ユニクロユーの落とし穴――トレンドを押さえたコラボラインは「高品質&低価格」でも、購入には要注意!?

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2019年10月20日 22:32  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

ユニクロ公式サイトより

――ファッションライター・南充浩氏が、いま話題のファッションニュースに斬り込む!

 日本人のほとんどが買ったことがあるという意味で「国民服」とまで言われるようになったユニクロ。その国内売上収益がついに8700億円に到達しました(2019年8月期決算連結業績)。直営店舗型の単独アパレルブランドとしては、国内で圧倒的1位の売上高です。以前は「安物」「ダサい」の代名詞として、ユニクロ着用がバレることを「ユニバレ」、着用しているユニクロアイテムが他人と重なることを「ユニ被り」などと揶揄されましたが、今では「ユニバレ」「ユニ被り」も当たり前で、誰も話題にしません。逆にブランドイメージは高まる傾向にあり、その転機の1つとなったのは、有名デザイナーとの「コラボライン」だと言えます。

 ユニクロは2006年から、さまざまなデザイナーやブランドと何品番かをコラボした「デザイナーズ・インビテーション・プロジェクト」を行っていましたが、大々的にその路線を打ち出したのは、ジル・サンダー氏とのコラボライン「+J(プラスジェイ)」(09年スタート)からです。その後、「アンダーカバー」とのコラボライン「UU」を経て、現在は、クリストフ・ルメール氏とのコラボライン「ユニクロユー(以下、ユニクロU)」が展開中で、同ラインはこれまでにない長期契約となっています。

 「長期」となるくらいですから、恐らくは、ユニクロ側とルメール氏の関係が良好な上に、売上高もそれなりに好調なのではないかと推測されます。なお、この「ユニクロU」に続いて、「JWアンダーソン」や「エンジニアドガーメンツ」とのコラボも展開されました。

 さて、ユニクロの衣料品は、低価格ゾーンでありながら、圧倒的に素材と縫製が良く、高く評価されています。一部の百貨店向けブランドやセレクトショップ向けブランドより「品質は高い」とまで言われているのです。個人的には特に冬のウールセーター類のコスパの高さは群を抜いていると感じています(カシミヤセーターは値段相応)。

 そのため、8700億円もの売上収益を叩き出すのも当然だと言えるものの、定番のダウン、パーカー、フリース、セーターなど、商品のラインナップがベーシックすぎて飽きてしまうことはないでしょうか? レディースもそうですが、とりわけ衣料品のデザインバリエーション自体が少ないメンズにおいてはどうでしょうか? 筆者は、やはりユニクロは「飽きがきやすい」というのが、正直な印象です。

 例えば冬のセーター。基本となる黒、グレー、紺と3色を揃え、あとはアクセントとなる赤やブルー、紫など2〜3色買い足せばそれで終わりになります。全10色全てを揃えようという人はほとんどいないでしょう。次に買うときは、以前に買った物が破れたり傷んだりしたときになるものの、よほど乱暴で粗雑な扱いをしなければ、だいたい3年前後は持ちますから、買い替え・買い足しは3年に1度ということになります。

 ユニクロがこれまでその品質を磨き続けてきたベーシック衣料というのは、ユニクロ側にとって、販売期間を長く設定できるというメリットがある半面、買い替え・買い足し頻度を低くしてしまうというデメリットをはらんでいるのです。最近は無駄遣いの象徴としてやり玉に挙げられることが増えたトレンド衣料品ですが、ブランド側にとっては、はやり廃りが激しいため販売期間が短くなるというデメリットがありつつ、買い替え・買い足し頻度を高くできるというメリットもあります。

