飯田里穂が語る、芸能活動20年で見出した音楽の届け方と人生哲学「今さら取り繕った私は魅力的に見えない」

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2019年12月02日 11:31  リアルサウンド

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飯田里穂

 飯田里穂が、芸能生活20周年を記念したアルバム『20th Anniversary Album -rippihylosophy-』を12月4日にリリースする。2000年に子役として女優デビューし、2010年に『ラブライブ!』星空凛役で声優デビュー、2015年にはソロアーティストとしてのキャリアをスタートした飯田里穂。同作には、小学6年生の頃に歌ったというNHK教育『天才てれびくんMAX』の「サンデーモーニング」、初の声優参加作品『ラブライブ!』のテーマソング「僕らのLIVE 君とのLIFE」のほか、飯田里穂が参加するアニメ作品のキャラクターソングやソロ楽曲のセルフカバー、最新作「いつか世界が変わるまで」など、彼女の20年間がギュッと詰まった一枚に。


参考:飯田里穂、思い出の場所で交わした“ただいまとおかえり” 2年ぶりに立ったライブのステージ


 タイトル『rippihylosophy』(リピロソフィー)は、飯田の愛称である“リッピー”と“哲学”をかけあわせた造語だという。収録楽曲と共に歌手活動を振り返りつつ、20年間で得た経験と様々な出会いから、各時代を象徴する楽曲を“今の飯田里穂”が歌う意味についてたっぷり語ってもらった。(編集部)


■舞台劇みたいな感覚が強かった初のアコースティックツアー


ーー11月3日から10日にかけて愛知、大阪、埼玉の3箇所で初のアコースティックツアー『Riho Iida Acoustic Tour 2019 -rippihylosophy-』を開催しましたが、そもそも飯田さんがアコースティックライブを行うこと自体が初めてのことだったんですよね?


飯田里穂(以下、飯田):そうなんです。正直、決まったときはそこまで深くは考えていなかったんですけど、いざ形になってきたら「こんなにも自分の歌声で舵を取るのか……あれ、これってハードル高いやつじゃない? とんでもないツアーだな!」と気づきまして(笑)。そもそもアコースティックライブというと弦楽器のイメージが強いですけど、今回はピアノと歌だけでしたからね。


ーー歌に自信がないと、確かに厳しい状況ですよね。


飯田:そうなんです! それこそステージとはまったく別の話題ですけど、私は普段からよく喋るので、声をすごく大事にしなくちゃってことで、ライブ当日はそれこそメイクをしているときも、昼夜2公演の間も一切喋らず。あんなに楽屋で静かだったのは生まれて初めてかもしれないです(笑)。でも、その黙っている自分にも面白くなっちゃって。それぐらい、いつものライブとは違いました。だから、埼玉での最終公演が終わったあとのはっちゃけ具合は、逆にすごかったですよ、「喋れるぞー!」みたいな感じで(笑)。


ーー開放感が(笑)。実際、アコースティックライブ自体はいかがでしたか?


飯田:ピアノを弾いてくれた文ちゃん(畠中文子)と1対1だったのがよかったのかな。ピアノがベースとリズムとメロディという、バンドで連なるものをすべて担当してくださっていたので、ここは文ちゃんの両腕の中に飛び込む感じでやったほうがいいかなと思って、胸を借りるつもりで臨みました。


ーー実際に僕も埼玉最終公演を観させていただきましたが、終始気持ちよく楽しめましたよ。


飯田:私も歌っていて気持ちよかったです! 音がたくさん詰まったバンド形態もすごく楽しいんですけど、自分が歌うときに大切にしていた歌詞の背景とか意味とか気持ちをアコースティックで、ピアノだけをバックに伝えられる楽しさも知れましたし。それこそステージ上からお客さんに届けているのは歌なんですけど、文ちゃんとは舞台の上でお芝居をしているような感覚に近かったんですよ。すごく不思議で、「私、こうやって歌いにいくけど、あなたの感情はどうなの?」みたいなにセリフを言いあっているような感じというか。


ーーああ、なるほど。1対1の掛け合いだからこそ、よりそのように感じたんでしょうね。となると、公演を重ねるごとにその空気も変わっていったんでしょうか?


