GALNERYUSが究める、ヘヴィメタル×ポップスの融合「最新作が最強というバンドでありたい」

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2019年11月01日 11:11  リアルサウンド

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左からYUHKI、SYU、Masatoshi “SHO” Ono

 昨年デビュー15周年を迎えたGALNERYUSが、約2年ぶりとなる12thフルアルバム『INTO THE PURGATORY』を10月23日にリリースした。同作は、コンセプトアルバムとして作られた直近2作(『UNDER THE FORCE OF COURAGE』『ULTIMATE SACRIFICE』)とは異なり、15周年を経たバンドの蓄積と16年目の新しさが収められた自由度の高い一枚になったという。


参考:GALNERYUSはHR/HM界の至宝だーーEX THEATER ROPPONGIで目撃した“伝説の一夜”


 日本のHR/HMシーンを牽引し、海外からも高い支持を受けるGALNERYUSにとって、この15年の歳月はどんな時間だったのか。SYU(Gt)、Masatoshi“SHO”Ono(Vo)、YUHKI(Key)に、デビューから現在までの歩みを振り返りつつ、最前線で戦い続けるための矜持を聞いた。(編集部)


■1曲1曲がキラーチューンの自由度の高いアルバムを作りたい(SYU)


GALNERYUS – THE FOLLOWERS[OFFICIAL MUSIC VIDEO]
ーーGALNERYUSの過去2作はコンセプトアルバムという、ひとつのストーリーに沿ってアルバムをまるまる1枚制作するスタイルでしたが、今回のニューアルバム『INTO THE PURGATORY』のように曲ごとに異なるストーリーを持つオリジナルアルバムは『VETELGYUS』(2014年の9thアルバム)以来5年ぶりになります。


SYU:そうですね。『UNDER THE FORCE OF COURAGE』(2015年の10thアルバム)、『ULTIMATE SACRIFICE』(2017年の11thアルバム)と2作連続でコンセプチュアルな作品を作ったことで精神力を高められたし、一方では各場面に合わせた楽曲を作っていかなくてはならない苦労もありました。実は今回、そのストーリーの完結編を作ろうとはしていたんです。けど、それよりも自由に書いた曲に愛を込めて、1曲1曲がキラーチューンの自由度の高いアルバムを作りたい、そういう思いのほうが強くなって制作に入りました。こっちはこっちでコンセプトアルバムとは違った大変さがありますけど、すごく活き活きと制作できたと思いますよ。


ーー過去2作には組曲のような長編の楽曲も存在しました。今回も7、8分台の楽曲は含まれていますが、それなのにコンパクトに感じられますよね。


SYU:確かにそうなんですよ。今回の制作のテーマは、方法論だけでいえばコンパクトに楽曲が連なって、ザッと聴ける作品というのがあって。かつ、各曲のバランスが良く、ダイナミクスもちゃんとあって、アルバムを通して聴いても疲れないということを念頭に置いて作ったんです。


ーーだからなのか、過去2作以上よりも気軽にリピートできるアルバムなんですよね。


SYU:これは狙ってなかったんですけど、最後のインスト曲「ROAMING IN MY MEMORY」のエンディングから、同じコードのままオープニングの「PURGATORIAL FLAME」に移るんですよ。


ーー確かに。リピートするとわかりますが、綺麗につながるんですよね。


SYU:そう、無限のループになっているんです。なので、「PURGATORIAL FLAME」のSEとして「ROAMING IN MY MEMORY」を使っているような感覚でもありますよね。


ーー歌詞の書き方も過去2作とは異なるアプローチだったと思いますが、そういったところでの新たな気づきなどはありましたか?


