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きっと興味が沸く、いちばん分かりやすい「DMV」のお話 ローカル線を救う夢の乗りもの……!?

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2019年11月19日 10:58  ねとらぼ

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ねとらぼ

写真2020年度から世界で初めて阿佐海岸鉄道で営業運行する「DMV」
2020年度から世界で初めて阿佐海岸鉄道で営業運行する「DMV」

 2019年11月30日から12月22日まで、京都鉄道博物館で新しい乗りもの「DMV」が展示されます。皆さん、「DMV」をご存じでしょうか。



【その他の画像】まだ貴重!! DMV「車内」の様子



 DMVは「Dual Mode Vehicle」の略で、直訳すると「2つの形態(を備えた)車両」です。道路走行用のタイヤと、軌道走行用の車輪の両方を装備しています。外観はどこか愛嬌のあるお顔のボンネット付きマイクロバスです。



 DMVは、徳島県と高知県にまたがる「阿佐海岸鉄道」で2020年度から世界で初めて営業運行する予定です。京都鉄道博物館での展示は1台ですが、阿佐海岸鉄道には3台が納入され、運行開始を待っています。バスとしてはいつでも走れるのですが、鉄道側の準備がまだできていません。でも運行開始直前まで車庫に眠らせておくのももったいないということで、PRも兼ねて京都鉄道博物館で展示することになったそうです。



 「これから運行開始予定」の鉄道車両を博物館で展示するのは珍しいことです。そもそも四国から京都まで、どうやって運ぶのでしょうか。鉄道車両ならば、貨物列車として新型の車両を機関車に連結して連れてくる……のですが、そんな大掛かりで面倒なことはしません。線路も道路も走れる車両なのですから、道路を走って京都までやってきて、展示が終わったら、また京都から四国へ道路を走って帰るのです。面白そうだと思いませんか。



 ともあれ営業運行が始まったら、こんな「出張」は恐らくもうありません。京都では見納めになるかもしれないので、この機会にぜひ京都鉄道博物館へ見に行きましょう。営業運行する前にモードチェンジや鉄道線路の走行を見られるチャンスです。



 今回は、このDMVに興味を持ってもらえるであろう「いちばん分かりやすいDMVのお話」をお届けします。



●DMVって何? 何がいいの?──「公共交通の革命」を起こす乗りものとして期待



 DMVは、列車とバスの「いいとこ取り」ができます。それぞれに10〜15秒でモードチェンジでき、線路上では鉄道車両に、道路上ではバスに変身します。



 列車は交通渋滞がないため、定時運行ができます。一般道路よりも制限速度が高いため、スピードも上げられます。



 バスは街中の道路を走れます。病院、商店街、学校、住宅地など目的地の近いところで乗降できます。



 「バスで駅へ行き、列車に乗り換えて目的地の駅まで行き、その駅からバスに乗り換えて目的地に着く」といったよくある公共交通機関を使うルートでは「2回の乗り換え」が必要でした。DMVはこのルートを「乗り換えなし」で結びます。



 例えばこんなシーンです。「家の近くの停留所からDMVに乗り、途中で線路に入って鉄道をスイスイ走り、目的地の近くで道路に降りて、病院や学校など目的地のそばに到着」。マイカーで移動する感覚に近く、自分で運転する必要はありません。楽チンです。バスと電車、それぞれ個別に料金を支払う必要もなくなります。



 このことは鉄道会社にとってもメリットがあります。DMVはマイクロバスの設計を基本としているため、鉄道車両より低価格で導入できます。点検作業も簡素化されます。鉄道車両より軽いので、線路の保守コストも下がります。



 便利で、運行費用も安く済む。赤字に悩む地方ローカル線や、その維持費を支援している自治体にとって、とても都合の良い車両です。



●「幼稚園の送迎バスがそのまま線路も走れたらいいのでは?」DMV誕生物語



 DMVはJR北海道の技術者、柿沼博彦氏(後にJR北海道会長職を経て、2019年11月現在は星槎道都大学客員教授)が2002年に考案しました。JR北海道には赤字のローカル線がたくさんあります。赤字路線を維持するためには、徹底的なコスト削減が必要でした。



 柿沼氏は幼稚園の送迎用マイクロバスを見て「あれを線路に載せればいいのでは」とひらめきました。バスに鉄道走行用の車輪を付ければ、鉄道と道路の両方を運行できます。「鉄道から離れた集落までお客さんを迎えに行き、鉄道を利用して中核都市まで往復してもらおう」という考えです。



 初代のDMVは、中古の日産・シビリアンを改造した車両でした。改造を手掛けた会社は「日本除雪機製作所(現NICHIJO)」。鉄道と道路の両方の除雪車を製造する企業です。車体をバラバラにして構造を調べて、バスに「鉄道用の走行装置」を取り付けました。こうして2004年、初代DMV「サラマンダー901」が誕生しました。しかし初代は長く使えませんでした。道路側の事情である「排ガス規制」に引っかかってしまったのです。



 2005年、排ガス規制をクリアした新型のシビリアンを用いて2台の第2世代DMVが作られました。しかしこの新型シビリアンは装備品がそもそも重く、そこに鉄道用の走行装置を追加したため、さらに重くなりました。鉄道線路では前後輪のバランスが悪く、道路ではアタマが重すぎて曲がらない……。苦肉の策として、車両前半の座席を取り外してなんとか軽くします。この結果、定員34人だった初代に比べて、定員は16人に減ってしまいました。