飯田:そうなんです。会場に来てくれたお客さんが作る雰囲気を私たちが受け取って、それによって文ちゃんの音色がちょっと激しくなったりすると、「あなたがこういう感情で来るなら、私はこう歌うわよ」みたいな。私と文ちゃんとお客さんとの三角形の舞台劇みたいな感覚が強かったです。これはバンドだと味わえなかったものかもしれませんね。


ーーあとは、あれだけアレンジとして装飾が少ないと、メロディの良さを改めて実感できますよね。


飯田:確かに。わりと私の楽曲はスルメみたいに噛めば噛むほど味わえるようなものが多いので、そういう楽曲をアコースティックアレンジにすると今までとは違う胸への響き方があるんだなというのは、新しい発見でした。


■成長が一番ダイレクトに伝わるのが「サンデーモーニング」


ーーそのツアーに続いて発表される今回のアルバム『20th Anniversary Album -rippihylosophy-』ですが、全12曲中、昨年のミニアルバム『Special days』やシングル「いつか世界が変わるまで」を除く10曲が、過去に飯田さんが歌ってきた楽曲やアニメのキャラクターソングを再レコーディングしたもの、あるいは飯田さんが関わったアニメ作品の楽曲を飯田さんのボーカルで録音したもの。20年の歴史の中から10曲に絞る作業は相当大変だったんじゃないかと思いますが。


飯田:めちゃめちゃ大変でした。まず、スタッフさんに今まで私が関わった曲を一覧表にしてもらって、そこに事務所の人たちが「これは入れたいかな?」と各々チェックマークを付けて、最終的に提出し合うというやり方でした。


ーー皆さんが選んだ曲ってバラバラでした?


飯田:面白いことに、絞る作業は大変だったけど、最終的に選んだ楽曲は意外と一緒だったんですよ。これだけ違う年代の人たちの意見が合致するということは、もしかしたらCDを手に取ってくださる、私のことを子役の頃から応援してくださっている人たちも「そのへんの曲が入っていたらうれしいかな」とも感じたので、そこからはわりとスムーズに進みました。もちろん、CDに入れたい曲はもっといっぱいありましたけどね。


ーーそんなアルバムのオープニングを飾るのは、『天才てれびくんMAX』(以下、『天てれ』)で小学生だった飯田さんが歌っていた「サンデーモーニング」という懐かしい1曲です。


飯田:小6のときの歌なので、もう15、6年くらい前なんですよね。


ーー今の飯田さんが歌うことで、この曲の良さや魅力をどう伝えたいと考えましたか?


飯田:当時番組を観てくれていた人がわりと今もライブに来てくれていて、「りっぴー、大人になったね」と思ってくれていると思うので、写真のアルバムじゃないですけど「私、こんなに成長しました」みたいな感覚が一番ダイレクトに伝わるのが、この「サンデーモーニング」なんじゃないかな。今までもライブでは歌ったことはあったんですけど、それを形として残したことはなかったので、改めて「大人になった私が歌ったら」みたいなものがここに詰まっている感じがします。それに、この曲の作詞・作曲はつじあやのさんなんですけど、いろんなご縁があって昨年の『Special days』では「聞こえてくるのは君の声」という曲で作詞をしていただいて。ずっとつながっているんですよね、「サンデーモーニング」から今もずっと。


ーーそういう縁やつながりがあったからこそ、20年も続けてこられたわけですものね。


飯田:本当にそうですね。20年も活動していると、懐かしい人と再会できる瞬間があるんですよ。例えば、10年ぐらい前にご一緒した方にまた会えて、成長した姿でまた一緒にお仕事ができるという。その積み重ねという気がしています。


ーーよく10年をひとつのサイクルと例えることがありますけど、20年というとさらにもう一周する感じなのかもしれないですね。


飯田:そうかもしれませんね。20年前に子役としてこのお仕事を始めて、ちょうど10年前ぐらいに声優さんも始めた。確かに10年サイクルですね。じゃあ私、人生3周目なのかな(笑)。


■変なプライドは2010年に一度捨てました


ーーそもそも、ひとつのことを10年続けるのも大変なことですよね。


飯田:本当ですよね。逆に私、飽き性だからこれ以外のことは何にも続いてないですから(笑)。


ーーそれって、人より好奇心が強い表れなんでしょうかね?


