ホーム > mixiニュース > IT・インターネット > IT総合 > 「車輪の再発明はもう止めよう」BtoBマーケの才流、ベイジ、WACULが自社ノウハウをシェアする理由

「車輪の再発明はもう止めよう」BtoBマーケの才流、ベイジ、WACULが自社ノウハウをシェアする理由

0

2019年10月23日 07:02  MarkeZine

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

MarkeZine

写真「BtoBサイトチェックリスト/ワイヤーフレーム」より抜粋
「BtoBサイトチェックリスト/ワイヤーフレーム」より抜粋
 BtoBマーケティングには、形式知化できる領域が存在する――。その考えに基づき、BtoBマーケティング支援の才流、Web制作会社のベイジ、Webサイト分析・改善提案ツール「AIアナリスト」を提供するWACULの3社は、BtoBサイト改善の勝ちパターンをまとめた「チェックリスト/ワイヤーフレーム」を公開した。本記事では、3社が社内で培ったノウハウを無料で公開するに至った理由、サイト改善を高速で進めると見えてくる組織やビジネスの課題、そしてマーケターがリソースを割くべきBtoBマーケティングの本質はどこにあるのかを聞いた。


■「車輪の再発明をなくしたい」社内向けのノウハウを公開


●「BtoBサイトチェックリスト/ワイヤーフレーム」について



「BtoBサイトチェックリスト/ワイヤーフレーム」より抜粋



 BtoBマーケティング支援の才流、Web制作会社のベイジ、Webサイト分析ツールを提供するWACULの3社は、様々なBtoB企業のサイト制作・改善で蓄積したノウハウをまとめた「BtoBサイトチェックリスト/ワイヤーフレーム」を公開(関連リンクを参照)。グローバルナビゲーション、CTA、ホームといったサイトの各要素について、見本となるフレームとチェック項目を紹介している。




(左)株式会社才流 代表取締役 栗原康太氏

(中央)株式会社ベイジ 代表/ナイル株式会社 UX戦略顧問 枌谷力氏

(右)株式会社WACUL 取締役CIO 垣内勇威氏


――まずは、3社合同で「BtoBサイトチェックリスト/ワイヤーフレーム(以下、リスト)」を公開した経緯について教えてください。


枌谷:前提として、BtoBビジネスにおいて自社サイトを充実させることは非常に重要です。BtoBは情報入手のためのチャネルが少なく、特に検討の初期段階では、企業のサイトしか情報源がないことも少なくありません。


栗原:展示会やDMなど、他の方法で接触した人も、一度はサイトを訪問するため、整えておかないと機会損失が大きい。しかし一定の型はあるので、手を付ければ結果は必ずついてきます。


――BtoBのサイトには一定の型がある?


栗原:はい。今回リストを作成した根底にも、BtoBのサイト改善には成果を出すための「型」が存在するという考え方があります。私は10年近くBtoBマーケティングに携わってきましたが、勝ちパターンがあると確信しています。


 しかしこうした知見はなかなか共有されることがなく、あちこちで同じような実験と検証が続けられている。とても非効率だと感じていました。そのため才流とベイジが社内用に作成していたワイヤーフレームやチェックリストを再構成し、WACULが有するデータを基に内容を精査し、公開に至りました。


垣内:サイト制作に限らず、デジタルマーケティングには「車輪の再発明」が本当に多い。バズワードや怪しい話にだまされてしまう初心者も多く、そういうものは根こそぎなくしたいと考えています。


 デジタルの本質はコストカットにあるはずなので、無駄なことにお金や時間を使わずとも「80点までは誰でも最速でとれる」状況を作っていきたい。その上で、より本質的な仕事に時間を割いてほしいのです。


枌谷:Web制作会社やデザイナーの「クリエイティブ」に対する認識も、ビジネスの現場の実状とズレているように思います。誰も思いつかなかったようなものをゼロから作るのがクリエイティブで、なんらかの「型」に従うのはクリエイティブではない、という感覚を持ったデザイナーも多いのではないかと。


