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台風19号報道で、なぜNHKは民放に圧勝したのか…縦と横の連携に“雲泥の差”

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2019年10月23日 19:31  Business Journal

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写真台風19号、東日本各地に被害 長野県(写真:AFP/アフロ)
台風19号、東日本各地に被害 長野県(写真:AFP/アフロ)

 10月12日に東日本を襲った台風19号の報道では、民放はNHKに完敗だった。NHKは12日(土)のほぼ終日と13日(日)の多くを台風情報の報道に費やしたが、民放はほとんどがレギュラー番組を放送し、一部の時間帯で特別番組を組んだが、刻々と変わる状況を伝えるにはとても満足のいくものではなかった。


 NHKは、一日中災害報道ができる環境(豊富な数のアナウンサー、スタッフと、地方局の存在)があり、刻々と新しい情報を届け続けることができた。多くの視聴者も「さすがNHKだ」と感じただろうし、民放各局は力量の差を嫌というほど感じたことだろう。それは視聴率に歴然と表れている。


 民放各局の災害報道は「人・物・金」の三拍子が豊富なNHKに太刀打ちできないが、今回の報道で致命的な格差を生んだ最大の理由は、台風の通過した日が土日だったことだ。筆者もときどきテレビに出演しているので、土日にも何度かテレビ局に出向いたことがある。民放局の土日は、一般企業と同じように驚くほど閑散としている。平日と比べて生放送番組が極端に少ないので当然のことだが、エレベーターを乗り降りする人もほとんどおらず、スタッフルームもまさに閑古鳥状態だ。筆者は土日にNHKに出向いたことがないのでわからないが、おそらくNHKも同じだろう。ただNHKには、緊急時に備えるスタッフがそれなりに控えている。


スタッフは番組単位、曜日単位

「今までにない大型の台風が上陸するのがわかっていたのだから、スタッフをあらかじめかき集めておけばよかったじゃないか」と思われるかもしれないが、それは民放には至難の業なのだ。NHKは、縦(一日の番組を通しての管理)も横(全国を一括する管理)も東京の本社で掌握し、一括管理(番組編成)ができる。


 しかし、民放各局はそれができない。横の面では地方の系列局の全面的な協力が必要になるが、グループ企業とはいえ、番組編成を強引に変更してスタッフの協力を依頼することは難しいだろう。また、縦の面でも、極端に言うと「一つひとつの番組を独自のスタッフが制作し、単にそれをつないでいるだけ」であり、他の番組と協力をしてひとつの番組をつくることはほとんどしない。


 民放では、実働部隊である現場スタッフのほとんどは、社員ではなく外注先の制作会社所属で、局の社員だけでは番組をつくることができない。NHKも社員だけで制作しているわけではないが、『クローズアップ現代+』や特集番組などでは、地方局のスタッフやアナウンサー、記者などが中心となって、東京のスタッフと共同で番組をつくる習慣がある。民放はそれができない。



 しかも、平日毎日放送されるワイドショーやニュース番組でも、統括プロデューサーは同じでも、ディレクター以下の現場スタッフは曜日ごとの担当になっているケースが多い。曜日をまたいで番組全体の管理は統括プロデューサーが行っていたとしても、現場スタッフは担当曜日が違えばつながりは薄い。


 災害時に土日に無理やりスタッフを集めても、開けて月曜、火曜の番組がつくれなくなる。地方局はもっと台所事情が苦しいので、スタッフも非常に少ない。全国の都道府県に地方局やスタッフが常駐しているNHKと比べれば、どんな番組をつくっても見劣りはする。


 人・物・金が少ない民放各局は、災害であっても現地に出向くアナウンサーや記者を限定せざるを得ない。そのため、どうしても現地レポートが少なく、スタジオ展開が異常に長くなる。視聴者はスタジオトークではなく、「災害現場が今どうなっているのか」を観たい。 これは、災害時だけではない。民放は自前では2〜3カ所しか現地レポートができないので、視聴者提供の映像を多用する傾向が強い。アナウンサーが少ないため、記者やレポーターにコーナー司会をさせている番組もある。記者自身が現地で取材をして、その報告をするのならわかるが、スタッフがつくった台本を読んでいるだけの記者やレポーターもいる。いくら「人手がない、カメラなどの機材や専門スタッフが限られている、予算も少ない」といっても、足で稼ぐことをしないで机の上だけでつくる報道番組は、いかにも情けない。しかし、これが民放各局の現状である。


 だから、ワイドショーでは、過去の事象の一部分を掘り下げるつくり方をするしかないのだ。それもNHKと差別化するには非常に有効な手段だが、特に災害報道の場合、視聴者は「今、どうなっているのか」「これからどうなるのか」が知りたい。


長時間の報道番組ができない理由

 もうひとつ、民放がNHKと比べて決定的に見劣りするのが、長時間の報道番組ができないことだ。その理由は、アナウンサーも記者もディレクターも、ほとんどすべてのスタッフが番組専任になっていることだ。局のアナウンサーであっても、自分のレギュラーの番組以外に出演することは少ない。


 掛け持ちでいくつかの番組を担当しているアナウンサーもいるが、災害の現地に出向いて番組を横断して取材・出演するケースは少ない。今回の台風報道で、番組横断的に出演していたアナウンサーもいたが、それは例外といっていいし、ほんの一時の出演にしかすぎない。


 台風やゲリラ豪雨、豪雪などの災害が頻繁に起きている現状を考えれば、民放各局も「今を伝える、すぐ先はどうなるかを伝える番組づくり」をするべきだろう。そのためにはコメンテーターの数を減らしてでも、現地に出向くことができ、番組横断的に出演することができる自社のアナウンサーや記者を増やすべきだ。そして全国の系列局と連携を図れるような体制づくりも必要だ。民放が制作する本来の報道番組も観てみたい。


(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)


このニュースに関するつぶやき

  • そもそも優等生的な雰囲気の番組作ってNHKに勝てるかって。ならばイッソのこと台風報道とかバラエティ化すればいいのよ。屋根にローション塗るとか、裸エプで炊き出しするとか。
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  • NHKが災害報道は強いのはわかるけど、民法だって土日にアナウンサー出勤させて、地方の局もあるのだから現地から報道もできると思うけど。
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