NHK元キャスターに聞く、パパママ「子育て」奮闘記 第4回 子どもの主張「いいよ」とそのまま認めたら、わがままな子になる?

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2019年11月13日 10:32  マイナビニュース

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「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

今回は「自己肯定感を育てるためには、"認めることば"が大切だとわかったけど、わがままな子になってしまうのでは?」という新たなお悩みに、親子コミュニケーションアドバイザーとしてお答えします。

叱ることも、ほめることも、言い方を間違えると、実は親の理想や価値観を押し付けることにつながるおそれがあるため、「そのまま認める」ことが大切です。理由は第3回で書いた通り、自分の考えで決めて行動できる子に育って欲しいからです。

でも、叱ったりほめたりせず、「いいよ」とそのまま認めていたら、わがままな子になるのでは?と心配になったお父さん、お母さん。その気持ちわかります。
○子どもはいろいろな人を見て育っている

実は、私自身も不安に思っていましたが、ある時こんなことがありました。

娘が「ママ、2階から私の青いセーター取ってきて」というので、「いいよ」と取りに行って渡したら、「ありがとう! ごめん、お揃いの靴下も2階だったから取ってきて」と言うので、「いいよ」と言って取りに行って渡した時、「ママってすごいよね」と娘が言いました。「えっ、どの辺がすごい?」と聞くと、「ママはいつも『いいよ』って私の話を聞いてくれる。普通お母さんだったら、『自分で取りに行きなさい!』って頭ごなしに怒ると思うんだよね」と言ったのです。

その時、「いいよ」と言われることを娘は当たり前だと思っている訳ではなかった、と安心したのと同時に、娘を育てているのは私だけではなかったと、気づかされました。つまり娘は、私の知らないところで、いろいろな人を見て、いろいろな方々と関わりながら成長しているのだという、当たり前のことに気づいたのです。
○子どもが自己肯定感を育める時間は、あまりない

例えば、親が我が子と接している時間を100としたとき、そのうちの7割をほめて認め、残りの3割を叱って、バランスをとったとします。

しかし、お子さん自身の時間を100としてみたら、どうでしょう? 親と関わる時間は、その子の時間の3割に過ぎないのではないでしょうか。残りの7割は、園や学校、クラブや塾、お友達と遊んだり登下校の時間です。では、その親が接しない7割の時間、子どもは自己肯定感を育めているでしょうか。

ある1日の我が子を想像してみましょう。朝、教室で先生が「さあ、今から3人ずつのグループになりましょう。どうぞ」と言った時、出遅れて、一人取り残された(あれ、ぼくだけ、ひとり余った……)。

お昼の時間、「給食当番のリーダーに立候補してくれる人!手を挙げて」と先生。いつもは手を挙げないけど、今日は、勇気を出した。でも、選ばれなかった(なんで、ぼくだめなの……)。

お絵かきの時間、クラスで1番絵が得意だから、頑張って描いた。それなのに、別のお友達が褒められていた(え、ぼくじゃないの?)。

それでも帰り道、友達とケラケラ笑って下校していたら、自転車のおじさんに「道に広がって歩くな!危ないだろ、邪魔だ!」と怒鳴られた(ぼく邪魔な子なの……)。

そうしてボロボロになって帰宅します。「ただいま!」と元気に振る舞って玄関を開けたとたん「どうして服が汚れてるの!」とお母さんに叱られたら、もう泣きたくなるはずです。お父さんお母さんが見ていない7割、誰もお子さんを否定してないし、意地悪した訳でもありません。でも、認められているか、というとそうでもありませんね。

もちろん子どもは、悔しい思いをしたり、悲しかったり、挫折したり、辛かったりすることも大切です。しかし、それと同じくらいうれしかったり、楽しかったり、誇らしかったり、幸せだったりすることがあって、バランスよく成長するのだと思います。そう考えると、子ども自身の親と過ごす残りの3割の時間は、お父さんとお母さんが全力で認めてもバランスは取れるのではないでしょうか。
○日本の子どもの自己肯定感はダントツ低い

認められることで子どもの自己肯定感が育っていきますが、日本は、世界の先進国の若者に比べて、自己肯定感が圧倒的に低いというデータが出ています。

「自分のことが好き」「生きている価値があると思う」と答えている世界の若者が8割以上いるのに対して、日本は半数にも満たない結果です。とても悲しいことです。これは、日本が謙虚さを重んじる文化だという面もあると思いますが、親のことば掛けも影響していると私は思っています。

欧米では、子どもが特別なことをしなくても、常にそのまま認める言葉「グッドジョブ!」「グッドボーイ!」と育てます。一方、日本では子どもが努力したことや頑張ったことは、当たり前のこととして何も言わず、悪いことや失敗した時だけ叱ります。

先ほど例にあげた1日で言えば、頑張って立候補したことはだれも認めてくれないし、一生懸命に絵を描いたこともわかってくれません。つまり、日本の子どもはいつも悪い点だけを指摘されて、よいことをしても当たり前とされる文化なのです。

だからせめて、お父さんお母さんだけは、自分が見ている時間だけでも、子どもの頑張ったことや努力したことに気づき、認めてあげる世界でたった一人の存在でありたいと思います。

○執筆者プロフィール :天野 ひかり

・親子コミュニケーションアドバイザー

・NPO法人親子コミュニケーションラボ代表理事
上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。
NHK「すくすく子育て」キャスターとしての経験を生かし、全国の親子に寄り添いながら、講演会や講座、シンポジウム、企業セミナー講師などを実施。
自身が立ち上げたNPO法人でも、子どもの自己肯定感を育てる親子のコミュニケーションを学ぶ教室「ことばでおやこみゅ教室」を主宰する。
■公式HP: h I k a r i a m a n o
■著書
・Amazon子育てランキング1位のロングセラー
「子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ」サンクチュアリ出版
・最新刊
「賢い子を育てる夫婦の会話」あさ出版 ほか。(天野ひかり)

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