SYU:コンセプトアルバムは発案者が歌詞を書いていったほうが、その世界観を作りやすいんです。でも、今回はそこから脱した作り方で。このアルバムの前に、僕はソロ作(今年1月発売のアルバム『VORVADOS』)を作ったんですけど、小野さん含め複数のボーカリストに歌詞を書いてもらって、その人の言葉で歌ってもらうとすごく説得力があるなと改めて感じたので、それをGALNERYUSでもやりたいと思ったんです。もちろん僕も歌詞を書いてはいるんですけど、できるだけ小野さんにもお願いして。やっぱり小野さんが自分で書いた歌詞を歌うと、すごく素直に歌っているなと感じられるところもあったので、そういう再発見もありましたね。


Masatoshi“SHO”Ono(以下、SHO):僕は今回3曲(「FIGHTING OF ETERNITY」「COME BACK TO ME AGAIN」「REMAIN BEHIND」)作詞したんですけど、そのうち1曲はYUHKIさん(「FIGHTING OF ETERNITY」)の曲で。通常、作詞する前はどんなイメージがいいかをあらかじめ伝えてもらうんですけど、今回のYUHKIさんはただ「英語が多め」みたいな、そのぐらいでしたよね。


YUHKI:作曲しているうちに、あるメロディがどうしても〈eternity〉に聞こえて、「〈eternity〉は入れてほしい」とは言いました。


SHO:そう、〈eternity〉と〈infinity〉を入れるというぐらいで。縛りもなく、自由にと言われれば自由に書きますけど、「こんな感じ」と題材を与えてもらうことで、逆に書きやすいということもあります。そうは言いながらも、今回は自由に書けましたね。


 実は、GALNERYUSに加入して最初のアルバム(2010年発売の6thアルバム『RESURRECTION』)のときに歌詞を書くことになって、メタルということで、〈僕〉や〈私〉よりは〈俺〉とか〈貴様〉とか、そういう感じのほうがいいのかなと勝手に思って書いたら、「いや、〈君〉でいいです」と言われたことがあったんです。僕はこういう性格なので、あんまり〈俺〉だとか〈貴様〉なんて普段は使わないですが、そう言ってもらってからは自然に書けていますね。


SYU:小野さんのキャラというのがあるじゃないですか。そこはすでに確立されているものですし、無理に変える必要がないと思うし、かつ僕自身が小野さんのファンでもあるので、そのまま“ソロシンガー・小野正利”を導入していく。そんな感覚でしたね。


■喉に負担をかけずに、突き詰めていくとこうなる(SHO)


ーーアルバムからのリード曲として「THE FOLLOWERS」のMVも制作されました。曲自体も新境地だと思いましたが、小野さんのオペラチックな歌唱法がまた斬新でして。


SYU:なぜこの曲をMVに選んだかというと、自分たちの中で面白い要素が非常に多いなと思ったからなんです。あと、『INTO THE PURGATORY』というアルバムタイトルにもすごく合う曲でもあると思ったので。僕はこの曲で7弦ギターを使っていて、YUHKIさんもパイプオルガン的な音を出してくれていて、さらに小野さんのオペラチックな歌唱が聴ける。この歌唱法でお願いした理由としては、小野さんが一昨年出した『VS』というソロアルバムに入っている「A Question Of Honour」(※サラ・ブライトマンの楽曲で、日本では『2002 FIFAワールドカップ』のテレビ中継などに用いられたことで知られる)のカバーを聴いたときに、寒イボが立って。「こんな声出せるんなら、はよ言ってくださいよ!」と(笑)。


SHO:(笑)。


SYU:小野さん、珍しく「聴いてよ!」って喜んで聴かせてくれたんですよ。


YUHKI:「こういう声を生かした曲を作れ」ってことだったんでしょうね(笑)。


SHO:そういうことじゃないですよ(笑)。


SYU:でも、僕もうれしかったですよ。まだまだ僕の知らない小野さんの一面があるんだと思ったし。だったら、この歌唱法を活かした曲を作ろうと思って、できたのが「THE FOLLOWERS」なんです。


ーー小野さんはもともと、オペラを勉強したことがあったんですか?


SHO:完全に自己流で、「こんな感じかな?」くらいの感覚なんですよ。なんとか喉に負担をかけずにしっかり発声しようと考えて、突き詰めていくとこうなると思うんです。実は声楽の本を読んだとき、クラシックの方々はやれ骨盤を鳴らすんだとか、膝を鳴らすんだとか書いてあって。


SYU:えーっ?