飯田:そうなのかなあ。わりとなんでも知りたいと思うから、気になったらすぐ「それ、やってみたい!」と口にしちゃいますし。


ーーそんな飽き性の飯田さんが、なぜこのお仕事を20年も続けてこられたんでしょう?


飯田:いや、それだけが本当に不思議で。特に最近は周りから「20年なんてすごいね!」と言われるんですけど、私としてはその実感もまったくないし。だって20年もやってきたつもり、全然ないんですよ。だから、テレビを観ていて「嵐さん、20周年なんてすごい!」っていう感覚ですから(笑)。


ーー自分もなのに?(笑)。


飯田:そう(笑)。「あ、私もか」って。そんな感覚ですもの。


ーーでは、その20年の間に辞めようと思ったことはなかったんですか?


飯田:つらいから辞めようというのはなかったんですけど、「大学卒業するし、就職しようかな?」というのは普通にありました。


ーーそれに関しても、過去のインタビューでは「新規の仕事が決まったおかげで、就職は断念した」とおっしゃっていますよね。


飯田:そうなんです。『ラブライブ!』のアニメが決まったので。なので、自分から「これがダメだったら辞めよう」と思ったことはなかったですね。


ーー変な話ですけど、仕事という感覚よりも「日々を楽しんでいる」感覚のほうが強いんですかね?


飯田:完全にそれですね。日々楽しくてしょうがない、みたいな。もちろんできないことやつらいことにぶち当たることもあるんですけど、一回落ち込んだらまたすぐ楽しくなって、「もっとやってみたい!」と気持ちが切り替わるので。まあそれも好奇心ですよね。


ーーでは、2010年に声優の世界に初めて飛び込んでいったときはいかがでした?


飯田:最初はいろいろ面食らいましたね。こういうお仕事をちっちゃい頃からやっていると、そこに対する変なプライドみたいなものもあるじゃないですか。でも、それを2010年に一度捨てましたから。


ーーそう簡単に捨てられるものではないですよね。


飯田:すごく捨てづらかったですけど、捨てないと学べないし。声優の世界では私のことを知らない人のほうが多いわけですし、知らない世界に飛び込むということは……敵を倒すためには敵を知るじゃないですけど、その世界のことを知らないとダメだと思って、もともとアニメはそんなに観るほうではなかったけど、当時は相当勉強しましたね。


■星空凛ではない“今の飯田里穂”が歌う


ーーその声優という仕事も気づけば約10年。このアルバムに収録されている楽曲には、そこに関連づいたものも多いです。


飯田:たくさんありますね。こうやって振り返ると、声優さんを10年続けたことでいろんな作品に関わることができて。10年前に一度捨てたプライド以上のものをさらに得られたんだなって気づかされます。


ーー声優としての最初のお仕事が『ラブライブ!』というプロジェクトでした。2010年当時はまだアニメ化も決まってなかったですし、それこそ本作にも収録された「僕らのLIVE 君とのLIFE」をレコーディングした頃はどういう心境で声優という仕事と向き合っていましたか?


飯田:本当にあのときは何もわかってなくて、それこそ「キャラソンってなんですか?」ってもらった楽曲をただ歌うみたいなレベルだったので。当時はまだ高校生だったので、制服を着てレコーディングに通っていたくらいですから(笑)。でも、そんな「僕らのLIVE 君とのLIFE」は声優さんとしての原点でもあるので、今回入れさせていただきました。


ーー『ラブライブ!』も今年9周年という節目のタイミングを迎えましたが、そういう時期に飯田さんがこの曲を再レコーディングするというのは、すごく意味が大きいのではないでしょうか。


飯田:そうかもしれませんね。アレンジも原曲とはかなり違う感じで、おしゃれで大人っぽい雰囲気になっているので、原曲を聴き込んでくれている皆さんはたぶんイントロから「うわっ!」と驚くと思いますし。不思議なことに、この原曲で初めて星空凛として歌った私と、今『ラブライブ!』の曲を星空凛として歌う私の歌い方や歌声は全然違っていて。しかも、今回はその曲をリアレンジして、星空凛ではない“今の飯田里穂”が歌うという。いろんなパターンがあって、改めて歴史のある曲だなと感じますよね。


