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心霊写真は錯覚で幽霊は脳内映像? “プロレス”に学んだオカルトの復活劇

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2019年10月21日 17:00  AERA dot.

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写真空前のプロレスブームの中心にいたアントニオ猪木 (c)朝日新聞社
空前のプロレスブームの中心にいたアントニオ猪木 (c)朝日新聞社
 かつて一世を風靡していたオカルトブーム。しかし、時代の移り変わりとともにその人気にも陰りが見え始め、いつしか冬の時代を迎えていた。オカルト研究家の山口敏太郎氏は、物書きとして駆け出しだった頃、自身が大好きな“プロレス”をヒントにオカルト業界の立て直しを図ったという。

*  *  *
 昭和50年代後半から60年代にかけて日本では空前のプロレスブームが巻き起こっていた。アントニオ猪木、ジャイアント馬場という両巨頭を筆頭に、藤波辰爾と長州力の名勝負数え唄、初代タイガーマスクによるジュニアヘビー級ブーム、ジャンボ鶴田と天龍源一郎による鶴龍対決などが多くのファンを魅了した。しかしながら、佐山聡『ケーフェイ』、ミスター高橋『流血の魔術 最強の演技 すべてのプロレスはショーである』という関係者による暴露本の影響もあってかプロレス熱は段々と下降線をたどり、格闘技スタイルのUWFがつなぎ役となり、大衆の支持は格闘技へと移行していく。

 プロレスブームが終焉するまで、プロレスは真剣勝負と思われていた時期があった。しかし、格闘技全盛の今、そういったプロレス神話を端から信じるファンも少なくなってきている。

 昭和の日本は確かに各分野で「ウブな国」であった。オカルトも同様である。大の大人がユリゲラーという手品師の行うスプーン曲げを超能力と思い込み、ノストラダムスの大予言を真剣に信じ、来たるべき終末に恐怖した。子供たちもツチノコや妖怪ポストを探し、石原慎太郎氏はネッシー探検隊を組織した。昭和に生きた一部の日本人はオカルトを心から信じ、必ず奇跡が存在すると思い込んでいたのだ。

 昭和40年代から始まり50年代まで続いたオカルトブームは、終焉以降も一定の支持を受けて熱が続いていく。しかし、完全にとどめを刺されたのはオウム真理教事件だった。オカルト雑誌で「ただの空中ジャンプ」を「空中浮遊」と喧伝した麻原彰晃は、オカルト雑学を網羅した知識体系を駆使して多数の信者を獲得した。その後、このカルト集団がどのような事件を引き起こしたのかは、説明するまでもないであろう。その結果、テレビから心霊番組が消え、厳しいコンプライアンスが設定された。「オカルト好き=愚かな人」という構図が構成され、オカルトは完全にとどめを刺される形となった。

 筆者が物書きとしてデビューしたのは平成8年であり、オカルトは冬の時代を迎えていた。プロレスとオカルトが同じくらい好きであった自分は、プロレスライターになるかオカルトライターになるかデビュー直前は迷ったのだが、戦略的に競合する人材が枯渇していたオカルトを選択した。確率的に手強い相手が少ないほうが勝ち抜けるという打算が心中にあったのだ。

「落ち込んだオカルト業界をどう立て直すか?」と考えたとき、プロレス界での先例が頭をよぎった。プロレスの真剣勝負論が幻想だと露呈してしまった時、プロレスファンの心をとらえたのはUWFが行った格闘スタイルのプロレスである。もちろんプロレスの範疇は超えてはいないが、ギリギリまでリアル格闘技に近づけたUWFスタイルは空前の人気を集め、最後のプロレスブームの立役者となった。

 このスタイルはオカルトでも使える。そう確信した筆者は、オカルトの既存の価値観を完全破壊すべきであると考えた。妖怪はあくまで民俗学で語る。心霊写真は錯覚に過ぎない。幽霊は脳内映像である。未確認生物は変異個体か新種、宇宙人は存在するが地球には来ていない。人間の未知の能力は存在するが超能力とは呼ぶべきではない。山口敏太郎が始めたオカルトの新スタイルは、ロープに振っても返ってこないUWFスタイルをオカルトに応用したものであった。もちろん、UWFがプロレスの範疇にとどまったように、95%のオカルトを否定しながらも5%のオカルトを信じるというスタイルを心がけた。

 すると興味深いことにプロレス界と全く同じような現象が起こった。業界内部のオカルトを扱う編集者やライターは山口敏太郎を「オカルト業界の破壊者」として潰しにかかったのだが、ファンの間ではネットを中心に支持が広がっていった。2000年代に入るとインターネットの普及とともに筆者への賛同者がさらに増えていった。

 ここ数年共通の友人を通じて宴席で何度か前田日明氏と同席することがあった。影響を受けた前田氏に「Uの遺伝子はプロレス界だけじゃないんですよ。他の分野にも影響与えているんです。僕はUWFがプロレスでやったことをオカルト界でやっています」と伝えた。プロレス界の方法論をオカルト界に移管することで新たな技術革命が起こったのである。

 増税が実地された今、多くの業界が不況におびえている。しかし、他分野に目を向ければ必ず脱却する方法があるはずである。他の業界の成功事例を取り入れれば、必ず前途は開ける。どの業界にも眠っている宝の山「Uの遺伝子」、それが扉を開ける重要なカギだ。

【著者プロフィール】
山口敏太郎/1966年徳島県生まれ。神奈川大学卒業、放送大学12で修士号を取得。1996年学研ムーミステリー大賞にて優秀作品賞受賞。著書に「人生で大切なことはオカルトとプロレスが教えてくれた」「マンガ・アニメ都市伝説」「ミステリー・ボックス―コレが都市伝説の超決定版!」「都市伝説学者山口敏太郎」など。オカルト研究家としてテレビ、ラジオなどで活躍中

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