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キリスト看板、貼られる瞬間を見た 聖書配布協力会の伝道活動に密着 2人1組キャンピングカーで共同生活

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2019年11月19日 07:00  ウィズニュース

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写真あのキリスト看板が貼られる瞬間
あのキリスト看板が貼られる瞬間

郊外の道を流していると結構な頻度で目にする、警告色で染め抜かれた聖書の言葉たち。この「キリスト看板」は誰がどんな理由で、どうやって貼っているのか? その一団に同行して、看板設置の瞬間を見届けた。(北林慎也)

【写真】古い看板が剥がされ、新たに貼られる一部始終…その間、わずか数分!

「神の御言葉」を世に伝える
意識しながらちょっと田舎道を行くと、至るところで出くわすキリスト看板。
これらを貼り続けているのが、宮城県丸森町に本部がある「聖書配布協力会」だ。
集団生活するコアメンバーを中心に、「神の御言葉」を世に伝える「伝道活動」を続ける。
その活動は大きく分けて四つ。聖書を要約した冊子のポスティングと小中学校前での配布、プラカードや拡声器による街宣、そして聖書から引用した言葉の看板の設置だ。

キリスト看板は、この産物として各地で貼られ続けている。
活動は都道府県単位。20人ほどの活動隊がキャンピングカーに分乗し、何カ月もかけて一つの都道府県内を集中して回る。
10月初旬、青森での活動に同行取材した。

2人1組の「看板部隊」
キャンピングカーで寝食を共にする20人ほどの活動隊は役割分担が決まっていて、早朝からチームに分かれてそれぞれの活動に入る。この日、活動隊は五所川原市内の河川敷にキャンプを張っていた。
キリスト看板を貼って回る「看板部隊」のチームは2人1組。朝岡龍さん(31)と田中勇さん(81)が今のメンバーだ。
朝岡さんの運転するワゴン車に看板を積み込んで、午前9時過ぎに河川敷を出発した。

五所川原市内の往還を走りながら、通り沿いの設置に適した場所を探す。
助手席の田中さんとあうんで見当を付けると、その先の路肩に車を止めて任務が始まる。
朝岡さんが車を降り、後方のお目当ての場所に向かう。その間、田中さんは前方でめぼしい場所を探す。それが2人の役割分担だ。

看板部隊が乗り込む日産キャラバンは、目立たない無地の白色。伸縮はしごをルーフに積み、外装工事の業者のように町の風景に溶け込む。
昨春に中古で買った、朝岡さんお気に入りの相棒だ。
以前の車は、聖書の言葉がボディーに大書された「街宣仕様」だったが、やはり目立ちすぎてやりにくかったという。
走行距離6万8千キロで買ったが、すでに10万キロを超えている。

唯一にして最大の難関
看板の掲示に適した建物や塀を見つけると、所有者に声をかけ、設置許可をもらう。
この交渉こそが、ほぼ唯一にして最大の難関だ。無断で貼ることはしない。

この日の最初のターゲットは、貸金業者「マルフク」の看板が貼ってある古びた小屋。
廃業後も各地に残るこの赤と白の看板は、目につきやすく宣伝効果のある場所に貼られていることが多く、設置の目安になるという。
結果的にキリスト看板は、このマルフク看板と一緒に目にすることが多いというわけだ。

朝岡さんが小屋の奥にある母屋のインターホンを鳴らす。
「看板を貼って回ってる者なんですけども。あそこの小屋にマルフクっていう看板があるんですが、その横にですね、聖書の言葉が書かれたキリストの看板なんですが……」

「ああ、いいです。そういうのは」
応対した女性が朝岡さんの口上をさえぎる。

「はい、分かりました。失礼します」
朝岡さんは食い下がらず、きっぱりと立ち去った。

断られるのには慣れている。地方によっては訛りが強くて交渉に難渋することもあるが、「ダメ」というニュアンスだけはすぐに分かるという。

前を歩く田中さんも、同じく断られたようだ。先の歩道で待つ田中さんを拾って先を急ぐ。

田中さんは学生時代に伝道活動に入り、半生を捧げた。「福音はそれだけの価値があるもの」と確信している。
立ちっぱなしで負担が大きい冊子配布を避けて看板部隊に専念しながら、体の続く限りは伝道活動を続けるつもりだ。
朝岡さんは「あと2〜3年は大丈夫」と笑う。心を許せる頼もしい先達だ。

貼り替えの一部始終
またしばらく走ると道沿いのブロック塀に、めくれて剥がれかかっているキリスト看板を見つけた。30〜40年ほど前に貼られたもののようだ。
板が上からめくれて折れ曲がって、「キリストの血は罪を清める 聖書」という文字が隠れてしまっている。
既設看板のメンテナンス、つまり老朽化した看板の貼り替えも重要な仕事だ。

家主の許可をもらって、さっそく貼り替え作業に取り掛かる。
新しい看板を取り出すため、朝岡さんがキャラバンのリアゲートを開けた。荷室に据え付けられた道具箱と看板の収納箱は、工務店と見まごう本格仕様だ。
道具箱には、ドリルなどの用具が整然と並ぶ。
収納箱の引き出しを開けると、トタン製の新品がサイズ別に収まる。回収した古い看板を収納する専用スペースまである。
引き出しはそのまま、ボンド塗布など下ごしらえの作業台になる。
朝岡さん自らカスタムした、まさに看板貼りの実務に特化したプロの仕事場だ。

剥がす看板と同じ大きさの新しい看板をいくつか見繕い、どれがいいか家主に選んでもらう。
ヨハネの福音書3章16節からの引用「私を信じる者は永遠の命を持つ イエス・キリスト」に決まった。