 この買い替え・買い足し頻度が低くなるというユニクロのビジネス上の弱点を補完するのが、現在の「ユニクロU」をはじめとするデザイナーコラボラインだと言えます。

 業界では、「ユニクロU」ほかデザイナーズコラボラインに対して、「最新トレンド品が、この値段、この品質で買えるとは驚きだ」という意見が多く、おおむね高評価。ちなみに筆者も業界の端くれにいるからなのか、実はユニクロの本体ラインよりも、「ユニクロU」含むデザイナーコラボラインの方を多く買っていて、この3年間くらいのユニクロ購入品の約7割はデザイナーコラボラインなのです。私ですら、こうした有様ですから、業界からの評価がいかに高いかがおわかりいただけるのではないかと思います。

 しかし、業界の評価と一般のマス層の評価は必ずしも一致しません。「ユニクロU」も、一般の購入者視点で見ると、「欠点」となり得るポイントはありそうです。

「ユニクロU」はどのようなラインかというと、まずその特徴として、基本的に最近のトレンドである「ルーズシルエット」が挙げられます。よほど体格の大きい人以外はMかLサイズで着られるのではないでしょうか。また、ルメール氏がフランス出身のため、どことなくフランステイストもあり、さらに色は基本的に黒、紺、ベージュが中心ですが、中に1色か2色、アクセントカラーが差し込まれているのも特徴。 なお、使用素材はユニクロ本体よりもワンランク上のものが多く使われており、商品価格も1,000〜3,000円くらい高くなっています。

 ユニクロUは使用素材、縫製仕様ともに品質が高く、最新のトレンドを安値で試せるとはいえ、一般の購入者の中には「着こなすのが難しい」と感じる人が、少なからずおられるのではないかと思います。その理由はさまざまあるのでしょうが、個人的に真っ先に思い浮かぶのが、先ほど指摘した、トレンドの「大きめのルーズサイズ」という点です。

 15年頃から、それまでの流行だった「ピチピチ」「ピタピタ」のタイトシルエットへの反動として、ダボっとしたルーズシルエットへの注目が始まりました(この火付け役は「ヴェトモン」だと言われています)。ユニクロの商品も、ベーシックとはいうものの、トレンドはそれなりに反映するので、15年頃までは、比較的タイトなシルエットが主流でしたが、今ではややゆとりのあるシルエットの商品がほとんどとなっています。そして「ユニクロU」のアイテムは、このゆとりある本体ラインよりも、またさらに大きめのサイズ感となっているのです。

 ファッション好きの若い人たちの間では、あえて2〜3サイズ大きめの服を着ることがはやっていますが、中高年層に、その着こなしはなかなか似合いません。本体ラインでMサイズだからといって、「ユニクロU」でもMサイズを選べばよいかというと必ずしもそうではなく、体型や体格にもよりますが、Sサイズを選んだ方がすっきり見えるという人も少なくないのです。つまり「ユニクロU」はサイズ選びが難しいと言わねばならず、そこを間違えるとダボダボでだらしなく見えてしまうという危険性があります。

 また、「ユニクロU」のカラー展開にも、欠点というより「惜しい点」が存在します。先ほどアクセントカラーが差し込まれていると指摘しましたが、結構目立つ色が選ばれるので、苦手と感じられる方も多いのではないかと考えられるのです。ただし、柄物は少なく、ほとんどが無地なので、その部分では、多くの購入者にとっては手に取りやすいのかもしれません。

 ちなみに柄物の話で言うと、「JWアンダーソン」とのコラボラインには柄物が多く、しかもアクの強い特徴的な柄も珍しくありません。この柄が一般的に不評なのか、「JWアンダーソン」コラボアイテムには売れ残る品番が多く、最終的に驚くほどの安価に値下げされる場合が結構あるのです(逆に、お買い得とも言えますが)。

 このように、購入者視点だと、「欠点」や「惜しい点」もある「ユニクロU」ですが、その部分に気を付ければ、本当にお買い得な商品が多いのも事実。ぜひチャレンジしてもらいたいと思います。
(南充浩)

このニュースに関するつぶやき

  • セーター5色も買わないでしょ普通。しかも3年でダメになるって意味が判らない。ちなみに10年以上前に買ったグレーのタートルネックセーターは冬のヘビロテだったけど今でもまだ着てるし。
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