ホーム > mixiニュース > コラム > 娘は不登校、父も帰宅拒否…姑の「自己犠牲の呪縛」と決別した母の行動とは?

娘は不登校、父も帰宅拒否…姑の「自己犠牲の呪縛」と決別した母の行動とは?

2

2019年11月17日 12:15  AERA dot.

  • 限定公開( 2 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真※写真はイメージです (Getty Images)
※写真はイメージです (Getty Images)
 夫婦や家族の間で問題が起きたとき「誰が悪いか」を考えるより、有用な方法があるという。カップルカウンセラーの西澤寿樹さんが夫婦間で起きがちな問題を紐解く本連載、今回は「家族システム」について解説する。

*  *  *
 台風19号の上陸から12日で1カ月となりました。この度の台風で被災された方には、心よりお見舞い申し上げます。

 実は、私も長野県にある実家の墓が水没したと聞き、先日、掃除にいってきました。近隣の人のお話を聞くと、床下浸水で済んだ家はよい方で、少なからぬ家が床上浸水したとのことでした。氾濫した千曲川からは相当離れていて、水害に合うなんてことは想像もつかない場所だったので、自然の力の大きさにただ驚くばかりでした。

 近年こうした大きな自然災害が頻発するのは、地球温暖化のせいだとして、Co2削減が大きな議論になっていますが、一方で、Co2濃度と地球温暖化の因果関係を否定する論客も相当数います。しかし、自然はそうした人間の議論や証明を待ってくれず、一方で全体のシステムのなかで最も弱いところに問題を引き起こします。今回の例でいえば、治水システム全体の中の最も弱い堤防が決壊したわけです。

 実は、家族の問題にも似たところがあります。因果関係にはいろいろな見方があり、それとは別に、家族システムの中で最も弱いところに「症状」が出やすいのです。

 徹子さん(仮名、40代、会社員)は高校生の娘が学校に行けなくなってしまい、どうしたらいいか、というご相談でおいでになりました。見た感じでは、仕事ができそうなやり手タイプの方です。徹子さんの心配はとても強く、スクールカウンセラーに相談したり、いろいろな本を読んで勉強されたりしていて、その熱意には頭が下がりました。

 ざっくりと状況お聞きすると、一家は4人家族。上の娘は「それなりに苦労した」けれど地方の国立大学に合格して家を出たそうです。親としてちょっとほっとしたところ、下の娘の野々花さんが中3になって学校をさぼるようになったそうです。中高一貫校ですが、出席日数が足りずに留年もちらつき始めているそうです。

 どうにかこの状況を突破するため、野々花さんに

「学校の何が嫌なの?」
「学校行く気あるの?」
「留年になったらどうするの?」

などと聞いても、

「わからない」
「別に」

と気のない返事をされるか、無視されるだけだそうです。

 知人に相談すると、「一貫校の子がたるみがちな時期だから、もう少しねじを巻いた方がいい」という人もいれば、「少し遠くから見守ったほうがいい、子どもを信用しなよ」という意見もあり、何が正しいのかわからなくなったそうです。

 カウンセリングにおいでになった目的をお聞きすると、

「どうしたら、娘が学校に行くようになるんでしょうか」

とおっしゃいます。

 いずれにしても、仮にわが子であっても他の人間を、操作する方法はないですし、憶測で話をしても仕方がありません。そのことをお伝えすると、

「人を変えるというのが無理だというのは本を読んでわかっているんですが、変えるっていうか、ただちゃんと学校に行かないと、この先困るのは本人なんです」

と、私の話はスルーされてしまいました。ご主人のことをお伺いすると、

「夫は内心は心配しているのかもしれませんが、現実には私に任せっきりで……」

とおっしゃいます。夫は仕事ばかりで頼りにならないから、一層自分が頑張らないと、と悲壮な覚悟で頑張っておられるのかな、と思いました。

 問題があるのは、一見、学校に行けない野々花さんのように見えますし、徹子さんはそう認識しています。しかし、私にはそうは思えませんでした。

 徹子さんは表面的には齟齬なく話しているように見えますが、実質的には私の話は一切聞かず、自分の要望だけをこちらに訴えているように感じます。話す内容は常識的で、話し方もとても丁寧ですが、無言の圧を感じます。私は、自分が娘さんの立場だったら結構苦しいな、と感じました。