SHO:まったくわからないですよね。でもポップスやロックを歌っている僕らは基本マイクを使うので、乱暴なことを言うと体が鳴っていなくてもマイクにパーンと乗ればいい。そういう意味でも感覚的にやっているんです。「手打ち風うどん」は手打ちではないですから、それと一緒ですよ(笑)。


ーーなるほど(笑)。かつ、「THE FOLLOWERS」ではベースのTAKAさんが作詞を担当しています。


SYU:これまでTAKAさんはあまり作詞してこなかったんですけど、独自の世界観を持っている人なんです。我々としてもそこはすごく尊敬できるところなので、ここで彼の文才であったり、そういう素晴らしい部分を伝えたくて。なおかつ、この曲にはベースソロを入れたかったので、TAKAさんにしっかりソロを弾いてもらった。そういう各メンバーのフィーチャリング要素が非常に強い楽曲なんですよ。


ーーあのMVの世界観が、まさにアルバムの雰囲気を象徴していますしね。


SYU:撮影チームの方々もこの曲からいろいろ察してくださって、ああいうシチュエーションを選んでくれた。撮り方も素晴らしかったですし、非常に良いMVが仕上がったんじゃないかと思います。


■ソロを経たことはすごく刺激になっている(SYU)


ーーMVにする楽曲というのは広くいろんな人に聴いてもらうという意思も込められていると思いますが、そこに「THE FOLLOWERS」を選んだというところにGALNERYUSとしての攻めの姿勢が強く表れていると思いました。


SYU:「MY HOPE IS GONE」や「THE END OF THE LINE」あたりの“ザ・GALNERYUS”というような盤石な楽曲をMVに選ぼうと思えば選べたんですけど、そうなると自分たちが楽しめないというか。もっと刺激が欲しいなと考えたんですね。アルバムを通して聴くと、どうしてもこいつ(「THE FOLLOWERS」)が際立っているな、という感じがしたし、メンバーもみんな気に入っていていたので。


 「THE FOLLOWERS」はまず、7弦ギターを使ったあのリフが書けた時点では「これはGALNERYUS風ではないな」と感じたんですけど、それと同時に「これをGALNERYUSで揉んでいったら、どうなるんだろう?」とも思って。探り探りやっていったら、うまくハマったなという印象ですね。


ーーソロアルバムにも7弦ギターを使った楽曲は存在しましたし、それまでGALNERYUSでやってきたこととは若干毛色の違うことにもチャレンジしていた。その実験の成果が、今回の『INTO THE PURGATORY』にちゃんと形として表れているように感じました。


SYU:うん、ソロを経たことはすごく刺激になっていますね。久々に7弦で録音したときも「ああ、やっぱりローB(7弦)の響きはええなあ」と改めて思ったし、それもあってGALNERYUSでも久しぶりに7弦ギターを使ってみようと思ったのは確かですね。


 毎回ね、アルバムをパッと通して聴いたときに同じ感じがしてしまわないように意識していて。どれだけ美味しいものでもいつか飽きるみたいなもので、何かしらアクセントがないと面白くないじゃないですか。そういう意味では、いいアクセントになったかなと思います。


ーー特にパワーメタルやメロディックスピードメタルのジャンルって、スタイルが凝り固まってしまいがちですものね。作品を重ねれば重ねるごとに新しいことに挑戦するのが難しい、伝統を重んじるジャンルでもありますし。


SYU:看板を守らなあかん感じもあるし、あとはネタとの戦いもあるし。


ーーでも、この『INTO THE PURGATORY』はそこをしっかりクリアしている作品だと思いますよ。


SYU:ありがとうございます。そこが毎回すごく大変なんですけどね(笑)。とはいえ、「MY HOPE IS GONE」で聴けるようなメロディがひとつでも出てくると、作曲者としては「これでやっとアルバムが作れるわ」という気持ちにはなりますよね。「ちゃんとメロスピで締めておけば、何をやってもいい」というわけではないですけど、多少は冒険もできるのかなとは思っています。