ーーそれこそ、キーを少し下げたことで原曲よりも落ち着いた印象になりましたものね。


飯田:せっかく再レコーディングするなら変化を大事にしていきたいなと思ったので、ちょっとキーを下げることでこのアレンジが活きるような形にしました。それこそずっと歌ってきた曲なのに、また新しい曲を歌っているみたいな感覚でしたね。


ーー「私の時計は逆回転!」も『ラブライブ!』があったからこそ生まれた1曲ですよね。これは同作やμ’sで一緒に活動したPileさんとのユニット、4to6として発表したオリジナル曲です。


飯田:実はこの曲って2人で一緒に歌ったことがなくて、ちょっとファンの間では幻の曲みたいになっているんですよ。でも、曲自体の人気は高かったので、今回はひとりで歌い直そうということになったんです。「なんだか懐かしいなあ」と思いながらレコーディングに臨んだんですが、2人で歌っていた楽曲をひとりで歌うのは大変なんだという新たな気づきもありました(笑)。


■作品に対する愛情がなければこれらの楽曲は歌えない


ーーご自身が関わったアニメ作品の楽曲を選ぶ際、基準になったものはありましたか?


飯田:その作品と向き合っていたときにファンの方から「いい曲なんだよね」みたいによく言われていた曲は、わりと基準になっているかもしれませんね。今回のアルバムだったら「Reason of birth」とか「ユメノツバサ」、「Change the World」あたりはファンの方々の熱も強い曲ですし。今まで自分のライブで歌ったこともほとんどなかったし、飯田里穂をそんなに知らないアニメファンにも「こんな曲も歌えるんだよ」と私のことを知ってもらいたいなと思って選びました。と同時に、これまでのソロ活動では出してこなかったタイプの曲を、カバーという形でなら歌えるという楽しさも基準になっているかな。


ーーその選曲の中には、原曲をご自身で歌っていなかった楽曲も含まれていますよね。


飯田:「カラフルストーリー」はまさにそうですよね。これはevery♥ing!(※2014〜2017年に活動した木戸衣吹、山崎エリイのユニット)の楽曲なんですけど、2人がまだ高校生だった頃に私もこの作品(アニメ『レーカン!』)に声優として参加していたんです。当時、イベントとかで2人が歌っているのをすぐそばで観ていましたけど、まさか自分がカバーすることになるとは、びっくりですよね。当時からこの曲がすごく好きでしたし、自分の歴史の中でも『レーカン!』というアニメに携われたことはターニングポイントでもあったので、大事にしたいと思って選びました。


ーー携わった作品に対する愛情と、楽曲に対するリスペクトが大きいと。


飯田:それがすべての曲にありますね。どの作品に対しても、どの時代の私に対しても、その気持ちがなかったらこれらの楽曲は歌えないし、アルバムにも収録できなかったと思いますし。


ーーちょうどアルバムの真ん中あたりにご自身のオリジナル曲のセルフカバーも収録されています。


飯田:この収録曲順、実は時系列順になっていて。だから、自分の芸能生活でいったら真ん中ぐらいがちょうどソロデビューという感覚なのかな。


ーーそれ以前もキャラソンなどいろいろ歌っていましたが、改めて「歌手・飯田里穂」としてソロデビューします、ソロアルバムが出ますと伝えられたとき、歌手に対してどのような思いがありました?


飯田:キャラを背負っているのはもちろん大事なことなんですけど、それと同じぐらい「そこにとらわれない自由な、飯田里穂としてのパーソナルを思いっきり打ち出せること」に憧れを持っていました。でも、実際にやり始めてみたら意外と難しいもので、「“私の歌”ってなんだろう?」と考える時間はすごく必要でした。


ーーよく歌手活動をしている声優さんにお話を聞くと、皆さん「初めてソロ作品を制作するとき、それまではキャラクターという鎧があったからこそ表現できたものが、それを全部剥ぎ取って自分自身として歌うときに何を表現したらいいのか、そこでまず悩む」とおっしゃいますが、飯田さんもそういう壁に打ちあったったと?


飯田:まさに私も同じ経験をしました。難しかったです。


ーーそんな中で、どうやって飯田里穂として聴かせたい音楽、伝えたいメッセージを見つけましたか?


