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やっぱり、母は強い!4人の娘を育てる女性CMOのマーケ・子育て論

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2019年11月19日 08:02  MarkeZine

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MarkeZine

写真Contentserv Group グローバルプレジデント 兼 CMO Patricia Kastner(パトリシア・カースナー)氏
Contentserv Group グローバルプレジデント 兼 CMO Patricia Kastner(パトリシア・カースナー)氏
 「マーケターとしてのキャリアアップと子育ては両立できる」。こう断言するのは、2歳から12歳までの4人の娘を育てながら活躍する女性CMOだ。彼女は様々な障壁をいかに乗り越え、事業、子どもたち、そして自分自身の成長につなげてきたのだろうか? 子育てをしながら第一線で働き続けるための心構え、母親になって身に着けた「脱・完璧思考」と「集中力」、経営者としてすべての人の働きやすさを支えるために必要なことを語ってもらった。


■「型破りな父がきっかけ」18歳でビジネスを始める



Contentserv Group グローバルプレジデント 兼 CMO Patricia Kastner(パトリシア・カースナー)氏


――はじめに自己紹介をお願いします。


Kastner:ドイツ発のマーケティングソフトウェア会社Contentserv(コンテントサーブ)のプレジデント兼CMOとして働いています。Contentservは私が20歳の頃、共同創業者とともに立ち上げた会社で、オムニチャネルでの商品情報管理を最適化するソリューションを提供しています。


 同時に、2歳から12歳までの4人の娘を育てる母親でもあります。


――経営者と母親、二つの顔をもっていらっしゃるのですね。まずは経営者としてのキャリアについて、教えていただけますか。


Kastner:ビジネスを始めたのは、18歳の学生の頃でした。私の父もまた起業家で、まったく型にはまらないタイプなのですが、「もう十分、自分自身を養っていくことができる年齢だろう」と、今後は経済的な支援を受けずに生活してみるよう、私に告げたのです。


 大学の学費と家賃を捻出しなければならなかったので、Webサイトの制作を始め、その後小さな代理店を立ち上げました。仕事を始めてみると、Webサイトと紙のカタログをまたいでの情報管理が効率よく行えないということに気づき、その問題意識がContentservの創業につながりました。


――創業後は、主にマーケティングとソリューション開発の領域を統括されてきたそうですね。


Kastner:はい。私の血はマーケティングでできているのではないかと思うほど、マーケティングが大好きです(笑)。


 大切にしているピーター・ドラッカーの言葉を紹介したいのですが、それは「顧客を創出するために、ビジネスが有するたった二つの機能がある。それはマーケティングとイノベーションだ。マーケティングとイノベーションは結果を生み出すが、残りすべては『コスト』である」というものです。


 実際にContentservでも、マーケティングが会社を成長させるエンジンとして機能してくれました。私たちが起業した時代、ドイツではベンチャーキャピタルから資金調達を行うのは一般的ではなく、自らの資金で会社を成長させる必要があったのです。


■子どもができたらキャリアは終わり?


――日本のマーケターの中にも、出産後も第一線で働き続け、キャリアアップを目指したいという人が増えていると感じます。Kastnerさんは、なぜそのような決断をされたのでしょうか。


Kastner:私にとって仕事と子育ての両立は、本当にたまたま起こったことでした。私の暮らしているドイツは日本と似て保守的な国なので、当時は「子どもができたらキャリアは終わり」と言われていました。


 結婚し、長女を妊娠したのが29歳の頃だったのですが、ビジネスは既に軌道に乗り始めており、多くのクライアントと中断することのできない仕事をしていました。「一体どうしたらいいのだろう」という気持ちでしたね。


 幸運だったのは、ちょうどクライアントの一人だった製薬会社で働く女性が双子を出産し、6週間後に職場に戻っていたのを見ていたことです。「双子の赤ちゃんを育てている彼女ができているならば、娘一人だけの私が、できないはずがない」と、勇気をもらいました。


 また、私に早くからビジネスにチャレンジするよう勧めた父も、「母親の幸せは、子どもの幸せにつながる」と背中を押してくれました。


■ロールモデルはまだ少ない、自らのゴール設定が最重要


――とはいえ、日々どちらもこなしていくには多くの工夫とエネルギーが必要だと思います。仕事をセーブすべきではないかと、悩むことはなかったのでしょうか。


Kastner:仕事と子育てのどちらかを選ばなければ、と考えたことはありません。私にとって両方欠かせないものだということは明らかですし、両立は可能です。


 特にデジタルマーケティングの領域は、オフィスに出勤せずとも進められる仕事が多く存在します。Contentservは世界各国に22のオフィスがあり、400人以上の従業員が働いています。私が現在東京を訪れているのは2年ぶりなのですが、日本のチームとは日頃からオンラインでコミュニケーションをとっていたので、問題はありませんでした。このように、場所に縛られない働き方が可能なことは既に多くの企業が証明しています。


――おっしゃる通り、テクノロジーのおかげで柔軟な働き方が可能になっていますね。


Kastner:はい。だからこそ経営層は、在宅で働きたいという女性にも大きなチャンスを与えるべきだと思います。


 一方で、女性を勇気づけるようなロールモデルがまだ少ないということも事実です。家事と育児の両立に決まったやり方はなく、一人ひとりの女性が自分でゴールを設定し、そこに到達する方法を見つけていかなければいけないのです。


