SRSプリンシパル就任後、初のスカラシップを送り出した佐藤琢磨が目指す若手育成「いいライバルがいて成長」

11月27日、鈴鹿サーキットレーシングスクール・フォーミュラ（SRS-F）のスカラシップ選考会が行われ、大阪府出身の高校生ドライバー、岩佐歩夢（18歳）が2019年のスカラシップを獲得した。

　岩佐は現役高校生ながら今季は鈴鹿のスーパーFJにも参戦、2勝しランキング2位を獲得。今回のスカラシップ選考会でも2度の模擬レースのうち第1レースで1位、第2レースで２位となっていた。

　岩佐の他にも大草りき（19歳）、小出峻（20歳）、木村偉織（20歳）が候補生として残っていたが、拮抗した実力伯仲の中で、岩佐が最終的に選出された。

　岩佐は「今回は選ばれて大変嬉しいです。将来の夢はF1ドライバーとなってチャンピオンになることですが、来年はおそらくF4に乗ると思うので、そこでチャンピオンを目指したいと思います」

「SRSのアドバンスに入った時には、講師の方の走りと比較してもまだまだ未熟だと自覚していましたし、それを半年間を通して改善できた部分がよかった。そして昨日、今日の予選とレースでしっかり結果を残せたのが良かったと思います」と喜びを語り、冷静に自己分析した。来季はスカラシップを受けて、ますます期待がかかる。


　今シーズンSRSは佐藤琢磨をプリンシパル、中野信治をバイスプリンシパルに迎え、講師陣も刷新。新体制で初めてのスカラシップ選考となった。

　佐藤プリンシパルは選考会の挨拶で「ここにいる4人は誰が選ばれてもおかしくない実力を持っていたし、現役のプロドライバー、講師陣にも負けない強さを身につけてここまできたことをうれしく思います」

「スカラシップは1名になりますが、他の3人も本当に素晴らしかった。昨日、今日の2日間で走りは難しいコンディションのなか、現役のドライバーにも引けを取らないものだった」と総評。候補生達の努力を讃えた。


　選考会後に自らが関わったSRSのスカラシップ卒業生を初めて送り出す立場となった佐藤プリンシパルは、「スカラシップを選ぶに当たって岩佐君を選んだ理由はひとつではなくて、多角的に判断しなくてはいけませんでしたし、今回の候補生は非常に高いレベルで誰もが実戦で通用する素晴らしい実力を持ったドライバーでした」

「岩佐君は入校した時からセンスの良さを伝え聞いていました。僕のいない間も中野信治さん、加藤寛規さんからセンスのよい子がいるよと。スクールカーは個体差があるのでトップになれない時もありますが、そういう時でもなんとかしようという姿勢と、そのセンスやスピードを感じました」とコメント。

　また中野信治バイスプリンシパルも「琢磨と今回SRSをやってみて、ドライバーはいろいろな角度から視点があるし、いろいろな気づきもある。僕がドライバーとして学んできたこと、琢磨が経験して学んできたこと、それに加藤さんや現役のドライバーが講師にきて感じたことなど、いろんなことをミックスして角度を変え、幅を広げてみることが出来たのは、良かったんじゃないかなと思います」と語った。


　最初のスカラシップ卒業生を送り出し、来季以降について佐藤プリンシパルは「僕らが出来ることはハード面やソフト面、インフラの整備をやることぐらいしかありませんが、僕らとしても、生徒をちゃんと見てあげられる環境を今まで以上に意識して作っていきたい」

「僕が生徒だった頃から見てくれている佐藤浩二さんがいてくれるのは、本当に心強いし、信治さん、加藤さん、そして講師陣がいてくれるので、僕も全幅の信頼を寄せています」

「昨晩も夜遅くまでミーティングしたんですが、科学的に分析する部分と講師陣、スタッフで見て来た想いとか、感じていた部分を取りまとめて、この生徒に頑張って欲しいという結果になったのですが、ミーティングを通じて、今まで本当に質の高いレーシングスクールをやって来たんだなって感じました」

「僕はスタッフの皆さんにも感謝しています。ハード面でもここを卒業した生徒たちが、上のカテゴリーにステップアップして活躍できるような環境を作っていきたいし、運営や予算、いろんな縛りもあるけども、着実にこのスクールを進化させていきたいと思っています」

「卒業生が頑張ってくれることで、またSRSにトライしてみようという選手が出てくるだろうし、岩佐君が今年ここまで伸びたのも、いいライバルがあってこそだった。それこそがスクールの理想とする形なんだと思いますね」とSRSでの展望を語った。