中村七之助が振り返る『いだてん』への出演 実の兄・中村勘九郎と金栗四三の共通点とは

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2019年11月17日 07:41  リアルサウンド

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中村七之助『いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜』(写真提供=NHK)

 大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜』(NHK総合)が第40回より最終章へと突入した。ここまで数々の名場面があったが、とりわけ視聴者から絶賛の声を集めたのが、小松勝(仲野太賀)、美濃部孝蔵(森山未來)、三遊亭圓生(中村七之助)が中心となった第39回「懐かしの満州」だ。


 圓生を演じた七之助は、前半の主人公・金栗四三を演じる中村勘九郎の弟であり、本作脚本の宮藤官九郎の長編映画デビュー作『真夜中の弥次さん喜多さん』で主演を務めた縁がある。今回リアルサウンド映画部では、圓生役の中村にインタビューを行い、才能溢れる圓生をいかに演じたか振り返ってもらった。


【写真】三遊亭圓生の登場シーン


■「『ちゃんとした役だ!』と驚いた」


ーー圓生を演じることが決まった時の率直な感想を教えてください。


中村七之助(以下、七之助):兄が主役をやらせていただいていたので、本当に嬉しくて初回から毎週欠かさず見ています。宮藤さんの初監督作品の主演もやらせていただいた経緯もあり、兄が主役ということもあったので、何かしらの役で出演できればということは前々から思っていました。でも通行人Aとか、金栗さんの走っている横を通り過ぎる歌舞伎役者の役とか(笑)、1シーン1カットくらいかなと思っていたので、圓生という本当に大きい役にはびっくりしましたね。「ちゃんとした役だ!」と驚いたのが最初の印象です。


ーー落語の稽古もされたそうですね。


七之助:おいそれとできるような芸ではないので、自分が落語をやると決まった時は、正直不安でした。落語は昔から聞いていましたし、時間ができれば寄席に足を運ぶようにしていましたが、自分が落語をやるというのは想定していませんでしたね。森山未来くんの落語も素晴らしいので、この作品が変にならないように、自分の全力を出せたらと思っています。まだ目も当てられないような芸ですけれども、見ている方に違和感がないように意識してやりたいです。


ーー宮藤さんの脚本を読んだとき、どんな感想を持ちましたか?


七之助:「ここにあの話が引っかかるのか、前半に持ってきていたあの話をここで回収するのか」という伏線の回収の仕方が、宮藤さんの脚本のすごいところだと思っています。僕は本当に宮藤さんのファンで、毎週欠かさず『いだてん』を観ていますし、兄から先に 「DVD で見る?」と言われても「絶対見ない!」と言ってリアルタイムでずっと追いかけているので、実はあんまり台本を読みたくなかったんですけれどもね(笑)。出演してるので読まないといけないと思い、読むと、「なんだ、知っちゃったよ〜」という気持ちにもなりました。


ーー孝蔵と勝(仲野太賀)との名シーンも生まれました。


七之助: この三人は、戦火の中、異国の地で一生懸命頑張っている日本人としての絆が強いんじゃないかなと思います。圓生ははじめ、孝蔵とは所作も違って、感情も表に出すような感じの人ではないんです。二人もそんなに仲良くなかったと思いますが、この満州での期間で人間としても噺家としても、認め合い、尊敬していく状況になったんじゃないかと思います。実際、(古今亭)志ん生さんも圓生さんも東京に来てからどんどん芸が深まったと言われていますし、名声も大きく得た人たちですので。


ーー森山さんと共演してみて、いかがでしたか?


七之助:未来くんは、芝居や舞台を観に行かせていただいたこともあり、とても大好きで、尊敬する役者さんです。『いだてん』では、影の主役というか、一部から二部を通してずっと出ていて孝蔵さんが一番出演しているんじゃないですかね。しっかり孝蔵のキャラクターを掴んだ落語をしていて、グッとくる場面が多く、引けを取らないようにしなければなと感じました。圓生は、どんどん志ん生を認めていくという描写がありますけれども、私の場合は最初から未来くんを認めているので。未来くんは映像の世界でも先輩なので、胸を借りるという気持ちでいます。


■「金栗四三さんは、“欠如した魅力”がある」


ーー圓生さんの役が決まった時にお兄さん(中村勘九郎)とお話はしましたか?


七之助:「いい作品だから、変に見えてしまったら嫌だなあ」と言ったら「大丈夫だよ」って言っていました。「ちゃんとやれよー」と、それだけ言って帰っていきましたね(笑)。


ーー長いお付き合いがあると思いますが、七之助さんにとって宮藤さんはどんな方ですか?


七之助:変な人ですよ(笑)。いつも照れているような感じがしますね。普段からあのままですよ。考えていることも面白いですし、一人でクックと笑っていたりしていますし、脚本を書いていてもどんどん膨らんでいくんじゃないですかね。彼の中で、大まかなあらすじというのは考えていると思いますけれど、伏線の回収の仕方やキャラクターに対する愛情の深さ、キャラクターのいい部分の引き出し方、こういうこと言うだろうなというセリフ、それを納得させる役者の活かし方の上手さと、構成が合っていて、面白い作品を作ると思います。


ーーお兄さんである勘九郎さんが演じる金栗の魅力はいかがですか?


七之助:うちの兄の金栗四三さんは、もうまっすぐで、兄のストイックさのまんまなので、兄を見ているようです。でも兄は熊本に帰らないようなヒドイ人じゃないですけどね(笑)。四三はある意味ちょっと極端ですけど、走ることしか考えてなかった人なんだと思います。そういう、欠如した魅力というのもすごく出ていますし、すごく純粋な人だからこそ、みんなが支えているというのが、うちの兄にぴったりだと思います。面白いけれど、ふざけているようには見えないというか、真剣にやったことが面白く見えていることが、兄が演じる金栗四三像にぴったりなんじゃないかなと思っています。


(Nana Numoto)


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