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広告は一方通行から“対話型”へ ユーザーの意思を汲み取る「チャットコマース」の可能性

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2019年11月20日 09:02  MarkeZine

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MarkeZine

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 今、広告業界は変革の時を迎えています。従来の“行動データに基づくターゲティング配信”に対する消費者の嫌悪感は日々高まり、またそうした消費者の変化を敏感に捉え、個人情報保護の観点からCookieの制限も起き始めています。そんななか、今海外で新たに注目を集めているのが「チャットコマース(海外ではConversational Commerce/略称CC)」という手法。本稿では、広告業界の現状・課題を解説するとともに、ユーザーの意思を汲み取り、新しい接客体験を届けることができる「チャットコマース」の可能性を探ります。


■購買プロセスの変化


 近年、ユーザーの購買プロセスが変化している事によって、従来の広告ではモノが売れにくくなっています。古くは「AIDMA」から始まり、「AISAS」「AISCEAS」と時代に合わせて変化を続けてきた購買プロセスのフレームワークですが、現在は「DECAX」と表現されるケースが多いです。


 「DECAX」とは、Discovery(発見する)→Engage(関係を持つ)→Check(確認する)→Action(購買する)→eXperience(体験する、共有する)という順番でユーザーが取る購買行動のこと。ここから、現代ではユーザー自らが発見し、体験した情報を共有するプロセスを能動的に踏む購買モデルができあがっていることがわかります。


 そもそもこれまでの購買モデルでは、ユーザーと売り手との関係を築くプロセスが存在しておらず、「購入と販売」以外のやりとりは行われてきませんでした。しかし、最新の購買モデルであるDECAXでは、「Engage(関係を持つ)」のプロセスが最も重要視されています。


 では、「ユーザーとの関係を築く」とは、具体的にどのようなプロセスなのでしょうか。ここで言う「関係」とは、ただ一方的に情報を送る/送られるという関係ではなく、売り手は「ユーザーの求めるコンテンツを提供する」。ユーザーは「自ら求めるコンテンツに触れ、売り手への理解を深める」。というような、「双方向の関係」のことを言います。


 このような関係を築くためには、ユーザーと売り手が意思の疎通を図り、相互理解を深めていくマーケティングを仕掛けていく必要があります。


■集客の広告手段は多様化している


 購買プロセスの始まり、つまりユーザーを集める「集客」の手段自体は幅広く、様々な広告手法を選択することができます。主要なものだけでもSNS広告、リスティング広告、動画広告、アプリ内広告など、多様な手法が存在します。一方で、幅広い広告手段で集客した後、離脱したユーザーに向けた広告手段も同じように多様化しているのかと言うとそうではなく、主に使われているものはリマーケティング、リターゲティング広告のみ。


 リマーケティング、リターゲティング広告は、ユーザーをリスティングし、広告を配信する方法です。リストアップは「そのユーザーは何日前にサイトを訪問したのか、その際はどのページまで閲覧したのか」というデータを基に行われます。つまり、このリストは「過去、そのユーザーがとった行動」を追いかけるものであり、「今、そのユーザーが何を求めているのか」という、最も重視されるべき情報が含まれていないのです。


 このように、リマーケティング、リターケティング広告は、本来重視すべき“ユーザー本人の意思”がリアルタイムで反映されていないため、せっかく集客してもコンバージョンする確率が低いという課題があります。その結果、「リマケ/リタゲ広告業界では、1〜3%の低いコンバージョンレートが当たり前」という認識になりつつあるのです。


■ターゲティング広告は限界を迎えている?


 ここで、現在のターゲティング広告に目を向けると、先述した「ユーザーの意思」から乖離の一途をたどっていることがわかります。現在のターゲティング広告は、ブラウザのCookie上に発行されるIDに紐づいて蓄積された属性や訪問履歴、検索履歴などでセグメントを分けて広告を配信しています。


 しかし、ターゲティング広告に用いられるデータはあくまで行動の傾向であり、ユーザーの意思とは別の情報です。そのため一度訪れたWebサイトへの再流入を促す企業からの一方的な関係の築き方に、ユーザーは不信感や嫌悪感を抱き始めています。イーライフが実施した「ネット上の個人情報と広告についてのアンケート」によると、約75%がネット広告に対して 不快感を抱いたことがあると回答。さらに、その理由として「最近調べた内容の記事が出てくることは、正直不信感しかない」「監視されているようで嫌だ」などと回答しているのです。



