CHIHIROに聞く、SNS時代のリスナーに伝えたいこと「“自分がこう見られたい”を考えて生きてるのはもったいない」

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2019年11月15日 10:21  リアルサウンド

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CHIHIRO

 恋愛リアリティショー『かぐや姫と7人の王子たち』(AbemaTV)主題歌にも起用された「好きだけどサヨナラ」など、リアルなラブソングが支持を得るシンガーソングライター・CHIHIRO。彼女が11月6日に配信リリースした「My Life」は、ラブソングではなく仕事や人生に悩むリスナーを勇気付ける、力強い応援歌だ。今回のインタビューでは同楽曲の魅力を紐解きながら、CHIHIROの軸にあるものやハワイでの生活から得たこと、そしてリスナーに伝えたいメッセージについて聞いた。(編集部)


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■「みんなの背中を押せるような応援歌が作れたら」
――ニューシングル「My Life」は、リアリティのある歌詞が印象的な応援歌。この曲を作った経緯を教えてください。


CHIHIRO:私の曲はいつもラブソングが多くて、そこから知って応援してくれる方も多いんです。イベントやサイン会で「今こんな恋愛してるんです」とか「前はこうだったけど今はこうなりました」って報告をくれたり、SNSで恋愛相談を寄せてくれたり。そんな感じでずっと女性の恋の話を聞きながら曲を書いてきたんですが、彼女たちが大人になるにつれてだんだん悩みや相談も変わってきたなって。最近だと「彼が結婚に向けて動いてくれない」とか「結婚もしたいけど急に夢ができて困っている」といった、少し年齢を重ねたからこその内容になってきてるんです。なので今までとはちょっと角度を変えた、そういう現状に悩むみんなの背中を押せるような応援歌が作れたらなって。


――なるほど。Aメロの歌い出しから、人生にもがいている感じがすごく伝わってきますもんね。


CHIHIRO:ある程度大人になった女性って、悩みがひとつではない気がするんです。夢、仕事、恋愛、結婚……と、いろんなものが複雑に絡み合ってるというか。そして、恋愛の話は人にしても、今おっしゃったような“人生のもがき”ってあまり人に話さないものだなって。でもみんなきっと抱えているものだし、悩んでいると思うので、できるだけそこをリアルな歌詞で書いていくことにしました。


――歌詞のアイデアやヒントにしたものはあるんですか?


CHIHIRO:身近な友人やファンの方の声、あとは自分のことも入ってます。例えばSNSの部分は、今って、タイムラインがキラキラすることばかりに気をとらわれて背景が見えないし、充実ぶりをアピールするみたいな風潮があるじゃないですか? それに疲れてる子が実は多いんじゃないかなって。“自分がこうありたい”じゃなく“自分がこう見られたい”を考えて生きてるのは、なんかもったいないなって。


――同感です。


CHIHIRO:本人が良ければそれはそれでいいんでしょうけど、ファンの方からの“いいね”はもちろんうれしいですけど、プライベートだったら私は“いいね”とか別に気にしないって思うタイプ(笑)。でも、そればかり気にして生きる人生って面白い? って。SNSの世界が全てで、誰かの投稿を見ては劣等感を抱いたり落ち込んだりする人も多いだろうし、そういう迷いとか葛藤をすくい上げられていたらうれしいです。


――サビでは力強い言葉も並んでいますね。作詞で意識したことはありましたか?


CHIHIRO:サビの中間くらいにある〈便利な「頑張れ」という誰かの言葉はいらない〉という歌詞がまさにそうなんですが、結局、自分で自分を奮い立たせないと何も変わらないと思うんです。そこに気付かず、“待っていれば幸せは来る……”みたいに夢見る少女のままでいる人って結構多いのかなって。思いはあっても行動が伴わないと意味がないし、自分で動かなきゃダメだよっていうのをすごく言いたくて、サビの頭から〈それでも、やるしかない〉っていう強い言葉を掲げてみました。


――でも決して熱血な感じはしないのが不思議だなって。


CHIHIRO:熱すぎると説教くさいじゃないですか(笑)? そのへんのバランスはすごい苦労したところで、何度も言葉を入れ替えたりしながら完成させましたね。頑張ってほしいからこそ“頑張って”って言葉は使わず、“自分次第だよ”ってことを伝えたかったです。


――今作が出来上がってみて、CHIHIROさんが今まで書いてきた恋愛ソングとは何か違いを感じましたか?


CHIHIRO:私って切ない曲や「聴いていると病む」って言われるくらいリアルな痛々しい恋愛の曲も多いんですけど、そういう歌詞でも最後には幸せになってほしい、光を見てほしいと思って書いているんです。“ダメ男”とダメな恋愛をしてる歌でも、基本的には“決断をするのは私”とか“自分の選択で人生ができてる”っていう終わり方にしているので、そういう意味ではブレてないのかもしれないです。


――最終的にはポジティブなメッセージを込めているんですね。


CHIHIRO:はい。ダメな相手とかダメな恋愛なのは事実でも、それが次の恋の糧になるかもしれないし、全部を否定しないでちゃんと前を見ていこうって。そういう作り方はどの曲も一緒だから、今までの私の歌に“ああ悲しい”とか“ただあの人が好き”っていう曲はたぶんひとつもないんです。せっかく書くなら、何か人生が変わるスイッチになればいいなと思うので、泣いて終わり……みたいな曲は作ってないですね。


――「My Life」はリスナーからどんな反響がありましたか?