 そして、自分のことなのに「わからない」を押し通す野々花さんと、なんとなくこの問題から身を引いているように見える父親の「無力チーム」VS. しゃかりきに「解決」しようとしている孤高の母親という構図も気になりました。

■「説教には慣れていますから」娘の本音

 後日、どうにか野々花さんにも来てもらうことができました。

「こんなところ、来させられちゃって、大変だねぇ」

と、野々花さんにいうと

「別に」

と言います。きたな、と思いつつ

「だって、こんなところに来させられて、カウンセラーに説教されるのって嫌なのが普通だと思いますよ」

と続けると

「慣れてますから」

だそうです。やはりそうでした。野々花さんから見えるのは、説教されたり、嫌なことを押し付けられるという世界です。だからシャッターを閉めているわけです。

「慣れていても、嫌なものは嫌でしょ」

と私が言ったあたりから、少しずつ、気持ちが緩んできたように思えました。最初は母親に送り込まれたカウンセリングルームなので警戒していたのでしょう。

「お姉ちゃんは、本当は悪いこと結構してたのに表向きはいい子を演じて、うまいこと地方の大学に入って逃げ出して……。今は、お母さんの風当たりはみんな私……」

 学校の話は一切せず、野々花さんが家族や自分をどう思っているかという話を小1時間、聞きました。

 断片的な話をまとめると、父親も、娘たちが小さいころは早く家に帰る子煩悩な父親だったそうです。そして母親の徹子さんが長女の中学受験に向けて忙しくなった頃から、父親は「仕事が忙しく」なり、長女が家を出たころには野々花さんは学校へ行きにくくなったそうです。

 つまり、最初は父親が帰宅拒否になって家族というシステムから抜け出し、姉には非行という「症状」が出ていた(けれど親は気が付かなかった)。その姉が進学で抜けたせいで、今度は野々花さんに濁流が押し寄せ、「症状」が出現したわけです。つまり、野々花さんの不登校は家族のダイナミックスを無視しては語れないものなのです。

 野々花さんが困っている、という意味では野々花さんは問題を抱えていますが、野々花さんが自身が問題だとは言えません。では、徹子さんが悪いのか、といえばそうとも言えません。

 誰が悪いかという観点ではなく、システムのどこがうまく機能していないのか、と見る必要があるのです。そこで有用なのは「力があるはずなのに出していない人」が誰かという視点です。

 野々花さん一家で「力があるはずなのに出していない人」は、第一には父親のように見えます。父親は仕事にかまけて家の中のことを妻に任せきりにし、もっと踏み込めば、妻の圧から退避したわけです。父親がこのシステム全体の機能不全を理解して、その解決に乗り出すというのが現実的な方略の一つだと考えられます。例えば、妻と話し合いの時間を設けて問題を共有するとか、そこまでできなくても早く帰って家庭のシステムの中に浸ってみるなど、パワーの出し方はいろいろ考えられます。もっと手前でいえば、自分がキーパーソンなんだと認識することもその一つです。

■義母の一言にめまい「明治時代かと」

 その場合に注意しなければならないのは、誰かがやり方を変えても、すぐに全体がスムースに最適化されるわけではなく、"揺らぎ"が起こる、ということです。

 例えば、早く帰ってみると、妻子からたまりたまった不平や非難を聞くことになるかもしれませんし、無視されるかもしれません。「今更遅い」と言われるかもしれません。頑張っているのに、よりストレスが高い状況に陥るのは、人間にとってとてもきついことです。

 ちなみに、この一家の場合は、父親が最初に力を出したわけではありませんでした。最初に帰宅拒否という「症状」を出したぐらいなので、実は弱い部分でもあったのです。「力があるはずなのに出していない人」は、他にもいました。徹子さんです。一見、徹子さんは精一杯の努力をしているように見えますが、実のところ本当に必要な力を発揮していなかったのです。