 ビジネスにおけるクリエイティブの本質は、問題解決に向けた創意工夫の結果であり、打ち手の目新しさではないはず。問題を解決できるなら、今まで誰も考え付かなかった表現である必要はないのです。それなのに、成果の出る「型」を知らなければ、本質的にはまったくクリエイティブではないことをクリエイティブだと錯覚し、発注企業もWeb制作会社もそこに時間とお金を使ってしまう。


栗原:たまにマーケターから「制作会社と馬が合わず、1年近くサイトリニューアルプロジェクトが続いている」という話を聞くことがあります。こうした無駄をなくすために、業界のベースとなるものを作りたいというのも、今回の意図のひとつです。


■サイト改善の無駄と本質 本当に時間を割くべきなのは?


――サイト改善における非効率をなくし、より本質的な仕事に注力してほしいというのが、リストを公開した大きな理由なのですね。たとえばどのような点に無駄が多いと感じられていたのでしょうか。


垣内:A/Bテストを延々と繰り返すのは良くないですね。BtoB領域では根絶したい。変えてしまって落ちたら戻せばいいし、伸びたらOKというくらいで良いのではないでしょうか。


枌谷:大半のBtoBサイトのセッションは月数千から数万、CV数は月十数件、ということも珍しくありません。このような母数が少ないサイトでA/Bテストを行っても、偶然による数字の偏りが強く現れるため、あまり参考にならないことが多いのです。


――A/Bテストにかける手間と、得られる事業インパクトを天秤にかけて考えてみると、本当に実施すべきと言えるのか、ということでしょうか。


枌谷:その通りです。サイト改善で根本的に考えなければいけないのは、ターゲットは誰で、彼らはどういう体験をしていて、その体験を踏まえるとどういうコンテンツやメッセージを届けるべきかということ。マーケターは正解が見えないこれらの問いを突き詰めることに、できる限り時間を費やすべきです。


 それなのにボタンの色や位置についてずっと悩み続けているのは、ゲームにたとえるなら、本当はドラゴンを倒さないといけないのに、スライムの倒し方で試行錯誤しているような感覚です。


栗原:ワイヤーフレームを使う利点は、インパクトの小さい検証を繰り返すことをやめ、本当に議論すべき点に時間を使えることでしょう。クライアントさんや当社のメンバーには、「何も考えず、ワイヤーの通りに埋めてください」と伝えています(笑)。


 これに沿って改善していくと、CV率は間違いなく上がります。すると「集客を増やさないと」「CVは増えているのに商談につながっていない」など、最速で次の論点に移ることができるはずです。


枌谷:リストには、さらっと書いてあるものの、実行するには難しい項目も含まれています。しかしやるべきことは洗い出してあるので、やりやすいものから手を付けていき、難しいものはしっかり時間を割いて議論すると良いのではないでしょうか。


■サイト改善を高速で進め、コンテンツ制作に注力せよ


――では、リストを基に改善を進めるにあたって、マーケターが知っておくべきポイントはありますか。


枌谷:BtoBサイトの改善で最も重要なのはCTAだと思います。当社がクライアントさんのサイト改善に取り組む際にも、まずはじめにCTAの改善から取り掛かっています。


垣内:リソースのない会社は、まずは「トップ」「フォーム」「ブログ」の3要素を置くだけで十分です。シンプルなサイトの場合、セッション数の8割はトップから入ってきますし、CVする人の約半分は、トップから直接フォームに遷移しています。


栗原:枌谷さんが話したように、リストは「これを揃えれば、BtoBマーケティング活動はなんでもできる」という要素を網羅しているので、一通り整備が終わったら、コンテンツ制作や広告、営業プロセスの改善などに注力したほうがインパクトが大きいと思います。


垣内:その通りですね。サイトリニューアルの大半はCVが増えず、むしろ落ちてしまうこともあるのですが、コンテンツを足すとしっかり増えます。サイトはこのリストを使って2秒で整備してもらい(笑)、コンテンツ制作にリソースを割くことをお勧めします。