■GALNERYUS以外でひとつのことが20年続いたことがない(YUHKI)


ーーGALNERYUSは2018年10月にメジャーデビュー15周年を迎え、今年は小野さんとTAKAさんが加入してまる10年経ちました。


SYU:一言で言い表すのは難しいかもしれないですけど、各時期にさまざまなドラマがあって。その中で最高の音楽をお客さんに聴かせたいという、その思いだけで続けてきました。それこそ2009年からの10年間は……ドラムがJun-ichiさんからFUMIYAに交代はしましたけど、ほぼ変わらずにずっとやってこられたのは、自分たちのやりたい音楽を表現するに当たってこのメンバーが適任だと全員がわかっていて、なおかつやりたいことがちゃんとできている状態であると。それに加えて人間関係が非常に良好だということ、その2つがやっぱり大きいと思うんです。それこそ、YUHKIさんに関しては15年どころか20年ですから。


YUHKI:そうなっちゃいますね(笑)。僕はGALNERYUS以外のことで、ひとつのことが20年続いたことがないんですよ。なんでも3年ぐらいで飽きちゃうので、それを考えるとプロデューサーもディレクターも20年一緒にいることって、なかなかないですよ。


SYU:知らん間に時間が経ってたよね。


YUHKI:本当に。僕らが好きな音楽を好きなようにやらせてもらえるというのは、当時の環境ではあまりないことだったし、それをメジャーシーンでやらせてもらえてここまで来られたのは、本当に幸せなことだと改めて思います。だから、応援してくれるお客さん含め、すべての支えてくれる人たちがいたからこそここまで来られたんだと、今改めて思っています。


SYU:僕は2000年で20歳だったんですけど、その前はまだメタルにとって氷河期が続いているような状態で。でも、そのあたりから大きな山ではないかもしれないですけど、少しずつ復権し始めて、僕もその波に乗ったところもあります。今もGALNERYUSみたいにメロディックスピードメタルをやっているバンドは依然として多くはないんですけど、こういった音楽をするバンドがもっと増えて、しのぎを削り合う戦国時代じゃないですけど、そこから頭角を現すバンドがたくさん出てきて、シーンを大きくしていかないといけないと思っていて。いいライバル意識を持って活動できるようなバンドがたくさん出てきてくれないとなと、まだまだ思っていますね。


■僕は照らしてもらわないと光らないタイプ(SHO)


ーー小野さんとTAKAさんが加入した2009年以降、バンドとしては上り調子な印象が強いですが、当の小野さんはそのへんどう感じていますか?


SHO:僕は歌うのが好きでずっと歌ってきていたので、そういう意味では……自分にこなせるかどうかは別として、あんまりジャンルにこだわりがないんですね。でも、そうはいってもデビューしてから長くポップスを歌ってきて、そこからGALNERYUSに加入してメタルを歌うことになった。ある程度長く歌ってきていい意味で自分の歌唱スタイルが定まってきた中で、パッと歌ったときにSYUくんや周りの人から「そこはもうちょっとこう歌ったほうがいいんじゃないの?」とか「ここをこうしてみたらどうか?」と言われると、そういうシンプルな提案が自分の中にないものだったりするから、歌い手としてさらに幅が広がるんです。そこは非常にありがたいし、僕はいいときにGALNERYUSに入ったなと思っています。


SYU:小野さんがそう言ってくれるのはうれしいですね。前任ボーカリストが抜けた頃は、僕らはここからどうなっていくのか常に不安で。そんなときに、プロデューサーの久武(頼正)さんが小野さんと知り合いだと聞いたんです。僕は1992年の「You’re the Only…」をもちろんテレビで観て知っていたし、シングルも買っていたので、「あの小野さんですか!」とビビっちゃって(笑)。でも、FORT BRAGG(※小野が80年代に在籍したハードロックバンド)もやっていたからメタル側の人でもあるし。