 たまに批判的な意見を投げかけられることもありますが、気にしてはいけません。子どもが幸せであれば、それで良いのです。私は「スーパーお母さん」ではないので、たとえば子どものために毎日ケーキを焼いたりすることはできません。それはどんなに頑張っても自分にできることではないため、目標にしてはダメです。


 その代わり、私は私の方法で子どもたちに愛情を注いでいますし、学校の先生は子どもたちを「自立していて、とても社交的」とほめてくれます。このように自分なりのやり方を見つけながら、家族みんなで助け合ってきました。


■母親になって身に着けた「脱・完璧主義」と「集中力」


――逆に子育ての経験が、仕事の役に立っていることもあるのでしょうか。


Kastner:たくさんありますよ。母親になって学んだ最も大きなことの一つは、「100%を目指さない」ということです。子育てを始めると、完璧というのは贅沢品であることにすぐ気づきます。日々とても忙しいので、一つのことに執着する余裕はありません。


 それよりも、本当に必要なことに照準を合わせて、80%を目指すほうが良い。私は「Perfection is inefficient. (完璧を目指すことは非効率である。)」とよく言っているのですが、男性・女性問わず、この考え方は重要だと思います。脱・完璧思考は会社の生産性を上げることにも役立ちます。


――子育て中の女性の中には、長時間のコミットメントが難しいことや、他のメンバーよりも早く退勤しなければならないことに申し訳なさを感じている人もいるようです。


Kastner:小さな子どもをもつ母親が仕事を適切に行えないとは決して思いません。まったく逆です。


 私は、子育て中の母親と仕事をするのが大好きです。彼女たちはオフィスで無駄な時間を過ごさず、ものすごい集中力を発揮します。これも、子育てで得られた能力でしょう。


 母親たちは、家で仕事を進めようとしたとき、少なくとも30回は子どもに邪魔をされた経験をもっているはず。だから一瞬で集中するための方法を身に着け、時間を正しく使うことに長けていくのです。もしかすると、ここは仕事をメインとしている男性とは少し違う点かもしれません。女性の働きは、量より質で判断すべきです。


■マーケティングは「女性の仕事」になっていく


――少し視点を変えて、女性のリーダーシップについてうかがいます。国際労働機関の調査(2018)によると、世界の女性管理職比率は27%であるのに対し、日本は12%とG7で最も低いことが指摘されています。ドイツも保守的で日本と似ているとのことでしたが、こうした状況をどのように捉えていますか。


Kastner:多くの女性が部門のマネージャーレベルに留まってしまっているのは残念なことです。しかし、マーケティングの領域には大きなチャンスがあると思っています。


 実を言うと私は、マーケティングは女性の仕事になっていくと考えています。特にデジタル領域はますます複雑化していくため、マルチタスクが得意と言われる女性は向いているはずですし、創造性や柔軟性をもって異なる性質のものを統合するという仕事においても、能力を発揮できるのではないでしょうか。


――なるほど。マーケティング領域で女性のリーダーを増やしていくためには、具体的にどのようなことが必要なのでしょうか。


Kastner:いくつかの方法があると思いますが、私の経験からお話しすると、女性のアプローチは男性とは違うということを意識する必要があります。女性は男性と同じくらい、しばしば男性以上に高いパフォーマンスを発揮しますが、ゴールへの到達の仕方が男性とは少し違います。それを踏まえた上で、経営層は女性を信頼し、思い切って仕事を任せてみることが必要です。


■自信をもち、自らを売り込むことがキャリアを拓く


――仕事における男性と女性の違いは、たとえばどんなところに現れるのでしょうか。


Kastner:リーダーシップのスタイルに関して、男性と女性はまったく異なっていますよね。一般的に、男性はより速くゴールにたどり着こうする傾向がありますが、女性はチーム全体を包括した形でゴールに向かおうとします。


 また、男性と女性では、コミュニケーションの方法が違うことにも気づかされます。男性は「あなたにできる?」と聞かれたら、「I will do it. (やります。)」と答えますが、女性はしばしば「I can do it.(できると思います。)」と柔らかい答え方をする。だからといって女性はできないと思っているわけではなく、それがコミュニケーションのスタイルなのです。


 現状ではマネージャーの多くを男性が占めているため、こうした違いをくみ取ってもらいにくいのが歯がゆいところです。しかし日本の男性は細やかな心遣いができる方が多いので、欧州と比べると状況は良いのではないでしょうか。


 同時に、特に若い女性には、自信をもつことと自らを売り込むことは、キャリアにおいてとても大切な要素だということを覚えておいてもらいたいです。


――皆が少しずつ勇気を出し、歩み寄ることで、状況は変わっていきそうですね。


Kastner:その通りです。女性が新鮮で異なる視点をもたらしてくれることに、世の中が気づき始めています。SAPやHPで女性役員が登用されていることからも、それは明らかでしょう。


 さらに、デジタル領域のプロフェッショナル人材が不足している状況も、女性の活躍を後押しするはずです。キャリア志向の男性はステップアップを目指して会社を離れてしまうことがよくありますが、よりバランス志向が強い女性は、良い職場環境を整えることで、長く働いてくれる可能性があります。ContentservでCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)を務めた女性は5年もの間、開発チームを束ねて生産性を高めてくれました。


 子どもをもちたいという願望のために、あまりにも多くの人々がキャリアを諦めてしまうのは残念なことです。私も、Contentservが誰にとっても働きやすい場所になるよう、工夫を続けていきます。一緒に、世の中を良い方向へと変えていきましょう。

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