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芥川賞作家・又吉直樹の最新作『人間』。過去の作品にも見られた、根底に漂うテーマとは

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2019年11月19日 17:41  ダ・ヴィンチニュース

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ダ・ヴィンチニュース

写真『人間』(又吉直樹/毎日新聞出版)
『人間』(又吉直樹/毎日新聞出版)
“僕達は人間をやるのが下手だ。”

 又吉直樹さんの最新作『人間』(毎日新聞出版)発売時のキャンペーンでは、帯にも書かれたこの言葉をTシャツにプリントした書店員が店頭に立ったそうだ。

いま、編集部注目の作家

 又吉さんのデビュー作であり、芥川賞を受賞した『火花』(文藝春秋)は芸人を志す若者の青春が描かれた。映画やドラマでもこの作品に触れた人は多いだろう。2作目の『劇場』(新潮社)は、若い男女の恋愛小説。そして本作『人間』で又吉さんは、38歳の「僕」と彼を取り巻く人々が「人間をやること」を、若かりし頃の回想と現在を行き来しながら描かれている。

 主人公・永山は、「自分が生きてきた三十八年間は嘘ばかりで、からっぽだったのかもしれない」と、空虚な生活を送っているイラストレーターだ。誕生日にも、寝覚めの悪い夢を見て、ベッドから起き出て、特段美味しいわけではないコーヒーを飲む。パソコンの電源を入れると、見慣れた受信トレイに、もう何年も連絡をとっていない友人からのメールが混ざっていた。メールのタイトルは、「踏むことのなかった犬のクソみたいな人生(笑)」。このメールが永山を、過去の記憶と目の前にある現実が絡まりあった物語へといざなっていくこととなる。

 本作に登場する人間たちは、よく対話をする。彼らからは、どんどん鋭利な言葉が飛び出す。そこには憎しみも悪意も、しっかりと内包されている。

 永山に送られてきたメールと大きく関係する影島道生は芸人で、デビュー作の小説で芥川賞を受賞した人物だ。彼は2作目では「身勝手な男が主人公の恋愛小説」を書いている。――とは言え、影島を又吉さん自身と直結させるような読み方は安易だろう。小説は、いくつもの角度から読むことができ、複合的であることを受け入れる表現だ。又吉さんは、自身のパブリックイメージを効果的に「利用」しながら、複雑な構造でその断片を散らせて、小説をより豊かなものに仕立て上げる。

 そして又吉さんの作品で一貫して描かれているのは、「不器用」だ。『火花』で“僕はただ不器用なだけで、その不器用さえも売り物に出来ない程の単なる不器用にすぎなかった”と書かれた言葉は、『人間』でも登場人物の言葉や挙動、すれ違いによって、じわじわとあぶり出されていく。これらは彼の一貫したテーマと言えるのではないか。

 自身初となる長編小説は、不器用の中に荒々しさが際立つ小説だ。たとえ不器用だとしても、地道に人間をやっている人にぜひ読んでほしい。

文=えんどーこーた

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