難病に苦しむ人たち「巨大な鳥に全身を食いちぎられるような痛み」との闘いも

4

2019年11月29日 08:00  週刊女性PRIME

  • 限定公開( 4 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

週刊女性PRIME

※写真はイメージです

 実にまれなケースではあるが、日常の不調を突き止めていったら難治性の病気だった、という現実はある。原因がわからないつらさ、診断が下らずに長い間病院を転々とせざるをえない実情……。専門の医師も少ないため、確定診断に至るまでには誰もが遠回りを強いられ、症状の悪化に苦しめられる。

 加えて、病気の認知不足や誤解も多く、周囲の人たちからの無理解にも苦しめられる。いま現在でも、自分の感じ方や弱さのせいなのかと苦しむ人たちも多数いるのだ。

 当事者たちの生の声を、自分の健康を守るためのみならず、目に見えない病気に苦しむ人々を理解するためにも役立てたいものだ。

激痛と意識朦朧の疲労感に苦しんで

【線維筋痛症、慢性疲労症候群/海山みどりさん (仮名・30歳)】

 発症してもうすぐ3年、診断されて1年半たちました。仕事で重いものを運んだとき、腰痛で入院したのが最初。歩くのに杖が必要なほど痛みがあったものの、レントゲンやMRIなどの検査で異常がなかったので退院するしかなく、仕事が忙しくて休めずにいたら悪化。

 思い切って休職し、安静と運動を努力するもスッキリ治る気配はまるでなし。悪化と小康状態を繰り返しながら、慢性化しました。

 そのうち疲労感も現れ始め、焦りから無理をすると次は全身に痛みが! 退職を余儀なくされました。地元には診察できる病院がないので、痛みをこらえて遠方への通院を繰り返したところ、限界が来たのか取り返しがつかないほどに激化。ほぼ寝たきりの生活に突入しました

 その後、理解ある開業医と出会い、線維筋痛症と慢性疲労症候群と診断されました

 同じ病気で苦しんでいる方がいたら、病院探しや通院のために無理をしないでほしい。病気に関して懐疑的だったり、心理的苦痛に対して理解のない医師なら転院したほうがストレスがないので治癒につながります。

 知識のある専門医が大都市にしかいないのも問題です。通院自体が悪化につながるのに、大勢の患者さんが無理して通わざるをえない状況なのです。

 病気のいちばんひどかったときの症状を言葉にすると、線維筋痛症は筆舌に尽くしがたい痛み、これに尽きます。出る症状は人それぞれですが、私の場合は全身の自発痛と圧痛。それはまるで血管の中をガラス片が流れるようなざりざりとした内側の痛み、巨大な鳥に巨大なくちばしで全身をブチブチ食いちぎられるような痛みなど、あらゆる耐えがたい痛みが全身をめぐります。

 加えて、全身が痛覚になったようで、身体へのわずかな圧力もすべて痛みに変わってしまう。ものに触る、横になる、座る、歩く、食事、入浴、スマホをタップする……、生活動作全般が痛みに変換されてしまうんです。家の中でも介助式車椅子を押してもらっていて、診断後は一歩も外に出られていません

 慢性疲労症候群は、常に意識朦朧となるくらいの疲労感。身体すべてが重く感じ、全身筋肉痛状態。すべての刺激が脳に刺さるように過敏になり、光はまぶしすぎ、音はダイレクトに脳に響く……。

 会話はできないし、人に会えない、電話も無理で、誰とも話ができず、社会から孤立します。わずかな刺激が症状悪化につながるのでヘルパーさんも呼べず、家族は看病で疲弊しています。大げさではなく、これが事実です。

「ひとりじゃない」と感じられたらうれしい

 今は、対症療法ですが自分に合う鎮痛薬が見つかったので、最もひどかったときより、ほんの少しだけマシになりました。とはいえ、絶対安静! 焦らず休むときだと忍耐して、外に出られない浦島太郎状態を、面白がるようにしています(笑)。

 病気のことを考え続けた日々もありましたが、ただ心配になるだけだと気づいてからは、お笑いを見たり、自分で面白いことを考えるようになりました。ふっと笑顔になるその瞬間はすべてが忘れられるんですよね。ユーモアってすごい、ありがとう! って気分です。

 知識がないせいで、この病気の存在すら疑う人もなかにはいます。でも、目の前で人が苦しんでいるという事実に目を向けて、その人を信じてもらえたらなと思います。

 また、前向きに生きていこうとしている私を見て「すごい人」「感動する」という反応をする人もいますが、これはなんというか戸惑います。私は病気ではあるけれど、日常を生きているだけで、そこに度を越えた感動や同情をされると、自分の状況の悲惨さがかえって強調されるようで……。普通に接してもらえたらうれしいなあと。

「何かしてあげたい」「力になりたい」という気持ちは、素直にうれしいです。

 闘病とは実に孤独なもの。金八先生じゃないけど、助け合いは素晴らしい。たとえ病気が治らなくても、ひとりじゃないよ、つながっているよ、という気持ちを誰かと分かち合いながら生きていけたらいいなあと思うのです。

