橋本愛、久々の民放連ドラ『同期のサクラ』で発揮する存在感 助演だからこそ伝わる、その器量とは

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2019年10月23日 06:11  リアルサウンド

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『同期のサクラ』(製作著作 : 日本テレビ)

 離島から東京にある大手ゼネコン企業に就職した“忖度できない”性格の主人公・北野サクラ(高畑充希)と、彼女と同期入社で個性も目標もバラバラの4人が様々な逆境にぶつかりながら共に乗り越え成長していく10年間の軌跡を、1話1年という斬新な構成で描きだした日本テレビ系列水曜ドラマ『同期のサクラ』。一昨年の夏クールに放送された『過保護のカホコ』の遊川和彦と高畑充希が再タッグを組んだことでスタート前から大きな話題を集めていたわけだが、その出来栄えは予想を大きく上回る。


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 本作で何よりも重要なのは、人との距離感が近くマイペースでまっすぐな主人公のサクラのキャラクター性なだけに、必然的に彼女を取り巻く4人の同期たちの個性も重要さを増していく。新田真剣佑演じる木島葵の上昇志向の高さであったり、岡山天音演じるネガティブ思考だが設計への確かなセンスを持ち合わせている土井蓮太郎、竜星涼演じる人当たりの良い縁の下の力持ちタイプの清水菊夫、そして橋本愛が演じる、サクラと正反対の性格の持ち主で何度もぶつかり合う月村百合。高畑を筆頭に、映画やドラマなどで活躍を続ける20代を代表する正真正銘の実力派キャスト陣が、実に絶妙なバランス感覚を見せつけてくれているといえよう。


 その中でも注目したいのは、やはり百合役を演じる橋本だ。つい最近もNHKの大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』に出演していただけに、あまり“久しぶり”な感じはしない彼女ではあるが、意外にも民放の連続ドラマにレギュラー出演するのは『若者たち2014』(フジテレビ系)以来5年ぶりのこと。橋本の名前が全国区になったのはおそらくNHKの朝の連続テレビ小説『あまちゃん』であるが、それ以前に出演した『告白』や『桐島、部活やめるってよ』ですでに大きな注目を集めた。その後もNHKのドラマではレギュラー出演があるとはいえ、彼女の主戦場となるのは映画。現代ではすっかり少なくなった“映画女優”としてキャリアを積み重ねてきた彼女が、民放連ドラで見せるその存在感たるや、主演の高畑を凌駕するほどだ。


 貫禄たっぷりの演技は第1話から発揮された。入社間もない同期5人が新人研修で同じ班となり、課題としてサクラの故郷に掛ける橋の模型作りに悪戦苦闘する中で、強いこだわりをみせて何度も作り直そうとするサクラを、百合は怒鳴りつけるのだ。そのかなりハイカロリーな演技は、一瞬でドラマ全体のムードをガラリと変える。最初は愛想笑いを浮かべながら、サクラの腕を掴むと口元は笑顔のまま目から妥協が消え、そして表情全部を使って一気にまくし立てるという一連の演技はまさに圧巻。


 ここで同じ画面に映るのが、仮に同世代でもテレビスケールに留まるレベルの俳優たちであったならば、良くも悪くも完全に橋本ひとりの独壇場となりかねないシーンであったように思える。しかしそこは、高畑や新田といった映画主演級の実績の持ち主と、竜星と岡山の若き名バイプレイヤーだからこそ綺麗に受け止められ、作品全体のバランスはもちろん遊川脚本の魅力を一切損なわない巧妙な芝居になったといえるだろう。あくまでも主人公の好対照になる存在として助演に徹しながら、そのポテンシャルを抑制せずに解放しきれる環境が整っている。そう考えると、実に贅沢なアンサンブルを楽しめるドラマだ。


 23日に放送される第3話では、そんな橋本演じる百合がフィーチャーされる物語が展開するとのことで、予告映像ではまたしてもサクラを怒鳴りつけるシーンがメインとなって構成されているのも興味深い。第1話のファーストシーンで赤ん坊を抱いて歩いていた橋本が、初めて挑む母親役としての本格的な芝居を見せてくれることはもちろん、今後のドラマの展開にも関わってくるであろう、サクラという人物によって心動かされる百合の心情を橋本はどのように表現してくれるのか、大いに注目しておきたい。 (文=久保田和馬)


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