のほうがハマってるそうですね。

 私も獄中生活などもあって、やや短い期間ではありましたが、子どもたちとテレビは見てました。『仮面ライダーアギト』(テレビ朝日系)の要潤さんが好きやったのは前にも書いてますが、今回は、子ども番組は子ども番組でも、アメリカの『セサミストリート』のお話です。

 『セサミストリート』もまったく見たことないわけではないですが、ぶっちゃけピンときませんでしたね。「人形がなんかしゃべっとるなあ」くらいで。でも、もう50年も続いて、140カ国以上で放送されているそうです。

 番組には「いじめの被害者」や「親がムショにいる子ども」が登場するなど、わりと社会的なテーマも扱ってるそうで、それが人気の秘密なんでしょうかね。最近では、「オピオイド中毒の親」を持つキャラクター「カーリー」が話題になりました。更生のために離れて暮らすお母さんのこと、面倒を見てくれている里親さんのことなどを話したそうです。

 日本ではあまりメジャーではないですが、覚醒剤と同じような「多幸感」のあるオピオイドという化合物は、鎮痛剤にも入っていて、日本でも処方してもらえます。でも、これも覚醒剤と同じで、多幸感のあとには無気力になります。気持ち悪くなることもあるし、あとは興奮して騒いだり、記憶障害や精神障害の症状も出ます。ある意味、覚醒剤よりもひどいかもです。それに、摂りすぎると、呼吸抑制作用の末に昏睡状態になって死ぬこともあります。要するに「合法の処方薬も、たくさん飲んだらアカン」という例なんですね。

 BBCニュースによりますと、アメリカでは1日に約192人がオピオイドのOD(オーバードーズ、過剰摂取)で亡くなっていて、社会問題になってるんですね。毎日200人近くも死んでて、大丈夫なんですかねアメリカは。ほかの死因で死んでる人はもっといてるでしょうし。そして、なんと約570万人の子どもたち(11歳未満)が、オピオイドほかいろんな「薬物中毒」の親と同居しているそうです。570万人て、ピンときます? 

 編集者さんに聞いたら、「兵庫県の人口が今年の9月1日時点で約540万人だそうです」と教えてくれました。なんと兵庫県民より多いんですね。しかも「子どもと同居してる」中毒者だけですよ? 独居とかの中毒者なら、もっといてるんですね。アメリカ怖すぎます。

 そんなアメリカですから、子どもの番組に、そんなキャラも出てくるんでしょう。でも、これは未来の日本の姿かもしれません。

 親が中毒者の場合、子どもへの影響は育児放棄や虐待、貧困など、いくらでもあります。子どもが一緒にラリっちゃうこともあるでしょうが、ほとんどは不安で孤独でしょうね……。寒くて、おなかもすかせてるかも。そして、そういう子どもたちは、ほとんどが親と同じ道を歩みます。『セサミストリート』の番組も見てみたいと思いました。

 幸いウチは私以外の家族がしっかりしてて、子どもたちに影響はありませんでしたが、服役中は会えませんから、寂しい思いはさせてしまいました。やっぱり違法薬物は百害あって一利なしです。絶対にやめてくださいね。

 田代まさしさんは、薬物に手を出す時に「自分だけは大丈夫(=依存症にならない)と思った」そうです。これは私を含めて、たいていの(元)中毒者が思うことです。覚醒剤と違って、合法のオピオイド系鎮痛剤や睡眠導入剤は密売人から買うリスクもなくて、お値段も高くないのですが、本当にいいことは何もありませんよ。

 今回はちょっと説教くさくなりましたが、違法薬物については何度でも説教くさくいこうと思っています。

中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)」

※この連載が本になりました!
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