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女性は万引き、男性はFX…シニアが陥りやすい4つの「依存症」

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2019年11月14日 08:00  AERA dot.

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写真※写真はイメージです (Getty Images)
※写真はイメージです (Getty Images)
 元タレントの田代まさし容疑者(63)が6日、覚醒剤取締法違反(所持)の疑いで、またも警察に逮捕された。依存症は意志の弱い人が陥る病気、と思っていないだろうか。そこに落とし穴がある。

【依存症に陥らないためのポイントや適正飲酒の10カ条はこちら】

*  *  *
 専業主婦だった70代の女性。数年前に夫に先立たれてから、あることがやめられなくなった。子どもは巣立って遠方にいるため、一人暮らし。寂しさと心にぽっかりと開いた何かを埋めるために、いつも通うスーパーで食品に手を伸ばし、かばんに入れた──。

 万引き依存症に陥る典型的なケースだ。

 大森榎本クリニック(東京都大田区)で依存症の臨床に長年携わる精神保健福祉部長の斉藤章佳さんは言う。

「今、『万引き依存症』の患者が増えてきています。全体の7割が女性で、そのうち6割から7割が65歳以上です」

 そのほとんどが「おなかがすいたから」「貧乏だから」とやむにやまれず万引きに手を染めたのではない。

「万引きが発覚すると、家族に連絡がいきますが、驚かれることがほとんど。まさかうちの母が、と。ある程度、世帯収入があって、外見も整い、服装もしっかりしていて見た目ではわからない。もともとまじめで意志が強く、他者配慮的な人が多い。そういう人ほど陥りやすいと言えます」

 彼女たちに共通することがある。

「喪失体験と孤独感。この二つにストレスも相まって、万引き依存症になってしまうケースがよく見られます。特に多いのが、配偶者との死別。ほかにも、高齢となればいろいろな喪失体験があります」

 女性に限らず、定年退職することによる「社会的役割の喪失」や、体の衰えによって目が見えづらくなる、耳が聞こえにくくなる、記憶力が低下する、足腰が弱くなるといった「身体的機能の喪失」、配偶者や友人が亡くなっていく「コミュニティーの中での孤立」の体験がある。男性の場合は「性機能の喪失」も。心に穴が開けば、埋めるためのものが必要になる。そして、それが依存症に陥るきっかけとなる。

「万引きによるちょっとした“達成感”や“快楽”によって、その穴は縮まりますが、時間が経てばまた広がって寂しくなり、これを繰り返すわけです。健全な人は趣味やコミュニティーでのつながり、家族関係などで穴を埋めていくのですが、孤独な人はつながりがないためにうまく対処できないのです」

 こういった思考回路を見直すために有効なのが、認知行動療法だ。万引きがもたらすのは達成感や快楽ではなく、罪と家族や周囲への迷惑であること。これを専門家との対話や自助グループでの会話から、粘り強く理解してもらうことが回復への糸口となるという。

 元々ギャンブル好きだった50代の男性は、管理職に就いてから心的負担が増えた。最初はちょっとしたストレス発散のつもりだったが、そのうち仕事帰りや休日のウォーキングの途中などでパチンコ店に入るようになり、競馬につぎ込む金額も大きくなっていった。手持ちがなければ金を借り、気づけば雪だるま式に借金が膨れ上がっていた──。

 中高年男性に多いのがギャンブル依存症だ。パチンコ、スロットのほか、競馬などの公営ギャンブル。元来の趣味がエスカレートして、歯止めが利かなくなる。

 久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)の松下幸生副院長は、こう話す。

「ギャンブル依存症はお金の問題が大きくなります。ギャンブルのコントロールが利かなくなり、その結果ほとんどの人が借金を抱えてしまいます。当院を受診する人で、借金がないという人はほぼいません」