SHO:あはははは!(笑)。


SYU:それで「歌ってもらえるのなら歌ってもらいたいです!」とダメもとで連絡したら、快くOKしてくれて。だから、上り調子になったのは必然的なことなんです。小野さんが歌うと自然と多くの人に響くと思うし、透明感のあるハイトーンボイスはすごく貴重だし。


YUHKI:こういうハイトーンのシンガーって、本当に数えるほどしかいないしね。


SYU:僕たちがやりたかった音楽にふさわしい声がようやく見つかって、それを普通に表現したらドーン! みたいな。今でもよく覚えているのが、『RESURRECTION』という小野さんとTAKAさんが加入して最初のアルバムでのライブがSHIBUYA-AXであったとき。そのときは以前よりデカめの会場だったので緊張するかなと思っていたんですけど、それよりも小野さんの歌を早くみんなに聴かせたくてたまらない! という気持ちで、リラックスしてできた記憶があります。きっと、すごいドヤ顔で弾いていたと思いますよ(笑)。


SHO:僕は歌い手としては、正直セルフプロデュース力みたいなものが皆無なんですよ。ちょっと大げさな例えですけど、SYUくんが太陽だとしたら僕は月で、照らしてもらわないと光らないタイプなんですね。さっき人間関係の話がありましたけど、音楽活動以外のプライベートの人間関係も含めて、SYUくんやみんなによい部分を引き出していただいて、本当にありがたいですよ。


SYU:いやあ、小野さんがこういう性格で本当によかったと思います。


ーー小野さんのように、ご自身でヒット曲を持っているシンガーがヘヴィメタルバンドに加入するケースって世界中を探してもあまりないですよね。それこそ小野さんはテレビアニメ『HUNTER×HUNTER』(日本テレビ系)のオープニングテーマ(「departure!」)も歌ってきましたし、そのあとにはGALNERYUSとしても同作のエンディングテーマ(「HUNTING FOR YOUR DREAM」)を提供しています。そういった機会はバンドのファン層を広げるきっかけにもなったんじゃないでしょうか?


SYU:そういう部分も非常にあると思います。


SHO:ソロのほうで言えば、オープニングテーマの「departure!」はまず曲が最初にあって、アニメ制作の人たちが「これを誰に歌ってもらおうか?」という中で、縁があって僕が歌うことになったんですね。そこからのつながりで、「じゃあGALNERYUSにエンディングテーマを」みたいな流れになって。僕は今、専門学校に歌を教えに行ったりしているんですけど、学生さんは『HUNTER×HUNTER』世代で、その親御さんは「You’re the Only…」を知っている世代。そういう影響力はありますから、GALNERYUSがエンディングをやったことで少なからずアニメをきっかけにGALNERYUSを聴き始めた人もいるんじゃないかと思いますね。


■楽器も歌のように歌わせたい(YUHKI)


ーー今回のニューアルバム『INTO THE PURGATORY』はもちろん、過去のアルバムを聴いても感じることですが、改めて感じるのがGALNERYUSは非常に特殊で個性的なバンドだということ。まず第一に、先ほども話に上がった小野さんの声の存在感ですよね。さらに、各楽曲のメロディもヘヴィメタル的であると同時に、よりポピュラリティが高くてキャッチーなものが多い。それこそ、アコースティックギターやピアノのみをバックに歌えばポップスとして成立するものばかりで、そこがバンドとしての大きな強みだと思うんです。


SYU:GALNERYUSの楽曲って、プレイヤー目線でみると各楽器が派手じゃないですか。やりたいことをやりまくる音楽性ではあるんですけど、そこに気を取られすぎると歌メロがしょうもなくなってしまうところがあると思うんですね。なので、今おっしゃったようにピアノとボーカルだけでも成立するような曲でなければならないし、歌が確実に主役でなくてはならない。その中でプレイヤーとして、自分たちができることやしたいことを、隙間を狙ってアピールしていくわけです。ちゃんとした歌があってこそギターソロがカッコいいと思ってもらえる、そういう考え方ですね。