■サイトにメスを入れると、組織やビジネスの問題が見えてくる


――リストを使うと改善のスピードは上がっていくと思いますが、次はどのような課題が見えてくるのでしょうか。


枌谷:サイト改善がサイトの中だけで完結することはまれで、突き詰めるとほとんどが組織の話に行きつきます。たとえば「電話番号を表示したほうがいい」と言っても、「電話が増えても対応する人員がいないから難しい」と、勝ち筋が見えているのに実現できない場合も多いのです。


垣内:BtoBのサイトはECと違い、それ自体で完結するものではなく、得たリードをどう営業につなぐかというのが本当の伸びしろです。しかし組織が分断されてしまっているために、サイト修正だけが進み、成果につながらないケースを、私もたくさん見てきました。


枌谷:「CVは140%近く上がったのに、売り上げにつながっている実感がない」と相談を受けたこともありました。話をよく聞いてみると、増えたCVを営業サイドで追えていなかったことがわかりました。


垣内:リードがとれてくると、それをクロージングするための人員や能力が必要になりますよね。するとやるべきことは、サイト改善から「営業のリソース確保・育成」に変わっていく。それがだめなら、いかに質の高いリードをとるかを工夫しようということになります。


栗原:サイト自体のパフォーマンスは改善したものの、商材そのものの解約率が高過ぎてLTVが低く、マーケティングに予算を投下できないというケースも度々目にします。


 本質的にやらなければいけないのが、LTVを伸ばしてCPA、CACを十分に確保し、マーケティング活動が十分できる状態にすること。こうした方向性で議論を進めていく必要があると感じています。


 サイトのCV率は無限には上がらないので、ビジネスの成長を考えて、サイトに閉じない視点を持つことが大切です。


■「型」を使って効率化し、本質的な課題に向き合おう


――最後に、皆さんの考える「良いBtoBサイト」、そしてそれを実現するためにリストをどう活用すべきか、考えを聞かせてください。


垣内:理想的なのは、流入別に多様なCVを用意しているサイトです。BtoBの商材は難解なものが多く、サイトだけで説得し切ることは難しい。そのため、流入時の期待に合わせたCVを複数用意することが最も重要です。トップページを訪問したユーザーには「無料トライアル」や「サービス資料請求」といった訴求が良いですし、ノウハウ系のコラムを読んだユーザーには「ノウハウ冊子ダウンロード」が有効でしょう。


 コンテンツの充実度も大切です。良質な記事やホワイトペーパーが大量にあれば、新規リードも獲得できますし、既存リードを掘り起こすためのシグナルも検知しやすくなるはずです。


枌谷:私はマーケティングとのシンクロ率が高いことが、良いサイトの条件だと考えています。それを実現するために、質の高いコンテンツや使いやすいUI、ベターなビジュアルなどを追求しているはずです。


 根本的に重要なのは「良い組織」で「良いマーケティング」を行うことなのですが、組織やマーケティング全体の改善については、正解が見えにくい。一方、比較的ノウハウ化しやすく、リソースを最小化できるのが、たとえば今回リストを公開したような領域です。


 WebディレクターやWebデザイナーには、リストを活用して車輪の再発明を減らし、マーケティングとのシンクロ率が高い「良いBtoBサイト」を最短距離で実現してもらいたいです。


栗原:繰り返しお話してきたことですが、サイトのコンテンツの並び順やボタンの色、セミナーページをどう作るかなど、インパクトの小さい箇所にマーケターの思考リソースが割かれている状態は、あまりにもったいないと感じています。


 顧客のインサイトを捉えること、顧客や市場へ伝えるメッセージを考えること、社内外と良いチームを作ることなど、経営者やマーケターがより本質的な課題に時間とお金を使えるよう、今後も成果が出る「型」を開発・発信していきたいと思います。
    ニュース設定