 特に最近、FXに依存する中高年男性が増えてきたという。FXとは外国為替証拠金取引のこと。業者に担保として証拠金を預け、国内ではその最大25倍の外国通貨の売買ができる。日本は世界一の「FX大国」で、2016年度の取引規模は5千兆円規模だ。

「普通に働き、ちゃんと給料をもらっていて、家庭もある。それなりの地位を得ている人が多い。そういった方が、1千万円単位の借金を抱えているんです。パチンコなどに比べると桁違いです」

 中には億単位の借金を抱えてしまった人もいる。しかし、治療の最中に「これでやめる」と手を出したFXで億単位の利益を上げ、借金を返済してしまったという。ここに怖さがある。

「患者さんの口からよく聞かれるのは、『負けが続いているから、これは勝ちが近い』という言葉。冷静に考えればそんなことはないはずなのに、当事者は真剣にそう信じています」

 ギャンブル依存症にも認知行動療法が有効だ。対話を重ねながら、次は勝てると思い込む認知のゆがみを見直し、ギャンブルをしない生活習慣を身につける。

 パチンコを例にすれば、現金を持ち歩いているとやりたくなるので、所持金を制限したり、財布に入れるのは紙幣ではなく硬貨だけにしたりする。

 60代の男性はここ最近、飲酒量が増えていると感じていた。現役時代はこれといった趣味もない仕事人間。会社でのストレスは晩酌で発散していた。定年退職後は家にいてもやることがなく、妻はパートに出ているため話し相手もいない。昼間からテレビを見ながら飲酒をするようになった。酔いが回る高揚感を求めて、酒を切らせば大雨が降ろうが強風が吹こうが、買いに出かけるようになっていた──。

 最も知られている依存対象は、やはりアルコールだろう。万引きやギャンブルと同じで、寂しさやストレス、快楽のために依存してしまう。

 原宿カウンセリングセンター(東京都渋谷区)所長で臨床心理士の信田さよ子さんが説明する。

「会社で立場が変わり困難があったときや、定年退職した後の生き方がうまく見つからなかったとき、親族間で相続争いが起きたとき。そういった人生に降りかかってくる様々なリスクが引き金になります」

 最近の特徴として、女性が増えてきたことが挙げられるという。

「1990年代までは、アルコール依存症の男女比は9対1で、圧倒的に男性に多かったんです。が、最近は6人に1人が女性になってきています」

 女性の潜在患者はもっといる、とも指摘する。

「一般的にシニアの男性が多いと言われるのは、家族が気づくからです。夫、父の収入で食べていれば、倒れられては困るし、万が一飲酒運転で事故を起こせば、社会的な影響もあります。だから、家族が騒ぐんです。時代背景的に専業主婦が多かったシニア女性の場合は、アルコール依存症に陥り家族に指摘されても、『今まで我慢してきたのに、なんで文句を言われないといけないの』と話に乗ってくれないケースがあります」

 また、核家族化や夫婦のみの世帯の増加といった社会的変化で、家族間のコミュニケーションが希薄化していることも、女性の依存症が気づかれにくい要因の一つだという。

 アルコール依存症患者が好んで飲む酒の種類にも変化が見られる。高齢患者の自宅に訪問することもある前出の斉藤さんは言う。

「昔は4リットルのペットボトルの甲類焼酎やウイスキー、ブランデーなどが多かったのですが、最近はストロング系缶チューハイの缶が床に数えきれないほど転がっていることが多いんです。アルコール度数が9%と高く、価格はお手頃。年金で生活している高齢者からすれば非常に魅力的です」

 厚生労働省は「純アルコール20グラム程度」を1日の「節度ある適度な飲酒」の量とする。これはおおよそ500ミリリットルの缶ビール1本分だ。対してストロング系缶チューハイは同量で36グラム。斉藤さんは警鐘を鳴らす。

「依存症患者は酔うことが目的なので、手っ取り早いのかもしれませんが、テキーラでいえばショットで4杯半くらい。ガンガン飲むのは、飲み方としては相当危険です。命を失う飲酒につながることもあります」

