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原因のひとつは日本にある 緒方貞子さんが生前語った中国、韓国と上手くいかない理由

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2019年11月16日 10:00  AERA dot.

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写真ヘルメット、防弾ベストを着用して戦時下のサラエボを視察。1993年7月(UNHCR/S.Foa)
ヘルメット、防弾ベストを着用して戦時下のサラエボを視察。1993年7月(UNHCR/S.Foa)
 10月22日に亡くなった、緒方貞子さん。緒方さんを何度も取材した朝日新聞記者の石合力が、緒方さんの著書『私の仕事』(朝日文庫)の巻末解説で明かした、緒方貞子さんの素顔とは? その一部を紹介する。

※「【追悼・緒方貞子さん】その実像と凄みを長年取材した記者が明かす」よりつづく

【1994年4月、1日で25万人の難民がルワンダからタンザニアに逃れた…写真はこちら】

*  *  *
■米国が育んだ国際感覚

 緒方さんが持つ、豊かでバランスのとれた国際感覚は、幼少期からかかわりの深い米国を抜きには語れない。

 最初にサンフランシスコに渡ったのが3歳になる直前の1930年夏。その後、オレゴン州ポートランドに移ってから、多様で自由な教育方針を持つ私立の小学校に入る。英語の勉強は、その後、父の転勤で中国に行ってからも続いた。

「日系2世のような人が家庭教師、子どもの世話役として一緒に来て、本を読むなど英語の勉強はずっと続けていました。やっぱり英語を知らないといけないと親が強く思っていたのですね」


 その後、米国の首都ワシントンのジョージタウン大・大学院に進んだ。博士課程では西海岸カリフォルニア大学のバークリー校へ。著名なアジア研究者、政治学者のロバート・スカラピーノ教授のもとで学び、政治学博士号を取った。

 当時を振り返り、「学問するのはああいうところ(バークリー校)かなと。学術的に優れた先生がいくらでもいる。考えてみれば、そこに最初に行っていたら埋もれちゃったかもしれないと思いました」と語る。

 ワシントンについて「議会と政府の特殊な政治(ポリティクス)を見る場所ですね。こまかなことはいくらでもわかる」とした上で「世界全体を見るのはニューヨークですね。国連があるからだけではなく、人間は経済と一緒に動くものです」と話す。

 ワシントンには、日本の「永田町」に当たる「インサイド・ベルトウェー」という言葉がある。米政界のインナーサークルに、緒方さんほど深く入り込んだ日本人はそういない。その緒方さんが、ワシントンからだけでは必ずしも世界は見えないと語るのだ。ワシントン、ニューヨークの国連本部、そして紛争地の現場に足を運んできた緒方さんならではの含蓄ある見方だろう。

 アジアとの関係重視や和解、「歴史問題」などについての発言も多い緒方さんだが、歴史問題で揺れる日韓関係をめぐって2014年4月、研究者仲間でもあるハーバード大のエズラ・ヴォーゲル教授、韓国の韓昇洲元外相と連名でワシントン・ポスト紙に投稿している。タイトルは「過去の傷を洗い流し、日韓はともに協力できる」。戦後、急速な経済成長を成し遂げた日本を名著『ジャパン・アズ・ナンバーワン』で描いたヴォーゲル氏は、投稿の直後、私のインタビューに答え、1937年の南京事件の犠牲者数をめぐる議論についてこう語ったことがある。

「もし『30万人だ』という見方に対して日本側が『それほど多くない』といえば中国人は怒る。問題は数が少なくても、旧日本軍がとった行動自体は正当化されない、ということです」

「僕が日本人なら、こう言うだろう。被害者数については様々な見方がある。それでも当時の日本人、旧日本軍の兵隊が中国人に対して悪いことをした。日本人はもう二度としません、と」