 よくよく話を聞いてみると、こんな出来事を話してくれました。結納後、義母に一人部屋に呼ばれた徹子さんは、こんなことを言われました。

「今まで私は人には言えない苦労も沢山あったけど、身を削って精一杯よい家庭を作って、この子をよい子に育ててきました。この責任をこれからはあなたが引き継いでくれるのよね?」

 いまどきそんなコテコテなこと言われるんだ、と思うかも知れません。実際に、帰国子女の徹子さんは、明治時代にタイムスリップしたのではないかと「めまいを感じた」そうです。しかし、

「いいえ、私たちはお義母さんの路線を踏襲するつもりはありません。自分たちで私たちの幸せのありかたを見つけていきます」

などと結婚前から義母に宣戦布告できるはずはなく、

「はい。至らないとは思いますが、頑張ります」

と日本的な受け答えをしました。そのこと自体は忘れていたそうですが、振り返ってみると義母が望むように夫に優しくし、子どもたちを義母が望むような子に育てようと頑張ってきたそうです。二言目には「〇〇家」という義母の手前、男の子ができなかったことも、義母に引け目を感じ続けた理由だったと言います。なので、野々花さんが不登校になっているということは、義母にはトップシークレットになっていました。

 いずれにしても、義母のいう「よい家庭」を作るためには精一杯力を発揮していますが、親といえども第三者に自分たちを支配させない、という力を徹子さんは使わないできたのです。

 徹子さんは数回のカウンセリングでそのことに気づき、やめる決断をしました。

 まずは「トップシークレット」をなくしました。義母から電話が来た時、野々花さんが学校に行っていないことを明かし、そのことは自分たち家族の問題だからご心配無用、見守っていてください、と伝えました。いろいろな押し問答があり、結局、義母は

「徹子さん、どうしちゃったの。そんなことだから、野々花ちゃんがおかしくなっちゃったのよ」

と捨て台詞をはいて電話を切り、その後は、夫を取り込むように動いたそうです。そこから先も大変でした。

 徹子さんによれば、夫が実家に呼ばれて「洗脳」されて帰ってくるのだそうです。洗脳とは、「徹子さんは少しおかしくなっていて、もう私の言うことを聞かないから、あなたからもっと強く徹子さんに言ってちょうだい。野々花ちゃんをしっかりしつけて学校に行かせないとこれから先心配よ」などと言い含められてくることです。

 夫は、帰ってくると、義母に言われたことを伝えます。以前の徹子さんなら論理的に反論したところですが、

「あなたは、私たちの家庭をどうしたいの? 私は、たとえ留年することになったとしても、野々花に寄り添いたいわ」

と自分たちの問題として話し続けたそうです。夫も板挟みで、相当に追い詰められたようですが、あるときカウンセリングで自ら書いた家族の図を思い出し、自分の家族は妻と子だ、と思ったそうです。

 以前も、このコラムでご紹介しましたが、紙に家族をプロットしてもらい、自分が家族だと思う範囲を円で囲んでいただく図です。夫は、自分・徹子さん・子ども2人のサークルと、両親・自分の2つのサークルを書いていました。

 それからも義母の攻勢は続いたようですが、夫は、洗脳されることがわかっているのに実家に呼ばれて行くことはなくなったそうです。それと並行して、野々花さんは徐々に学校に行くようになったそうです。これらの間に、どういう「因果関係」があるのかは証明できませんが、システム全体の流れが変わった、と理解できるものです。

 もし人間関係で何か問題を抱えているのなら、誰が悪いかよりも、出せるはずのパワーを「出し惜しみ」しているのは誰かな?という視点で見てみるのは一つの手がかりです。(文/西澤寿樹)

※事例は、事実をもとに再構成してあります

【おすすめ記事】一瞬だけ車いすを放す… 毒親もつ娘の唯一の抵抗


    あなたにおすすめ

    前日のランキングへ

    ニュース設定