 当然、自身の老いも意識しなくてはならない。

「高齢になると、身体的機能の衰えに加えて、体内の水分量が減ります。アルコールは水に溶けるので、体の水分の絶対量が減っていると、これまでと同じ量を飲んでも濃度が高くなってしまうんです」(前出の松下さん)

 飲み方にも気をつけたい。日ごろから寝酒に利用したり、不安を和らげたりするためなど、目的があって飲酒する人は要注意だ。

「習慣どおりに同じ量を飲んでも、同じように効果が出るわけではありません。アルコールに対する耐性がついてくるためです。耐性がつくと、効果を求めてどうしても量が少しずつ増えていきます。普段から量をセーブすることを心がけてほしいです」(同)

 下の「適正飲酒の10カ条」を参考にして、ほどよい飲酒習慣を身につけたい。

 それでも、アルコールがやめられないとなれば、やはり認知を見直す必要がある。このとき、

「依存症だと認めるかどうかについては、あまり重要ではありません」

 と松下さんは言う。

「お酒の問題がその人の健康や社会生活にどれくらい影響があるか。それを認めてもらうことが大事。診断するのは医者。周囲も依存症を認めさせることに熱心になる必要はありません。責めるのではなく、お酒を減らして元気になってくれたらうれしいとか、ポジティブに話をすると受け入れられやすいです」

 また、薬物治療もある。

「飲酒欲求を抑える薬や、嫌悪療法と呼ばれる、お酒を飲むと気分が悪くなるといった反応を起こす抗酒剤があります」

 今年3月に国内で初めて、飲酒量低減薬が登場。「断酒」が困難であれば、「減酒」から始めることも選択肢の一つだ。

 今、新たに問題になりつつあるのがゲーム障害だ。スマホなどのゲームをしたいという衝動を抑制できず、日常生活に重大な支障が出る状態のことだ。5月に世界保健機関(WHO)が依存症に認定した。ゲーム依存も内包するインターネット依存は若い中高生の患者が多いが、今後はシニアにも広がる可能性があると松下さんは指摘する。

「当院に来るネット依存患者は、学校に行かなくなってしまって引きこもる学生など、8、9割が中高生です。中高年は1、2割ほど。生まれたときからインターネットに接している世代とでは差がありますが、今後デジタル機器に慣れ親しんだ世代が高齢になったとき、依存症患者が幅広い年齢層で現れることも考えられます」

 19年の厚生労働省の依存症対策全国センターのデータによれば、全国にはアルコール依存症の患者が約107万人、ギャンブル依存症の患者が約320万人いるという(いずれも潜在数)。万引きやインターネットも含めれば、ごく身近に何かに依存してしまっている人がいてもおかしくはない。前出の斉藤さんは言う。

「依存症は自身で認識できていないことがほとんどで、なかなか病気とは認めたがりません。人とのつながりを取り戻し、周囲の声に少しずつ耳を傾ける。そして、健全な依存先を見つけることがまず大事です」

(本誌・秦正理)

■適正飲酒の10カ条
(1) 談笑し 楽しく飲むのが基本です
(2) 食べながら 適量範囲でゆっくりと
(3) 強い酒 薄めて飲むのがオススメです
(4) つくろうよ 週に2日は休肝日
(5) やめようよ きりなく長い飲み続け
(6) 許さない 他人(ひと)への無理強い・イッキ飲み
(7) アルコール 薬と一緒は危険です
(8) 飲まないで 妊娠中と授乳期は
(9) 飲酒後の運動・入浴 要注意
(10) 肝臓など 定期検査を忘れずに
公益社団法人アルコール健康医学協会から

※週刊朝日  2019年11月22日号

このニュースに関するつぶやき

  • 半額依存症だわ
    • イイネ!1
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  • それらを予防するためのスマホ依存です(笑)
    • イイネ!27
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