乗って分かった! ホンダの新型「フィット」が革新的な理由

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2019年11月01日 08:01  マイナビニュース

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ホンダは「第46回 東京モーターショー2019」で新型「フィット」を公開した。今回で4世代目となるフィットだが、新型は日本市場での使いやすさを最優先にした作りとなっている。まだ走らせることはできないが、乗り込むだけでも新しさを感じられるクルマだ。

○見通し良好! その理由はAピラーにあり

外観の全体的な輪郭は歴代フィットに通じるが、新型フィットの造形は全く新しい。世代を追うごとに大型化されてきた顔つきは、4代目となる新型で初代に近くなり、開口部が小さく、原点回帰を思わせる。その上で、新型で注目すべき技術の1つが、フロントウィンドウを支えるAピラー(支柱)の細さだ。

一般的にフロントピラーは、前面衝突の荷重を受け止める機能が求められ、なおかつ衝突安全規定が年を追うごとに厳しさを増しているため、構造的に太くならざるを得ない。一方、このフロントピラーの太さは、前方視界の悪さを誘発してきた。

また、側面衝突に対する安全性の要求も厳しさを増しているため、前後ドア間のBピラーが太くなるのに合わせ、車体側面の窓の面積は小さくなってきている。かつてのクルマは窓の下端が低かったので、後退の際にガラスを開けて頭を外へ出し、車体側面の障害物などを確認することができたが、現在では窓の下端が高く設定され、頭を外へ出そうとしても、車体側面がよく確認できないほどになっている。

こういったクルマの変化により、衝突した際の安全性は向上したかもしれない。しかし、前方や側方、あるいは後方の視界が悪くなったのでは、クルマ周囲の安全を確認しそこない、ぶつかってしまうかもしれないという懸念が残る。事故を起こさないまでも、周囲が見えにくいことで運転に不安を覚えている人もあるだろう。そうした不安の積み重なりが、クルマ離れにつながっているのかもしれない。

自動車メーカーは、車体の周囲をカメラで映して車内に映像を表示したり、障害物との距離を測るセンサーを使ったりすることで、そういった不安の解消を図っている。だが、人は情報の90%を視覚に依存しているので、直に見えないことに対する不安は大きい。

そこで、ホンダが新型フィットで取り組んだのが、前方視界を確保しつつ衝突安全にも万全を期したクルマづくりだった。

新型フィットに触れる機会があったならば、まず、運転席に座ってみてほしい。クルマを走らせなくても、左右を含め目の前が開けるような視界を実感できるはずだ。ダッシュボードの上面は、ほぼ平らで、黒っぽい色をしている。これも前方視界の改善に効いているポイントだ。

実は、フィットには、初代から弱点があった。フロントウィンドウにダッシュボードの凹凸が映り込み、前方視界の妨げになっていたのである。ダッシュボード上面の凹凸が無くなったことで、新型フィットの前方視界は、より開けた印象となっている。

新しい構造とクッションを採用した座席は、座った瞬間に柔らかさを感じると同時に、的確に体を支えてくれる信頼感を覚えさせる。座席背もたれと後輪のホイールハウスの位置関係が考慮されていることで、後席にも乗り降りしやすい。高齢者を後席に乗せる人にとって、この配慮は嬉しいはずだ。

新型フィットは座るだけで、これだけの新しさを感じさせ、期待を抱かせる。初代フィットの原点を改めて探り、フィットの根本価値とは何かを考えた末の新型だ。

多くの自動車メーカーが最も台数の売れる市場に合わせて新車を開発しているのに対し、ホンダは新型フィットを日本市場で最適になるよう開発し、その価値を世界へ発信する手法をとっている。小さな市場といわれ、品ぞろえが後回しにされがちな日本人にとって、これほど嬉しい話はない。本田宗一郎の「世のため人のため」という思想を改めて実感させる新型フィットである。

○著者情報:御堀直嗣(ミホリ・ナオツグ)
1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。(御堀直嗣)

このニュースに関するつぶやき

  • 今回の新型フィットのデザインは好き。人相の悪いオラオラ顔のデザインが嫌いで20年間7代目シビックに乗り続けたけど、これなら乗り換えてもいいかも。試乗の誘いが来たら行ってみようかな。
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