YUHKI:基本的に僕もSYUもメロディから曲を作るので、まず歌ありきなんですよね。なのに、なぜか楽器が大変なことになってしまうという(笑)。ちょっと話題から外れますけど、楽器も歌のように歌わせたいというのが、僕とSYUの中にあって、そこも含めてメロディを重要視しているというのは昔からあります。


SYU:カッコいいギターソロ、キーボードソロといったら、やっぱりメロディがキャッチーでなければならないと思うんですね。それをより効果的に聴かせるために速弾きなわけで、ただ速いだけだったらオリンピックみたいになってしまうし、「ああ、速いですね。はいはい」で終わってしまうじゃないですか。


YUHKI:そうなってはいけないですよね。とはいえ、20代の頃は「世界一速く弾けるキーボーディスト」を目指していましたけど(笑)。


SYU:一回はそういうのはあるんですよ。


SHO:若い頃はね(笑)。僕もそうでしたよ、どこかに高い声のボーカルがいると聞いたら、「どれどれ」って鹿鳴館(目黒)に観に行きましたから(笑)。


YUHKI:そういう時期を経て、今の考えに至ったわけです。


ーー前回のインタビューで小野さんがDeep Purpleの「Smoke On the Water」を例に出して、「たいていの人はイントロのあのリフを口ずさむ」けどGALNERYUSの楽曲は「サビを口ずさむ人もけっこういるんじゃないかと思う」「それがGALNERYUSの魅力のひとつで、強さのひとつ」とおっしゃっていましたが、GALNERYUSはギターソロもキーボードソロも口ずさめるものが多いですものね(※参照:GALNERYUSが追求する、ヘヴィメタルとしての“新しさ” 「引き出しが増えていくことが大事」)。


YUHKI:例えばSYUが作った曲でも「ここにキーボードソロを入れてほしい」と言われたら、まずは前後の流れでどういう感じにしたいかをイメージするんです。そこからキーボードを弾きつつ、鼻歌でも出てきたものを基調にして作っていくので、そこにメロディという土台は確実にありますね。大きなメロディが必ず形成されるように、自然と作っちゃっているんですよ。


SYU:それがなかった場合、「つまらない、却下」というのを本能的にしているという。


YUHKI:そういうのは楽器隊にもありますね。


ーー本作でもそうですが、小野さんが歌っている裏でTAKAさんのベースソロが鳴っていてもまったく邪魔になっていないし、逆にソロの印象がゼロなわけでもない。そのバランス感が奇跡的だなと思います。


SYU:そこはすごく気をつけているところではあります。あくまで歌を盛り上げるためのアクセントなので、ちょっとでも歌に当たっちゃうようなら削除する感覚ですね。


ーーそしてもうひとつ、僕はSYUさんのギターヒーロー感が素敵だなと思っていて。


YUHKI:うんうん。


SYU:あはははは(笑)。いやいや。


ーー特に90年代以降、海外ではグランジシーンが盛り上がってからは“アンチ・ギターソロ”みたいな風潮があって、ギターヒーローという言葉自体が死語になりつつありました。もちろんその後の海外HR/HMシーンにも、新世代のギターヒーローが少なからず存在しますが、ここ日本に関して言えばHR/HMシーンでは高崎晃さん(LOUDNESS)を筆頭とした80年代のギタリスト以降、若い世代からそういう“誰もが知る”存在があまり生まれていない気がしていて。ライブでのSYUさんを見ると、プレイや佇まいに往年のギターヒーロー感が重なるんです。


SHO:何年か前にヨーロッパに行ったとき、お客さんはSYUくんのことを「神様〜」みたいな目で見てましたから。先日アメリカに行ったときも、SYUくんのギターソロになるとみんな、神様を前にしたような目で見てるんです。すごいですよ。


SYU:僕も高崎さんや山本恭司さん(BOW WOW)という大先輩にあたる方々はもちろん好きなんですけど、僕ら世代にあまりそういう存在が見当たらないんですよね。なので、シーンがもっと活性化して同じようなバンドがたくさん出てきて、その花形としてギタリストがいる、そうならないとあかんなと思っていて。だから、まずは僕がもっとこのシーンを盛り上げていかなくちゃいけないのかなと思っているんですけどね。でも、こういうことを簡単にやっているように見せるためにはアスリート並みの練習が必要なので、そこがちゃんとできる人がもっと増えてほしいなとは思います。


