『鬼滅の刃』原作大ヒットで熱狂的人気を獲得 売り上げを拡大させたTVアニメの威力

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2019年11月30日 08:01  リアルサウンド

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吾峠 呼世晴『鬼滅の刃』第3巻(集英社)

 『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載中の『鬼滅の刃』が大ヒットを続けている。


参考:『鬼滅の刃』は劇場アニメに匹敵するクオリティに? 『Fate』シリーズと共通する“愛”の表現


 本作は、人喰いの鬼に家族を殺され、さらに鬼にされてしまった妹・禰豆子を人間に戻すため、主人公・炭治郎が鬼を討伐する剣士・鬼殺の剣士となり各地を奔走するダークファンタジー。今年の4月から2クールに渡ってTVアニメが放送され、そのクオリティの高さで人気に火がつき、11月27日時点で単行本売り上げがシリーズ累計2500万部を突破。アニメの主題歌「紅蓮華」を担当したLiSAは『紅白歌合戦』(NHK総合)に出演することが決まっており、2019年を代表する作品のひとつとして様々な分野で話題に上がっている。


 『鬼滅の刃』という作品の売り上げとして特徴的なのが、放送終了後にかけての伸び率の高さだ。出版取次会社の日本出版販売が手がける「ほんのひきだし」によると、『鬼滅の刃』第1巻のコミックス売り上げは、TVアニメ放送前の3月に比べ、放送開始直後の4月の時点で5倍の売り上げを記録。さらにTVアニメが終了した直後の10月には、放送前と比べ20倍もの売り上げを記録している。実際に、10月時点では全国多くの書店で、一時売り切れ状態となり、インターネット上で高額転売されるといった事態も発生していた。


 ここまで人気に火をつけた要因として、TVアニメの効果があげられるのは間違いない。なぜアニメ放送が視聴者の購買意欲を刺激することになったのか、国内外のアニメーションに詳しい映画ライターの杉本穂高氏は次のように語る。


「『鬼滅の刃』は、物語としては『週刊少年ジャンプ』の王道をいくような内容で、迫力あるバトルに家族愛、敵対する鬼側のドラマも色濃く描くなど、様々な要素が上手く合わさった作品で、その“新しさ”で驚かれたわけではないと思います。アニメを制作したufotableが、非常にクオリティ高い作品に仕上げたことが大きかったと思いますね。2クールの放送で、最初から最後まで全くクオリティが落ちず、第19話『ヒノカミ』では、アクション描写や撮影のクオリティが大きな話題となりました」


 第19話「ヒノカミ」では、炭治郎と十二鬼月の累(るい)の戦闘が描かれる。今まで戦ってきたどの鬼よりも遥かに格上の累に対し苦戦を強いられる炭治郎。自身が持つ最高の技「全集中・水の呼吸 拾ノ型 生生流転」を放つも、累に破られてしまい、炭治郎は走馬灯を見る。家族が健在だった頃を回想する中で、炭治郎は亡き父からかつて教わった「ヒノカミ神楽」という舞を思い出す。それを戦いの場でいきなり取り入れることで、絶望的だった状況が一気に逆転する、という少年漫画における主人公が覚醒する“見せ場”の回だ。


「その19話の演出・絵コンテを担当したのが、ufotableの白井俊行さんでした。彼は『活劇 刀剣乱舞』の監督や、『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』の第24話『無限の剣製』の絵コンテ・演出を担当され、その回も原作の奈須きのこさんから絶賛されており、非常にアクション描写が得意です。今回そういった実績を踏まえて登板することになったのだと思います」


 重要な回に対し、アニメーションスタジオ渾身の布陣で挑んだ結果が、最高の評価に繋がったということだろう。また、ufotableの作品全体の特徴として、撮影処理が重要な役割を担っているという。


「寺尾優一さんという有名な撮影監督が担当しているのですが、寺尾さんの作る画が非常に美しいんです。アニメにおける撮影処理というのは、原画や背景など、様々な部署から上がってきた素材を合わせて画を完成させていくことを指すのですが、今だとデジタルで全て行うので、様々なエフェクトを加えることができます。個人的には、寺尾さんの作る画は夜のシーンが特に美しい印象です。『ヒノカミ』を見ても、炎の描写などでその魅力が存分に出ています。演出や絵コンテを汲み取った上で、効果的な処理が施されているんです」


 『鬼滅の刃』は、2020年にはTV放送の続編が劇場版として公開されることが決定しており、この熱狂はますます加熱していきそうだ。また、本作以外にも、アニメ放送によって原作漫画が売り上げを伸ばす例が見られた。


「夏クールに放送された『ダンベル何キロ持てる?』は放送前と比較して9.6倍に、2015年に放送された『がっこうぐらし!』に至っては26.5倍と、とんでもない伸び率で跳ねています。アニメになることによって、ダークホース的に注目され、今まで光が当たっていなかった作品が改めて価値を見出されることもあるので、これからもそういう作品が出てくると楽しいなと思います」


 ufotableのアニメーターたちのプロフェッショナルな仕事が象徴するように、こうしたヒットの背景には、原作を借り受ける以上、半端なものを作ってはいけないと言う作り手の覚悟と努力によって支えられているのだろう。


(文=安田周平)


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