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連続放火殺人の村をルポした『つけびの村』 作者「よく意地が悪いといわれます」

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2019年11月11日 17:00  AERA dot.

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写真高橋ユキ(たかはし・ゆき)/1974年、福岡県生まれ。裁判傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成しブログで裁判ルポを発表したのを機にライターとなる。著書に『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』『暴走老人・犯罪劇場』など。 (撮影/写真部・小山幸佑)
高橋ユキ(たかはし・ゆき)/1974年、福岡県生まれ。裁判傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成しブログで裁判ルポを発表したのを機にライターとなる。著書に『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』『暴走老人・犯罪劇場』など。 (撮影/写真部・小山幸佑)
「事前にニュースとか調べて行ったんですが、そんな話どこにも出てなかった」

 凄惨な事件があった村には似つかわしくない、屋根に「魔女の宅急便」のイラストをペイントした家を目にした。目立つ存在なのに報道が触れていなかったことを訝しむと、声をかけた眼鏡の男性から「こっちはハッピーじゃけね」との答えが返ってきた。

 2013年夏、山口県内の山間で連続放火殺人事件が起きた。8世帯12人の集落で5人が犠牲となり、犯人の男の自宅には「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」と謎の貼り紙があったことから耳目を集めた。本書『つけびの村』(高橋ユキ著、晶文社、1,600円※税抜き)は、その事件を3年半後から取材したノンフィクションだ。

 事件ルポながら、雑談を交えた長話が本書の特色だ。しかも他のライターなら削除するような一行が加わる。たとえば、先の男性を取材中、眼鏡の汚れが気になってしかたなかったことや、事件の話をしながら何度も「うふふ」と笑い声を出す知的な女性の描写など。

 瑣末ながら、読者としては興味をそそられる瞬間だが、取材された人はこの描写を嫌がるのではと感想を伝えると、高橋さんは「よく意地が悪いといわれます」という。

「でも、“私”を出さなくてもいいんだったら、あそこまで書かなかった。『自分が何を見ているのかということは極力入れたほうがいい。そこが持ち味なんだから』と編集者に助言され、腹をくくりました」

 執筆のきっかけは、「夜這い」の風習が村にあったとの噂があり、真相を探ってほしいという月刊誌からの依頼だった。

 事件当時、都会からの帰郷者だった犯人の男が「村八分にあって復讐した」とネットに出ていた。だが、村人に話を聞いていくと、どうも話が違った。例の貼り紙も「犯行予告」とされていたが、異なる火災について書いたものだった。メディアがつくりだした「噂」について、一つずつ裏取りをしていく様子は、どことなくつげ義春の旅行記を読む印象に近い。

 事件ルポの「定型」から逸れていったのは、裁判中に拘置所で男と面会してからだ。「妄想性障害」が悪化し、真相を聞き出すどころではなかった。これでは本にはならないと落ち込んだ。しかし、取材を進めるうちに、「村の噂の情報量の多さと、その噂を伝播するシステムがあるということがわかってきました」。

 犯行は「村八分」が原因というより、「陰口」や「噂」に被害妄想を募らせてしまった結果ではなかったか。高橋さんは、そうした過程を検証するために聞き込みを重ねていった。

 一度完成させた原稿をノンフィクションの賞に応募したが落選。あきらめきれずネットの投稿サイトに載せたところ注目され、出版にこぎつけた。読み物としての面白さは、「小劇場の舞台」を思わせるほどに濃い村人たちのキャラクターにある。個性豊かで、長話をしてもあきさせないあたり、柳田國男の伝承文学のようでもある。(朝山実)

※週刊朝日  2019年11月15日号

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