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東京新聞・望月記者への質問制限問題 アンケートから見えてきた記者たちの本音とは

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2019年11月14日 14:25  AERA dot.

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写真2019年5月30日、菅義偉官房長官の記者会見で挙手する東京新聞・望月衣塑子記者(手前中央) (c)朝日新聞社
2019年5月30日、菅義偉官房長官の記者会見で挙手する東京新聞・望月衣塑子記者(手前中央) (c)朝日新聞社
 東京新聞・望月衣塑子記者への質問制限をめぐって、新聞労連が5月に官邸クラブ員を対象にアンケートを実施した。官邸による質問制限問題の内情を詳細に描いた新著『報道事変 なぜこの国では自由に質問できなくなったか』(朝日新書)を出版し、自身も政治部記者として500回以上の官房長官会見を取材してきた新聞労連委員長の南彰氏が、アンケートの回答から浮かび上がってきた、政治部記者たちの本音やこの国のメディアが抱える課題を読み解いた。

*  *  *
 官邸権力と記者の攻防を描く映画『新聞記者』の満員御礼が続くなか、7月8日、新聞労連本部にある週刊誌から取材の電話が入った。

 新聞労連が6月22日のシンポジウム「官邸記者会見の役割から考える」に合わせて実施した官邸クラブ員対象のアンケートに関して話を聞きたいという。映画の原作者でもある東京新聞の望月衣塑子記者に対する質問制限問題の論点や課題の整理を目指して行ったアンケートだった。会議で不在にしていた私が電話を折り返すと、記者から次のような質問を頂いた。

「アンケートには、望月記者の質問に対して批判的な意見が多く書かれていますが、何か新聞労連として望月記者に申し入れることは考えているのでしょうか?」

 思わず苦笑いを浮かべてしまった。

「常識的に考えて、そういうことが考えられますか?」

「いやぁ、そうですよね…」

 アンケートでは、望月記者の質問のスタイルについて感じていることを尋ねる質問項目を設けた。「質問が長い」(33人中17人)、「質問が主観的・決めうちである」(同16人)、「質問に事実誤認が多い」(同10人)などの回答が寄せられていた。このほかにも、官邸クラブ員が吐露した今の官邸取材の息苦しい実態などが綴られていたが、約30分間のやりとりで、「新聞労連の見解」を求められたのは、望月記者への批判的な意見が多かったことについてだけだった。どのような記事を書くための取材であるかは、察しがついた。

 この出版社とは、2年前には、官邸が始めた質問制限の問題点をWEB版に寄稿させてもらったご縁もあった。人によって考え方は様々だなと思いながら、若い記者の人だったので、念のため伝えた。

 「お互い『表現の自由』を大切にしている仕事なので、『書くな』ということは言いませんが、事実を隠そうとする側を利することはないことを願っています」

 アンケートは、菅義偉官房長官が加計学園問題で「総理のご意向」などと書かれた文書の存在を「怪文書のようなものだ」と否定したことをきっかけに、社会部の望月記者が参戦するなど、大きく変わった官邸記者会見のあり方について、官邸クラブ員の本音を探るところにあった。新聞・通信・テレビの33人(望月記者が官邸での記者会見に参加するようになった2017年6月以降に在籍していた人を含む)が協力してくれた。

 昨年12月に首相官邸が望月記者の質問を「事実誤認」「問題行為」と断定し、「問題意識の共有を求める」と官邸クラブに申し入れたことに対しては、64%が「納得できない」「どちらかと言えば納得できない」と回答。また、この申し入れに対して新聞労連が抗議声明を出したことには、「南委員長の退陣を求める」という意見もあったが、76%が「賛同できる」「どちらかと言えば賛同できる」と回答し、一定の理解を示した。