■毎年進化していきたい(SYU)


ーーこれだけいろいろ個性的な要素が揃っていて、メンバーの皆さんそれぞれの技術も高く、でもそこに甘えず常に前回を超える作品を目指して活動し続けてきたら、気づけば結成から20年近く経っていたと。


SYU:そうなんですよ。言うたら、毎年挑戦を繰り返して、来る日も来る日も練習だ、作曲だ、録音だ、ライブだというのを目標に掲げて続けていると、本当に知らず知らずにうちに月日が経っていた。こないだ正月で甘酒飲んだはずなのにって(笑)。


SHO:(笑)。僕もGALNERYUSに入ったときは自分の認識が甘かったのか、そのときはソロ活動の空いているところでGALNERYUSとしてちょこちょことツアーをやって、アルバムはせいぜい2、3年に1枚ぐらい出すのかなと思っていたんです。でも、実際にはGALNERYUSの隙間でソロをやってますからね(笑)。最初にYUHKIさんが言ってましたけど、いろんな人のサポートや支えがあって、これを続けられているわけですから、素晴らしいですよ。それで、気づいたら僕も10年いますからね。僕とSYUくんはひとまわり以上歳が違うので、SYUくんはまだまだ元気なんですよ(笑)。ねえ、YUHKIさん?


YUHKI:そうですよ。なのに、僕らにSYUと同じことをしろと言うんですよ(笑)。


SYU:(笑)。


YUHKI:なので、GALNERYUSにいる以上は弱音を言ってられないですよね。


SHO:僕はこの10年、居心地よくGALNERYUSにいさせてもらっていているので……こういう言い方をしちゃうと客観的すぎるかもしれないですけど、「GALNERYUSのボーカリストはこうであるべきだ」ということを少しでも表現できているうちは、ここにいさせていただいて。僕はいらないと言われるまではいますんで(笑)。


SYU:(笑)。


SHO:僕より年上でメタルを歌っている方、さっきの高崎さんでいったら二井原(実)さんや、去年も一緒にイベントをやらせていただいたANTHEMの森川(之雄)さんがいるので、自分なりにちゃんとケアしながらやっていけば、あの年齢まで続けられるとイメージもできます。そもそも自分が若いとき、50〜60代で日本でポップスを歌っていることも想像できなかったですけど、小田和正さんもいますからね。まだまだこれからですよ。


ーー『INTO THE PURGATORY』のリリース日からは早くも全国ツアーが始まり、来年の1月まで続きます。そうこうしていると、バンド自体が結成20周年に近づくわけですが。


SYU:そうですね(笑)。陰陽座さんがちょうど今、20周年ですよね。早いもので。


ーー確かに。あの時代に結成された国産HR/HMバンドで、今もメジャーの第一線で活躍し続けているのはGALNERYUSと陰陽座ぐらいなんじゃないでしょうか。


SYU:僕は西九条BRAND NEWという大阪のライブハウスで、陰陽座さんと対バンさせていただいたことがあるんですけど、それを昨日のことのように覚えていま。あれからすごい年月が経ったんですね。


ーーメジャーデビュー15周年というひとつの区切りを越えて『INTO THE PURGATORY』という力作を届けてくれましたが、皆さんにとってGALNERYUSの“理想の未来”はどういったものなんでしょう?


SYU:我々としては毎年進化していきたいんですよね。「あのアルバムが一番よかったよね」と過去のことを言われるんじゃなくて、毎回最新作が最強というバンドでありたいというのが常に思っていることで。これまでも誇れるアルバムは多数作ってこられたんですけど、その中で今自分たちが思えることは『INTO THE PURGATORY』という新しいアルバムが最高にいいなと思うし、毎回そういうことを言えるような状態ではありたいなと思いますね。(西廣智一)


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