〈線維筋痛症〉
 あきらかな異常が見られないのに、身体に強い痛みを生じ、それが慢性的に続く。原因は不明。

〈慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)〉
 日常生活に支障をきたすほどの疲労感に加え、微熱、筋肉痛、睡眠障害などが長期に続く。これも原因は不明で治療法も確立されていない。

私は私の身体でできることで生きていく

【膠原病 渡鳥千鶴さん (仮名・60代)】

 膠原病と病名はついていますが、症状は人それぞれで、いろいろな病気を発症するんです。私の今の症状は全身性強皮症。さらに、強皮症といっても、言葉から受けるイメージと違って、私の場合は皮膚に症状が出ずに内臓に症状が出るんです。逆流性食道炎や、ここ2年は間質性肺炎を患っています。

 見た目はまったく普通の人と変わらないくらい元気。むしろ、普通の人より元気に見られる(笑)。それがつらくてしかたないわけではないのですが、最後まで理解されなかったなあ、と残念な思いをしたことはやっぱりありますね。

 発病はもう30年以上前。だから、今の自分が普通で、健康なころどうだったかなんて忘れちゃった(笑)。たしかに病気で大変なのかもしれないけれど、私にとってはこれが日常です。

 発病は出産後すぐ。比較的すぐに気づいてもらえたのは幸運でした。最初は蕁麻疹だと思ったのですが、何か月も治らず、皮膚科の先生がこれはおかしいと内科に回してくれて。

 でも、自分のことどころじゃありませんでした。生まれた子どもの状態がよくなかったし、わが家は転勤族でひとつところに落ち着いていられるわけじゃない。子育ても始まっちゃって、ずっと「膠原病疑い」のまま、10年ほど治療はせずに検査だけで過ごしていました。

 全国あちこちの病院に行きましたが、地域格差がすごい。地方は膠原病を診てくれる医師が少ないんです。平成5年から主人の地元の山梨に住んでいますが、ここにも専門医は少ない。私は車で40分かけて通院していますが、この先、車社会の土地でいつまで自分自身で運転し、通院できるのか不安です。

 膠原病は直射日光や風に当たるといけないのですが、山梨は日差しが強く、山から吹き下ろす風も吹く。そんなふうに生活環境によっても病状は左右されますね。情報も都会に比べて少ないし、患者同士が共感しあう場は必要だと思い、有志の方と一緒に「膠原病友の会」の山梨支部を立ち上げました。

症状のつらさ以外にも苦労がたくさん

 私は以前医療関係の仕事についていて病気の知識が多少あったので、予備知識なく宣告されるよりはすんなりと受け止められたと思います。

 でも、患者さんの中には、なかなか受け止められなくて苦しむ人も多い。医師からの告げられ方によっても違ってきます。それに、とてもたくさんの薬を飲まなければならないので、その事実や副作用でうつ状態になる方もいます。私は1度も入院したことがないのですが、長く入院を余儀なくされる方ももちろんいます。

 医療費の助成があるといっても、お金が出るのは限られた症状についてで、派生して出る症状は対象外。それなのに、病気を持ちながら仕事に就くのは大変です。健康な人と同じように9〜17時でバリバリ働くというわけにはいかない。なかには病気を隠して、という方もいますが、あとでわかってトラブルになることも多いんです。

 私は先に話したほうがいいと考えています。13年間パン屋で働きましたが、病気のことは最初に話して雇っていただき、「ドクターストップがかかったときは、しばらく休ませてください」と正直にお願いしました。そのかわり、調子のいいときやできそうなときは、みんなと同じように力仕事もしました。

 病気があるからあれもこれもできないと言ってしまうと、雇う側は困りますよね。できることをアピールすることが大事。無理はいけないけれど、頑張ることは必要。その姿勢が周囲の理解につながっていく気がします。できないことは、あとでそーっと言えばいいんです(笑)。

 私は自分の調子を細かく家族に話したりはしません。先日も主人が「具合悪いってあまり言わないよね」と言うから、「だっていつも言ってたら嫌でしょ?」と言うと、「そうだな」と。声高に言わずに、すーっといなくなって横になる。家族はなんとなく察してくれます。

 運動が大好きで、今は地域のみなさんに運動サポーターとして活動しています。もちろん体調が悪いときはありますから、そのときは正直に話して理解してもらっています。

 病気ですから具合は悪いです。でも、しかたない。自分の責任において、自分で管理しながらやっていくしかないし、やりたいこともあきらめたくない。もう他界しましたが、がんを2度経験した父が言っていたんです。「残った臓器で生きればいいんだ」って。

 それを聞いたとき、「ああ、そうだよな」って思ったんです。私を見守ってくれている家族や友人に感謝をしながら、私も私の身体でできることで生きていけばいいのだと思っています。

膠原病
 指定難病で、全身性エリテマトーデス、シューグレン症候群、強皮症などいくつもの独立した病気を発症する。疲れやすい、発熱や疲労などの共通した特徴がある。

    ランキングライフスタイル

    前日のランキングへ

    ニュース設定