写真 岩波明氏 (撮影/本誌・秦正理) |
近年、耳にすることが多い「発達障害」。依存症ともかかわりが深いことがわかっている。発達障害が専門で、昭和大学附属烏山病院長の岩波明さんに聞いた。
* * *
発達障害と聞くと、アスペルガー症候群を代表的な疾患として思い浮かべる人が多いかもしれません。ですが、実は注意欠如多動性障害(ADHD)のほうが数は多く、成人の有病率は人口の5%くらい。20人に1人という多さです。
ADHDは生まれつきのもの。「落ち着きのない、授業中に歩き回る子ども」といったイメージを抱かれる方が多いでしょうが、大人になってから自身が発達障害であると気づく人が多くなっています。多動性は成長するにつれて多少抑えられますが、ADHDのもう一つの特徴である衝動性は抑えられません。
たとえば、会話の中で自分の考えが浮かんだら、相手の話を聞かずに話しだしてしまう。ADHDの診断基準にもある「かぶせて話す」という典型的な特徴です。ADHDではない人でもこうした言動はありますが、違いは頻繁にあるかどうか。ADHDの人は自身で注意していてもなかなか止められないんです。
そのADHDと依存症は結びついていることが多いんです。ADHD患者の中で依存も併存している人は約15%とするデータもあります。衝動性が依存につながるわけです。薬物などをやりたいという衝動を抑えられないのです。
また、ADHDの人は経済観念が甘いということもよくある傾向です。ネット通販でどんどん注文してしまう買い物依存は、買わずにはいられないという衝動とこの傾向が合わさったケースが多く見られます。
依存に陥らないためには、衝動性のコントロールが必要になります。ADHDを改善するには投薬が最も効果的です。投薬に抵抗がある人には、医療機関によるグループ療法もあります。認知行動療法を用いて、何に困っているか、どういう対策をするかなどテーマを決めて話し合います。
ADHDの人はまだ世間の理解が得られにくく、症状について話せる仲間がいない。孤独に悩んでいる方が多いのです。他の当事者の意見を聞くことで、自分の問題をより実感し、障害をよく知ることが治療や予防の第一歩。ADHDを改善すれば、依存もかなり改善されます。気になったら受診するのがベターです。
※週刊朝日 2019年11月22日号
【おすすめ記事】5人に1人の子どもが悩んでいる! 発達障害と間違えやすいHSCとは?