 官邸取材の体験として、「事前通告のない質問で官邸側から文句を言われた」「オフレコ取材で官邸側から特定の記者を排除するよう言われた」という人がそれぞれ7人いた。「官邸と内部で繋がっている社がある以上、記者会では動けない。まずは権力寄りのメディアの記者の意識をまともにしなければならない」「官房長官の夜回りでは、携帯電話やICレコーダーを事前に回収袋に入れて、忠誠を誓っている。非常に息苦しい」という意見も綴られていた。

 官邸クラブの記者の取材は、記者会見だけではない。息苦しいほどの相互監視が張り巡らされた環境のなかで、日夜、夜討ち・朝駆けなどを行い、何とか官邸内部の情報をつかみ取ろうと奮闘しているのである。そうしたなかで、独自のスタイルを貫き、称賛を浴びる望月記者に対する感情は屈折しがちだ。行き場のない感情を官邸は「望月問題」として利用し、メディア内部の分断を図ろうとしてきた。特に新聞・テレビなどの既存メディアが突かれている弱点は「同質性」だ。同調圧力に弱くなる。長年、取材先からのセクハラに泣き寝入りを強いられてきた構造と同じだ。

「官邸担当は過度な重要度を背負わされ、政権中枢から情報を取ることがメインの仕事として求められている。それぞれの社全体でジャーナリズムを守る覚悟を決めない限り、望月氏の独り相撲という構図は変えられない。官邸記者が望月氏と同様の振る舞いをして、社からどんな扱いを受けるかよく考えるべきだ。苦々しい思いをしながら、件の申し入れを読んだ官邸記者がどれだけいたか。変革を求められるのは、現場記者より、編集権者だ」

 アンケートに書かれた官邸クラブ員の訴えは切実だ。同質性の高い「ムラ社会」で窒息しそうな記者たちの悲鳴である。こうした状況から記者を解放するには、記者クラブの窓を開き、風通しを良くしないといけない。権力者にとっても、同質性の高い記者集団より、多様性のある記者集団の方がコントロールしづらい。

 元ハンセン病患者の家族への賠償を国に命じた熊本地裁判決について、朝日新聞が7月9日付朝刊で、複数の政府関係者への取材をもとに「国が控訴へ」と報じたが、安倍晋三首相が9日午前に「控訴断念」を表明。朝日新聞は「政権幹部を含む複数の関係者への取材を踏まえたものでしたが、十分ではなく誤報となりました」「参院選が行われている最中に重要な政策決定をめぐって誤った記事を出し、読者や関係者の皆様に多大なご迷惑をおかけしてしまい誠に申し訳ありません」と謝罪する記事を出すことになった。

「アクセス・ジャーナリズムの失敗。あるいは、アクセス・ジャーナリズムを手玉にとった選挙戦術。しっかりしろ、新聞記者。『控訴の方針を明かにした政府関係者』は誰だったんだ?」

 映画「新聞記者」にも出演した元文部科学事務次官の前川喜平氏は即座にツイッターで、権力側へのアクセス(接近)を重視した今の政治取材のあり方を批判した。

 朝日新聞は謝罪記事の末尾に「今後はより一層入念に事実を積み重ね、正確な報道を心がけて参ります」と書いた。しかし、いま求められているのは、精神論を超えた構造的な改革だ。新書『報道事変』ではその方向性を打ち出したので、ぜひ議論を前に進めていきたいと考えている。

 新聞労連が行っている作文ゼミには、新聞社を目指している学生が毎年数十人集まってくる。そのなかには、望月記者にあこがれている人も少なくない。映画『新聞記者』のヒットによって、そうした傾向はさらに強まるだろう。望月記者は一つのモデルであって、万能ではない。しかし、将来世代や社会が期待する多様な記者像の芽を摘んでいては、日本の報道に未来はない。安倍政権が与えた試練を乗り越え、新しい時代のメディアを切り開いていきたい。(新聞労連委員長・南彰)

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このニュースに関するつぶやき

  • 東京生まれだけど東京にいないから東京新聞は無知ǭ
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  • 東京新聞は出入り禁止でいいんじゃね( `ー´)ノ永久追放が妥当だろう。
    • イイネ!33
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