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「英語専門家おらず、民間試験の話題なし」導入の経緯を「知るはず」の委員の証言で浮かぶ疑惑

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2019年11月14日 11:30  AERA dot.

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写真(c)朝日新聞社
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 土壇場で延期が決まった大学入学共通テストの英語民間試験。公平性が担保されないだけでなく、 審議の過程も不透明だ。導入の経緯を「知るはず」の識者たちが取材に応じた。AERA 2019年11月18日号に掲載された記事を紹介する。

【「英語民間検定試験」現場からの悲痛な声続出】

*  *  *
 15年3月、「中央教育審議会」会長だった安西祐一郎氏を座長に文科省が始めた「高大接続システム改革会議」(27人)は約1年後の16年3月、「4技能のうち『話すこと』については特に環境整備や採点等の観点から、20年度当初からの実施可能性について十分検討する必要がある」などの最終報告を行った。

 メンバーの一人、南風原朝和(はえばらともかず)・東京大学名誉教授は本誌の取材にこう答えた。

「会議では、全てマークシート式の現行の大学入試センター試験に、国語などに一部記述式問題を導入するかどうか白熱した議論があったものの、英語民間試験のことはほとんど話題にも上らなかった。重要な議題については文科省の担当者が事前に打ち合わせに来られていましたが、それもありませんでした。最終報告が導入時期の遅れの可能性を示唆しているように、差し迫った議論にはならなかったし、民間に丸投げするような話は一切出ませんでした」

 心理統計学とテスト理論が専門の南風原氏は東京大学高大接続研究開発センター長を務めた、この分野の第一人者だ。

 しかしわずか5カ月後に文科省が発表した「高大接続改革の進捗状況について」で状況は一変、システム改革会議で俎上にも上らなかった「センター試験英語の廃止」方針が打ち出された。この間、議論していたのは会議のメンバーなどから選ばれた9人からなる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)検討・準備グループ」だ。だが、委員に入った全国約5200の国公私立高が参加する「全国高等学校長協会(全高長)」元会長で、東京都立八王子東高校で統括校長を務める宮本久也(ひさや)氏は、こう首をかしげる。

「大きな制度設計を考えるワーキンググループで、やはり記述式問題の導入が最も大きな話題でした。私を含めて英語の専門家は一人もいなかったので、4技能評価をどうするかなど英語の細かい議論はできない。文科省の担当者は、英語については別に専門家による検討を考えたい、と話していました」

 この検討・準備グループの議事録は17年5月の第10回から公開されているものの、それまでは非公開。英語の小委員会があったかどうかも含めて不透明ななか、巨大な利権が発生する新テストが産声を上げていたのだ。国会でも野党はこの経緯に注目、9回目までの議事録の公開を求め、政府もそれに応じる姿勢を示した。「第3のモリカケ」検証の扉が、ようやくこじ開けられた。

 政府が英語民間試験を推進する動機について、大学入試センター名誉教授の荒井克弘氏はこう分析した。

「最近は経済産業省も民間の教育産業に注目し、『教育再生』を掲げた情報発信を熱心に行うようになった。新産業として芽があると思ってのことでしょう。受験生の大きなマーケットを確保するためには、入試に組み込んで定着させるのが最も効率的ですから。あくまで私の推論ですが」

 そしてもう一つ挙げたのが文科省の「野心」だった。今回の英語民間試験導入の経緯の中で、文科省で事務局として動いてきたのは、高校までを司る初等中等教育局で、大学や短大を所管する高等教育局は影が薄かった。荒井氏が続ける。

「文科省には、高大接続改革の機に乗じて、財政面からだけでなく、教育面でも大学へのコントロールを強化したい意図があった。16年4月に初中局の審議官が大学入試センター理事に就任し、1年後には次期学習指導要領のまとめ役を担った同局の行政官が新テスト事業部に着任して、新テスト開発の主導権を初中局が握った。彼らからしたら、是が非でも攻略したいポイントだったでしょう」

 大学入試センターは全国から大学教員約700人を集めて問題作成、点検に当たってきた。入学希望者を選抜する大学側の責任として行ってきた「聖域」が壊れ、初中局に陣頭指揮を握られた。

「実際に、全国の教育委員会から高校教員経験のある指導主事などが専任職としてセンターに送り込まれた。現在は、すべての作題科目部会に彼らが指導・助言役として配置されています」(荒井氏)

 選抜する側の責任だった入試が、選抜される側に主導権を握られる。専門教育機関である大学に、高校までの教育でどれだけその基礎を養成できるのかが課題だったはずの「高大接続」問題の趣旨が、この入試改革では入れ替わったことを意味する。

「中学高校6年間の英語教育で英語をしゃべれないのは、大学入試に4技能評価がないからだ」

 こうした文脈で英語民間試験導入を強力に推進してきた下村博文元文科相は、「パーフェクトを求めていたらやれない」と延期に不満を表明、再導入に執念を見せている。下村氏の主張通り、民間試験を導入することで英語がしゃべれるようになるのかについても、専門家が時間をかけて丁寧に議論して検証する必要があるだろう。次代を担う若者の足かせにしかならないような改革は、国を危うくする。(編集部・大平誠)

※AERA 2019年11月18日号より抜粋

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  • 「採点基準作成のため事前に問題を持ち出す」だけでなく「その基準を用いた採点者研修のため1万人が事前に正答を知る」可能性が高いらしい。問題漏れるに決まってる https://mixi.at/ahYScZK
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