出典:イーライフ「GDPRによる消費者意識の変化とデジタルマーケティングの展望」

n=2,388/調査実施期間:2018年4月27日〜4月30日


 そして、こうした消費者心理に応えるかたちで今、個人情報保護の観点からCookieの制限も起き始めています。たとえばApple社のブラウザであるSafariでは、ITP(Intelligent Tracking Prevention)が適用され、トラッキングが困難になりました。さらにGoogle社でも、Chromeのプライバシー保護を強化する発表が行われるなど、従来のターゲティング手法では、今後ますます活路を見出すことが難しくなっていくでしょう。


■広告は一方通行から“対話型”へシフト


 こうした一方通行のターゲティング広告が抱える課題から、今海外で注目を集めているのが「チャットコマース(海外ではConversational Commerce/略称CC)」という手法です。チャットコマースとは、企業・ブランドがユーザーとチャットコミュニケーションを行い、食料品の注文、飲食店の予約、旅行の予約、衣服の購入などを促すというもの。日本では主に、LINEやFacebook Messengerなどのチャットアプリがインターフェースとして使われています。


 たとえばユーザー一人ひとりの趣味嗜好に合わせて、“その時そのユーザーが求めている商品・情報”を提案するという、従来のターゲティング広告ではできなかったアプローチが、チャットコマースでは可能になります。これまでリアル店舗でしかできなかった「接客体験」を、Web上で実現することができるのです。


 “その時のユーザー”に対してパーソナライズされた配信を行うことができるため、ユーザーも提案された商品に対して納得した状態で行動に至ることができます。筆者は、こうしたチャットコマースの特徴は、制限が日々厳しくなり、限界を迎えつつあるターゲティング広告業界を打開するものだと考えています。次ページでは、その3つの理由を解説します。


■チャットコマースがターゲティング広告業界を救う3つの理由


 限界を迎えつつあるターゲティング広告業界で、チャットコマースがその状況を打開できる理由は大きく3つあります。


●理由1. ヒアリングファーストな会話体験


 1点目は、ヒアリングファーストな会話体験により、ユーザーのニーズに合わせて提案ができる点です。多くのWeb広告はクリック後、ランディングページが表示されて、最初に商材の購入を提案される体験になっています。


 チャットコマースの場合は、クリック後にチャットボットが表示されて、最初にヒアリングした上で提案する“ヒアリングファースト”な購買体験を届けています。つまりチャットコマースは、ユーザーを理解した上で必要な提案を行い、ユーザーに寄り添う広告モデルとして活用することができるのです。


 チャットコマースは他の広告手段に比べ、ユーザーへのヒアリングがしやすい媒体です。ヒアリングで得たデータとユーザーの意思を尊重するコミュニケーションで、ユーザーとの対話の中で的確な提案をすることが可能です。そのため従来の広告媒体と比べ、ユーザーに嫌悪感を抱かれにくく、納得感をもって商品を購入して貰うことができるのです。 


●理由2. 継続的なコミュニケーションが可能


 2点目は、より効果的なpush配信を行える点です。チャットコマースは、従来のリターゲティング広告とは異なり、コミュニケーションの過程で蓄積したデータを基にユーザー一人ひとりに合わせたpush配信を行うことが可能です。そのためエンゲージメントも高めやすく、良好な関係を保ったままユーザーと継続的にコミュニケーションを取ることができます。


 また離脱等の理由でコンバージョンしなかったユーザーのデータを使い、再度パーソナライズしてアプローチするのも有効です。ユーザーとのコミュニケーションで得た会話データを元にpushの配信を行うため、従来のリタゲ、リマケ施策のような、ユーザーを絞りきれないものと比べると、より明確にターゲットを絞った配信ができ、CVRを大きく改善させることが可能となります。


●理由3. Cookieによる影響を受けない


 3点目は、従来のターゲティング広告と異なりCookieによる制限を受けない点です。チャットコマースは、WebブラウザではなくLINEやFacebook Messengerなどのインターフェースを通じてユーザーと対話する仕様上、Cookieによる制限を受けることがありません。そのためユーザーからアカウントをブロックされない限り、メッセージを配信することが可能です。


 以上、3つの理由を紹介しました。従来のターゲティング広告では、集客の間口は広がっているものの、Cookieの制限やユーザーの心証が悪いといった原因からエンゲージメントやコンバージョンレートが低く、今後はさらに向かい風は厳しくなっていくでしょう。これからの広告業界は、Cookieの制限に左右されることなく、ユーザーの意思を尊重した広告でコンバージョンへ導くことが求められていくのではないでしょうか。

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