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ヤフー×LINEは「AI」で世界に勝てるのか? 必要なのは「タイムマシンから降りること」

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2019年11月20日 16:33  ITmedia NEWS

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写真One Teamになっていったい何をするのか
One Teamになっていったい何をするのか

 11月18日に開かれたZホールディングス(ZHD)とLINEの経営統合に関する会見では、「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニーへ」というキャッチフレーズが使われた。ヤフーを傘下に持つZホールディングスの川邊健太郎社長からも、「アメリカや中国のテックジャイアントではない、第三極を目指す」という言葉があった。



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 では、具体的に彼らはAIの分野で何をしようとしているのか? 今のステータスは「経営統合が決まっただけ」の段階で、詳細は表に出ていない。この段階で完全な予想をするのは難しいだろう。



 だが、両社の持っているリソースなどから「方向感」は分かる。そこで、「AI」という目線でヤフーとLINEが何をしようとしているのかを考察してみたい。



●実は独自色豊かな「ヤフー」と「LINE」のAI戦略



 ヤフーとLINE、どちらにも共通している特徴は「親会社がAIを軸としたビジネスを推進している」ことだ。



 ソフトバンクグループは、孫正義会長がことあるごとに「AI群戦略」というキーワードを出すから分かりやすいだろう。事業によっては「これのどこにAIが」と思うものもあるが、中国のタクシー配車DiDiやディープラーニングのための基盤LSIを支える米NVIDIA、英Armといった企業は、確かに誰もが認める「AIを主軸とした企業」だ。PayPayのようなサービスでも、集積されたデータはAIに生かせる。LINEの場合には、親会社である韓国NAVERがAI関連の研究所を持っており、特に文字認識AIやBotの開発などに力を入れている。



 こうした基盤をグループ企業として活用できることは、確かに有望である。



 だが、何よりも大きいのは、グループ会社としてでなく、ヤフーとLINEそれぞれが単独でもデータ活用とAIに積極的な企業であることだろう。



 ヤフーは検索サービスを軸に、大量の行動データを既に得ている。現在ヤフーが使っている検索エンジンのコアはGoogleのものだが、使っているのはあくまでエンジンなので、自社内に大量のデータが蓄積されている。AIが注目される以前、まだ「ビッグデータ」といわれていた頃から、同社はデータ活用に積極的だった。検索から生み出される傾向分析を活用すると、どのようなことができるかは、2012年12月から18年9月まで公開されていた「Yahoo! JAPANビッグデータレポート」を読むと良く分かる。



 ヤフーには、集まった実データを解析し、新しいサービスを生み出すための「砂場」と呼ばれるものがあり、砂場で、仮説に基づいた解析や開発を試した上で、新サービスを実装している。そうした環境を整えていることこそが、一つの差別化ポイントだ。



 一方のLINEは、NAVERと共同で積極的に音声アシスタント技術「Clova」を開発している。音声アシスタントとしてはAmazonの「Alexa」やGoogleの「Googleアシスタント」ほどの支持を得られてない状況だが、日本独自の音声アシスタントとして地道に開発を進めている。



 ビジネス向けとしては、レストランの予約に関する自動応答技術「LINE AiCall」を開発し、11月20日に「俺のGrill&Bakery 大手町」で実証実験を開始した。日本語での電話応答に関する音声認識精度向上のために、IP電話サービス「DialPad」とも提携している。



 「現状存在しないサービスをいかに開発するか」という観点に基づき、これらの点を両社が積極的に展開している。先日の会見でも「両社でまだまだ多数の課題解決ができるはずだが、果たせていない」(ZHD・川邊健太郎社長)「急速に変化する状況に対する危機感が強い」(LINE・出澤剛社長)というコメントがあった。



●「タイムマシン経営的」でない発明を生み出すことが成功の条件



 データを軸にしたビジネスは規模の経済であり、ヤフーとLINEは日本国内においては「勝ち組」だった。だが、米国・中国の「ワールドクラス」企業と比較した場合、人数規模でも投資規模でも勝てない。



 問題は「そこで一緒にやる」だけで戦えるのか、ということだ。



 そもそも、ヤフー・LINEと、米国・中国の大規模企業との規模の差は「数十倍」に相当する。仮に2社が共同であたってもまだ「桁が違う」状況であることに変わりはない。規模の経済で戦うならば、くっついただけではやっぱり変化はない。



 もちろん、そんなことは彼らも百も承知であり「単純な合算では勝てない」(川邊社長)という。一緒にならないのは規模的に不利だが、一緒になっても規模だけでは不利であることに変化はない。



 だとするなら、どうするのか?



 ポイントは「いかに戦える場所を探すか」だろう。単純な音声認識など、ストレートに数で勝負している部分で勝つのは難しい。「日本ならではの部分で」という話になるが、結局そこで、海外のサービスと戦える品質にならなければ、「日本向けに」と強弁しても意味はない。



 「GAFAの最大の脅威はユーザーに支持されていること。われわれも、彼らに日本市場から出て行ってほしいとは全く思っていない」と川邊社長は言う。



 すなわち「他の大手が提供しない部分」「他の大手からは出てこないサービス」をいかに素早く構築できるかがポイント、ということになるだろう。



 別の言い方をすれば、これは過去の「タイムマシン経営」が通用しない世界である、ということでもある。タイムラグを生かして海外のものに似せて作っても、技術と規模に優れる海外企業が後から入ってくれば、すぐにつぶされてしまう。単なる先取りでない発想でサービスを構築する必要がある。



 これはとても難しいことであり、日本企業がここ30年、(残念なことに)不得意としてきた部分でもある。いかに斜めからぶつかって戦うか、隙間を見つけて強固に入り込むか。そうした「スピード感を持った発想」が必要になる。AIというのはとても曖昧(あいまい)で雑然とした言葉だが、あえてその曖昧さを生かした展開を期待したい。



 実は、ヤフーとLINEについて、グループ企業のノウハウ流用でなく「自社での取り組み」を評価して紹介したのは、そういう点こそが新しい取り組みを生む、と思っているからだ。特にヤフーに関しては、「ソフトバンクグループが」という発想に縛られない動きがより重要になるのではないか。今回の発表で川邊社長・出澤社長という2人が前面に立ち、ソフトバンク側からもNAVER側からも関係者が壇上に立たなかったのは、そういう「2社が独自にできること」を強調したかったからではないか、と思うのだ。



 そこでのAI戦略として、「2社の顧客基盤を生かして分析データを他社と共有」程度のことで終わってもらっては困る。それは「2社やクライアント企業」には有利なことでも、ユーザー・消費者にとって有利なことではない。



 両社の蓄積したノウハウやスピード感のあるスタッフを使って「そこにタネがあったか!」と驚くようなサービスが出てくることを期待したい。それこそが、海外企業の規模に対抗できる唯一の方法論だ。



(西田宗千佳)


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