バールを手にした田中さんが、古い看板を慣れた手付きで剥がす。
当時の看板は、昔ながらのコンクリートボンドで貼られていて剥がれやすい。

朝岡さんが新しい看板を、耐久性に優れたシリコンボンドで貼り付ける。
四隅にインパクトドリルで釘ネジを打ち込み、ネジ頭が目立たないようにペン型塗料で黒く塗りつぶす。
最後に、風雨に対する耐久性を高めるコーティングとして、全面にアクリルスプレーを吹き付けて貼り替え完了だ。
作業は手慣れたもので、わずか数分で終わる。

クルマ社会ならではの工夫
休む間もなく先に進む。
色あせた交通安全標語の看板が貼られた、大きな木造の小屋を見つけた。
隣に郵便局、そして目の前の丁字路の先には小学校がある。

「人が集まる絶好のスポット」に張り切る朝岡さん。庭先で農作業中の男性に声をかけると「ああ、いいよ」とあっけなくOKが出た。
はしごに登り、できるだけ高いところに貼る。
選んだのは「心の罪も神はさばく キリスト」。字数が少なく、文字が大きくて児童にも分かりやすい言葉にした。

キリスト看板は屋外広告と同じで、たくさんの人に見てもらわないと意味がない。福音は、できるだけ多くの人に伝えなければならないからだ。

地方だと、コンビニの駐車場やバス停から見える場所などが狙い目。雪国だと積雪を見越してできるだけ高い位置に貼るのも、地味だが大切な工夫だ。
また、道路沿いの建物に貼る際には、進行方向に沿った壁より、進行方向と正対する壁に貼るほうが効果的だという。信号機や道路標識のように、往来を走る車から見えやすいからだ。
クルマ社会の地方では、通勤でも買い物でも、地元住民は車で同じ道を行き来する。往復のどちらかで必ず、彼らの視界に入るという算段だ。

住宅地図を見ただけで…
新しく看板を貼ると、その地点を住宅地図に書き込み、どんな文言かをチェックシートに記入する。近所で重複するのを避けたり、メンテナンスの時期を把握したりするためだ。
昔は自転車に看板を積んで、細い路地に分け入って貼って回っていた。当時は記録を残しておらず、同じ集落内で文言が被っていることも多いという。
そのため、先人たちの残した古い看板を更新しようにも、朝岡さんたちは当てずっぽうに探し回るしかない。

足繁く通うことも
そして、「既設の古い看板を貼り替えたい」と交渉に行くとけっこう多いのが、家主に断られた上で「もう剥がして帰ってほしい」と言われるパターン。
これを引き受けているときりがないため、一律に「剥がすだけというのはお断りしてます。ご自身で剥がす分には構いません」と答えている。
貼り替えたい先で家主が不在であれば、勝手に貼り替えはしない。あまりに汚れがひどい場合は、さっと磨いて立ち去ることもあるという。

ルートは住宅地図を広げて見当を付けるが、真っすぐで広い道路は避ける。こういったエリアは区画整理が進んでいて、民家や商店の密集度が低いことが多いからだ。
また、交通量の多い幹線道路はもちろん、渋滞の迂回路となる県道や広域農道も狙い目だという。ゆっくり走る車中から見てもらいやすい。
いまや地図を一瞥しただけで良さげなルートが分かるという朝岡さんだが、「まだまだペーペーですよ(笑い)」と謙遜を忘れない。

朝岡さんは23歳で洗礼を受けた。
一家で信仰していた新興宗教から転向すると、それまでの不信心を埋め合わせるように伝道活動にいそしむ。
いつの日か「家族にも福音を届ける」のが夢だ。

良さげな場所を見つけては、家主を訪ねて交渉する。看板部隊の活動はこの繰り返しだ。
この日は土曜日で留守の家は少なかったが、平日だと不在も多い。
これは、という絶好の場所には在宅時間を狙って出直し、足繁く通うこともあるという。

宣伝効果や交渉の難易度から結果的に、古い家の庭先の離れや小屋、ブロック塀が設置先の定番となる。
とりわけ、母屋や玄関から遠くにあるほうが「我が家の信条やメッセージと思われる」といった家主の懸念も小さくなるせいか、承諾率は高いという。

ランチは「伝道メシ」
この日はあいにく、午前中から雨がぱらつき始め、早めの撤収となった。
雨に濡れるとシリコンボンドの接着力が弱まり、コーティングのアクリルスプレーも乾かなくなってしまうからだ。
朝からストップ&ゴーを繰り返して2時間弱、15キロほどを走った。結果、貼り替えが1枚、新規の設置が2枚。これぐらいが平均的なペースだという。

キャンプ地の河川敷に戻ると、他チームの帰還を待たずに早めのランチを取る。
キッチンと食堂を兼ねるのは、トラックを改造したキャンピングカー。施工に長けた協力者が手弁当で仕立てたという内装のしつらえは本格的だ。

ボディーに施されたロゴは、日野自動車のエンブレムなどで知られる企業ロゴデザインの第一人者・飯守恪太郎氏によるもの。とてもスタイリッシュで、宗教活動にありがちな胡散臭さはない。

田中さんの食前の祈りを合図に、手作り惣菜をタッパーの白米にのせてかきこむ。
食器の洗い物を増やさない知恵で、このスタイルを彼らは「伝道メシ」と呼ぶ。

翌日の日曜日は活動隊もお休み。それぞれ自由行動だが、さすがにお酒は飲まない。地元の教会に出向く人もいるという。
アウトドア好きな朝岡さんは、地元の山地を散策することが多い。
ただ、律法にとらわれないプロテスタントなだけに、厳格に休日を意識するわけでもない。散策帰りに良さげな場所を見つけると、ついつい看板を貼ってきてしまうという。
ストイックに、そして適度にゆるく、看板部隊の伝道は続く。

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