 緒方さんも、とかく感情的(エモーショナル)になりがちな日中、日韓関係について、こう語る。

「ひとつには日本の優越感があると思うのです。確かに近代化はアジアで一番早かったかもしれないけれど、いつまでも日本がナンバーワンで居続けるわけがない。日中、日韓、あるいは日米関係の上で初めて日本の将来があるということを徹底しないと。『持ちつ持たれつ』でいくことの意義を考えるべきです」

■現場主義はテニスの体力で

 緒方貞子さんの平和主義は、理想を掲げながらも常に「リアリズム」に立っている。その裏付けになるのが行動力と徹底した現場主義だ。それは、難民高等弁務官就任直後に起きたクルド難民危機で、早速発揮された。91年2月に着任して4月には、ヘリでクルド難民のいるイラクとトルコ、イランとの国境地帯に乗り込んだ。そこで国境の山岳地帯に流出する難民を見たうえで、緒方さんはこう語る。

「地形的にもトルコ側は絶壁になっている。(中略)多国籍軍は、トルコ側よりも緩やかなイラク側に安全地帯をつくり難民キャンプを設営する――つまり、難民たちを彼らの自国で守ることを考えた」

「従来の原則に則れば、イラクから人々が国境を越えて逃げてくるまでは私たちはノータッチだ。しかし、一番大事なことは苦しんでいる人間を守り、彼らの苦しみを和らげることであり、その場合、『国境』というものがどれほど実質的に意味があるのだろうか」

 現場からの報告を本部で受けるだけの指導者なら、前例にならった判断しかできないだろう。現場を見ているからこそ、従来の原則にとどまらない、状況に応じた判断ができる。そうだとわかっていても、それを実行できる指導者はさほど多くはない。

■難民問題で直言も

 難民高等弁務官、JICA理事長として難民支援の現場に長年かかわってきた緒方さんは、中東の危機、とりわけ大量の難民、国内避難民を生み出しているシリア内戦の行方に気をもむ。
 特に諸外国に比べても難民受け入れに消極的な日本政府の姿勢について、「けちくさい『島国根性』じゃないか。『積極的平和主義』というのなら、もう少し受け入れなければならない」と語るほどだ。

 緒方さんは世界の行方をどう見通していたか。米同時多発テロ事件が起きた2001年9月の翌月に米ハーバード大で講演した「グローバルな人間の安全保障と日本」の指摘は、「自国第一」を掲げるトランプ氏が米大統領に就任し、日本とアジアとの緊張関係が続く2017年の世界に対する警句のようだ。

「ここ数年、私は日本とアメリカの両国において内向き思考が進んでいることに不安を募らせてきました。国際的責任という意識が後退し、外交政策がポピュリズムに左右されるようになっていると感じていました」

「日本の指導者は日本の国是についての明確な感覚を失いました。内向き志向はナショナリズムを生み、外交は沈鬱な国内のムードを反映するものとなりました。日本の経済も安全もグローバルな基盤に依存しているという認識が失われてしまいました」

 あまりにも的確な先見性ではなかろうか。

 島国日本が、「日本はすばらしい」と自賛し、日本だけの繁栄や心地よさを求めればどうなるか。緒方さんは私にこう語っている。

「すばらしかったらそれを広めるということが一つの使命です。この国は物がなくなったりもしないし、犯罪もひどいわけじゃない。やや、心地よすぎるのです。だけど、ほかの国も心地よくならないと、いつかは、私たちも心地よくなくなる。それをもう少しはっきり認識することが必要ではないかと思います。いくら島国だって日本だけカンフォタブルではいられないから」

(石合力[いしあい・つとむ]/東京本社編集局長補佐[前ヨーロッパ総局長])

※緒方貞子著『私の仕事』巻末解説より一部抜粋

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  • どちらに原因があるか考える事を無意味とは言わないが、対応指針はそれだけでは決められない。これまで散々謝ってきて、なぜ上手くいかなかったのかを考えるべきでしょ。
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