 地方のローカル線とはいえ、通学時間帯は50人から100人が利用します。鉄道車両の定員は1両あたり100人以上。これをDMVに単純に置き換えると数台が必要になります。運転士もその分必要です。ローカル線のコスト削減のつもりが割高になってしまっては意味がありません。



 しかしJR北海道はDMVに期待をかけます。柿沼氏は当時のトヨタ自動車社長であった張富士夫氏に直訴します。そして「トヨタとして社会貢献の立場から協力する」という約束を取り付けたのです。



 こうして、JR北海道、トヨタ自動車、トヨタグループの日野自動車、日本除雪機製作所が連携して取り組み、トヨタのマイクロバス「コースター」を基盤とした三代目DMV「ダーウィン920形」が誕生しました。



 ダーウィン920形で車体は長くなり、定員は29人になりました。2両連結すれば定員58人。これで実用化できる路線が増えました。



●各地のローカル鉄道・自治外が注目! しかし……



 DMVは開発当初から各地の自治体に注目されていました。特に過疎地の交通手段、ローカル鉄道の救世主として期待されました。



 2008年の洞爺湖サミットでダーウィン920形が公開され、世界からも注目されました。JR北海道では開発当初から4路線で営業試験運行を実施します。他の自治体にも貸し出され、岳南鉄道(静岡県)、南阿蘇鉄道(熊本県)、天竜浜名湖鉄道(静岡県)、明知鉄道(岐阜県)で走行試験を実施します。このほかにも、山形鉄道や三木鉄道(兵庫県、後に廃止)などが試験導入を検討します。



 しかし、これまで10年以上、実用化に至りませんでした。その理由は前述した定員の問題だけではありません。列車/バスに変身する「モードチェンジ」に必要な設備が新たに必要でした。車両のサイズに合わせて駅のプラットホームも低くする必要もありました。



 さらに深刻な問題は保安設備です。鉄道は信号機や踏切を作動させるために、線路側に検知システムを設置しています。DMVはバスとしては重い車体ですが、鉄道車両に比べれば軽いため、検知システムが作動しにくいのです。そのために「DMV用の保安システムを用意する」ことになります。車両は安くできるかもしれませんが、線路側に追加コストが掛かります。既存の鉄道車両と同じようには扱えないので「混在しにくい」ことも分かりました。



 さらにJR北海道の問題も重なりました。JR北海道は2013年ごろから不祥事が発覚。合わせて赤字体質が大きな問題となりました。そのため経営資源を新幹線と安全対策に集中し、あらゆる新規開発は停止となります。DMVについては、国が注目していたことから国土交通省の活用検討会に引き継がれました。



●徳島県の英断で「阿佐海岸鉄道の実用化」が決定



 各地のローカル鉄道と自治体がDMVを検討しつつも不採用となる中で、ただ1つDMV実用化を諦めなかった自治体がありました。徳島県です。



 徳島県は高知県などと出資している第三セクターの阿佐海岸鉄道でDMVを運行することに決めました。阿佐海岸鉄道は、徳島県南東部の海陽町にある海部駅と、高知県東端の東洋町にある甲浦駅を結んでいます。中間駅は宍喰駅の1つだけ。距離は8.5キロという短い路線です。もともとは室戸半島を周回して徳島市と高知市を結ぶ壮大な計画「阿佐線」の一部でした。しかし当時の国鉄の赤字問題で建設中止となり、完成されても未開業だった区間を引き継いだ路線ということになります。



 阿佐海岸鉄道も多くのローカル鉄道と同様に赤字です。しかし営業距離が短いことが幸いし、他の赤字路線ほど赤字額は大きくありません。そして他の路線で導入できなかったDMVを導入できる理由も、この路線長の短さにありました。駅の改良も、保安システムの整備も、DMV用に改修する区間が短いので、投資額を抑えられたのです。



 DMVの欠点の1つである定員についてもここでは大きな問題になりませんでした。幸か不幸か、阿佐海岸鉄道の1列車あたりの平均乗車人数は約4人。通学時間帯の混雑もありません。なにしろ通学定期の発行数はゼロの路線。通勤定期もごくわずか。乗客のほとんどが観光客か、JRを利用して遠方に出掛ける人、そしてお遍路さんです。



 つまり、定員100人のコストが掛かる大きな鉄道車両を走らせるよりも、定員22人のDMVで十分です。むしろ、その定員22人を埋めていく努力が求められます。こちらは、世界で初めて運行するDMVによって、観光に活路を見いだす考えです。



 2019年11月現在、甲浦駅ではスロープとモードチェンジ設備を建設中。海部駅側はスロープの建設が難しいため、JR四国より牟岐線の地上駅、阿波海南駅にモードチェンジ施設を作る予定です。牟岐線の阿波海南駅〜海部駅は、阿佐海岸鉄道に移管されます。



 残す問題は他の地域からの「遠さ」です。徳島空港からも高知空港からも遠い場所。徳島からはJR四国の牟岐線で、高知からは土佐くろしお鉄道と高知東部バスを乗り継ぎます。DMVに乗りに来た人が心地よく滞在できるリゾートへ。沿線地域のチャレンジが「DMV」で始まります。



(杉山淳一/乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴)


このニュースに関するつぶやき

  • なんか自動運転車を開発するより高速道路のアスファルトを引っ剥がしてレールを引いた方が早い気がしない?
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  • DMVは書いてある通り数々の問題に悩まされて上手く開発が進まなかったからね。やっと漕ぎ着けた営業運転だから、本当に上手く行って欲しいと思う。 https://mixi.at/ai37RjM
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