CHIHIRO:「こういう曲もいいね」とか「今まさに悩んでいることを書いてくれててスッキリした」って声もありました。多くの女性っていろんな節目でこういう気持ちを通過すると思うから、共感して、何か胸を揺さぶられてたらいいなって。


――透明感と芯のある歌声がスッと胸に響きますからね。


CHIHIRO:今回は普段の曲より言葉数が多くて、語っているような感じでメロディも細かく入れたんです。なので、1人で街中を歩いてるときにイヤホンやヘッドホンで聴いてくれたらなって。仕事帰りで疲れたときや嫌なことがあった部屋の中とかでもゆっくり味わってほしいです。


■「まずは自分が楽しかったり輝ける場所を探してほしい」
――ところで、CHIHIROさん自身もこの歌詞のような“何事も自分次第”という信念を持って動いているタイプですか?


CHIHIRO:基本はそうですね。むしろ、ダメでもいいじゃんって感じで何でも挑戦するタイプ。もともとこの世界に入ったきっかけは、曲を書くのが好きで作曲家になりたかったんですね。独学で作ってた曲たちを手当たり次第にレコード会社に送ってみたんです。そうしたら5社くらいから電話があって、その時は歌ったこともなくて、歌はこれからレッスンしていこうって言ってくれて、それから歌もはじめて、好奇心でライブを初めて、聴いてくれる方が増えて来て、デビューのお話しを頂いて、ここまで来たんです。怖がらず進んできた自分の人生にもちょっとした説得力があるなと思っていて、人生は一度きりだし、やっぱり行動しないと新しい世界は見えない。もちろん全部をパパッと成功させることはできないけど、動くことで必ず世界は変わるし、そういう思いも歌で伝えていきたいなって。


――抜群の行動力で、以前はハワイをメインに生活していた時期もあったそうですね。


CHIHIRO:はい。そうですね、初めはアメリカと日本のギャップに戸惑いました。まず、考え方も違うし、ハワイの人たちって基本、全然悩まないんですよね。常にハッピーで笑ってて、やりたいときにやりたいことをやる……って感じで生きているので、こっちも悩んでることがバカらしくなるというか(笑)。


――あはははは。そうなんですね。


CHIHIRO:たまに日本に帰って悩んでも、またハワイに戻ると“何だっけ?”って。ケセラセラじゃないですけど、ハワイ流のその感じがすごくいいなって思います。音楽面も、向こうは広場とか野外のスタジオでいろんなアーティストがライブをしてて、それをふらっと見に行くのが日常。現地でラジオの仕事をやらせてもらったり、地元のミュージシャンと話をしたり……と、肩の力を抜いて気ままに音楽を楽しめる環境でした。


――ハワイでの生活はどうでしたか?


CHIHIRO:4年住んで、考え方も随分変わりました。人生はいつだって自分次第ということ、そして、自分の人生を楽しむということ、アメリカにいると表現の大切さにいつも気づかされました。子供も私達大人も自己主張をきちんとする。常にディスカッションしていいたいこと、伝えたいことはちゃんと届ける。自分を持つということの大切さと強さを家族で学んだ気がします。


――少し話は戻りますが、これまで女性に向けた歌を多く歌っているCHIHIROさんが、今を生きる女性たちに伝えたいことってありますか?


CHIHIRO:学生も社会人も、何をしてる人もそうなんですけど、まずは自分が楽しかったり輝ける場所を探してほしい。自分をいいテンションに保てるところに置いてほしいですね。恋愛だったらそれがパートナーだし、やりがいのある仕事っていうのも素敵だと思います。周りがそうしてるからとか、誰かに言われたから……ではなく、“ここなら居心地が良くて花咲ける”っていう場所がみんなにあるといいなって。


――でも、なかなか現状を変えられず、無理や我慢をして不本意な場所にいる人も多いのかなって。


CHIHIRO:私は、その後の自分がキラキラするためなら無理や我慢は別にしていいと思うんです。でもみんなの相談を見ていると、ただ自分を押し殺してそこで息をしている人も意外といるなって。自分の心が健康じゃないのに抜け出せない人には「そこだけじゃないよ」って言いたいし、自分の力でいい決断をしてほしいなと思います。私も、そういう人のためにも人生や生き方の歌をこれからどんどん書いていきたいし、アプローチは変わっても一貫してみなさんを応援する歌が書けたらいいなと思っています。


ーーでは来年、2020年の音楽活動で決まっていることはありますか?


CHIHIRO:今まさにいろんな曲を作っているところで、来年も新曲の配信リリースを予定しています。自分でもとってもとってもお気に入りの楽曲。歌詞はリアルで痛みも持っていて、でも全部通して聴くとみんなが前を向けるような楽曲になってます。裏テーマに童話のヒロインをひとつのモチーフにしようかと思っているんです。まだコンセプトは変わる可能性はあるんですけど、おそらく1人の女の子のストーリーのように聴いてもらえる仕上がりになりそうなので、ぜひ楽しみに待っていてほしいです。2020年も私流ラブソングを貫いていきたいと思います!!(川倉由起子)


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