「中学生を妊娠させてしまった」男子高校生のケースから考える「性教育」の必要性

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2019年11月12日 21:02  弁護士ドットコム

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小学校や中学校のうちから、性についてわかりやすく伝えること。これが加害者を生まないことにも繋がっているーー。


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11月12日に衆議院第一議員会館で開かれた勉強会「子どもたちの健やかな未来を守る包括的性教育」(主催・NPO法人ピルコン)。



少年事件やLGBTの権利問題などに取り組んできた山下敏雅弁護士は、子どもたちに対して、日常的に性について話をすることの大切さについて語った。



●性に関する情報は、同級生とAV

男子中学生が、学校の帰り道に同級生の女の子の胸や股を触り、強制わいせつの疑いで家庭裁判所に送致される事件があった。山下弁護士は、少年の弁護人として事件にかかわった。



少年は、学校で性交や避妊に関する情報を学んでいなかった。唯一知っているのは、同級生からの「胸を触ったら嫌がっているようでも気持ちいいらしい」という話とAVの情報だった。少年が初めてAVを見たのは、自分のスマホでだった。両親はスマホにフィルタリングをかけているつもりでいたが、実際にはかかっていなかった。



山下弁護士は受任後真っ先に、性について解説する漫画を手渡した。少年からは「これを(事件の)先に読みたかった」と言われたという。



「彼は性に関する知識を教えてもらっていなかった。やったことは犯罪であり性加害者の立場だけど、性教育を受けていなかったという意味では、被害者の一人でもあると思う」



●「中学生を妊娠させてしまった」

他にも、月に一度中高生センターを訪れるなかで、しばしば中高生が抱える性の問題に出くわす。



ある時、男子高校生から「中学生を妊娠させてしまった」と相談を受けた。少年はパニック状態。山下弁護士は、養育費や親権、中絶をする際の費用、刑法上の問題などを伝え、「愛おしくて触れたいと思うのは自然なことだけど、相手はまだ中学生で、心と体は大人の仲間入りをしたばかり。まだセックスしないとか、避妊をすることが必要だった」と諭した。



一方で、少年にそうした話をしながら「フェアじゃない」とも感じた。もちろん、してしまったことに対しては責任を取らなければならない。ただ、やはりその少年も、性や避妊について誰からも教わっていなかった。



思春期の子どもたちにとって、「性」というと「いやらしいもの」というイメージが先に浮かびがちだ。山下弁護士は「性というのは、自分の心と体、相手の心と体を大切にすること。セックスは性のうちの一部分でしかない」と話しているという。



●「義務教育段階で教えるべき」

性知識に関する啓発活動をおこなっているNPO法人「ピルコン」代表の染矢明日香さんは、性に関する不確かな情報がネットなどで氾濫する一方で、現在おこなわれている性教育は不十分なため、大きなギャップが生まれていると指摘する。





小、中、高校での性教育では教科書に「性交」の記載がなく、ピルコンが高校生に対しておこなった性知識に関する調査でも、正答率の平均は3割ほどだ。例えば、「膣外射精は有効な避妊法である」という設問は、正答率が35%にとどまり、半数以上が「分からない」と答えた。



2019年3月には、東京都が「性教育の手引」を改訂した。ただ、学習指導要領の範囲を超える性教育をおこなう場合には、保護者に説明し、その了解を得た生徒のみが対象となるというもので、きわめて限定的だ。



染矢さんは「義務教育段階で、避妊方法や緊急避妊、性感染症の予防、性と生殖に関する健康と権利などについて教育すべき」と主張。幅広い範囲を体系的に学ぶ「包括的性教育」の必要性を訴えた。


このニュースに関するつぶやき

  • 去年も東京のとある区で中学生相手に『性交』『避妊』って言葉使って性教育したら議員がそれを問題視して都教委から区教委に指導が入ったなんてのがあったが、馬鹿馬鹿しい
    • イイネ!118
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