飯田:今20周年をこうやってお祝いさせていただいているんですけど、私はちっちゃい頃から飯田里穂というものをさらけ出していて。それこそ、成長する姿も皆さんにお見せしながら芸能活動を続けてきたので、今さら取り繕った私は魅力的に見えないだろうと思って、ありのままというか自然体で楽しんでいる姿を音楽で打ち出していこうと。それはデビューするときから今も一貫していますね。


■幼い目線から大人目線に成長した「7月29日」


ーーなるほど。今回のアルバムにはデビューアルバム『rippi-rippi』から「始まりたいカノン」と「7月29日」の2曲が選ばれています。デビュー当時のインタビューで話していたことだと思いますが、確か最初のレコーディングで「始まりたいカノン」が思うように歌えなかったそうですね。


飯田:そうなんです。「始まりたいカノン」を歌ってみたものの、レコーディングスタッフさんから「それは違うよ。飯田里穂じゃないよ」と言われてしまって。「今、私が歌ったらこれになるんですけど、『飯田里穂じゃない』ってどういうことですか?」みたいな感じで、その「違う」の意味もまったくわからなかったんです。それこそ、キャラソンがわからなかった私が5年ぐらいかけてやっとキャラソンというものを習得したところで、「違うよ」と言われたから余計に混乱してしまって、本当に大変でした。結局、ゆったりしていて一番歌いやすそうな、言葉のメッセージ性が強い曲から歌ってみようということで、「あなたがいたから」から始めることになったんです。


ーーその「始まりたいカノン」をこうして再レコーディングしたことで、自分の中で当時との違いを感じることは?


飯田:だいぶありました。昔の歌声は明らかに若い声だし、跳ねているというか元気さが強かったんですけど、今歌うとちょっととんがりも取れて、大人っぽく落ち着けた感覚があるかなと思います。この曲の切ないメロディや歌詞も、あのときとは違う形でマッチするようになったんじゃないかな。


ーー「7月29日」もピアノを軸にしたしっとりめのアレンジに変わったことで、今の年齢に合った表現になったと思いますし。


飯田:そうですね。こちらも生のストリングスを入れていただいて、壮大なアレンジになりましたし。当時、自分で作詞をしたときはこういう位置付けで、こんな存在の曲になるなんて思いもしませんでした。


ーーそれは年を重ねるごとに曲の意味合いや、そこに加わる気持ちに変化が生じたと?


飯田:はい。今回のアコースティックツアーでも歌わせてもらったんですが、この曲を作詞したりレコーディングしたりしていた頃は未来に向けた歌というか、「不安で怖いけど、ここに立てるようになったよ」みたいな幼い目線だったんですけど、何回もみんなと一緒に歌うようになったことで、今はもっと大人になった目線で歌えている気がします。


ーーだからなのか、ただ再レコーディングしたというだけではなくて、ちゃんとご自身の成長が明確に表れているように感じられるんですよ。


飯田:「ただ歌い直しました」とか「ただアレンジを変えました」とかそんな安っぽい感じではなくて、成長や変化ということに対する思いを込めて作りました。それこそパワーアップとか、そういうキーワードはすごく意識しましたね。


ーーご自身としてはこの5年で、歌で気持ちを伝えたり何かを表現したりすることへの向き合い方に変化を感じますか?


飯田:だいぶ変わりましたね。最初は「ソロで歌いたい! 自分の曲を出したい!」みたいな感覚で突っ走っていたんですけど、一回リリースが途切れた時期があったからこそ、ちゃんと曲を発表できることのありがたみやライブをできることの喜びを再確認できましたし。


いろんな環境に身を置いて自分の感覚を研ぎ澄ませたい
ーー来年2月15日には新宿ReNYでの『Riho Iida Acoustic Tour 2019 -rippihylosophy-』追加公演も決まりました。


飯田:まだ決まっていないことも多いんですが、アルバム発売後のライブなのでセットリストもまた違った感じになるんじゃないかな。しかも、新宿ReNYという私が初めて1stソロライブを行った場所でやらせていただけるので、そういう要素も一連の20周年にまつわる活動として意味があるのかなと思いますし。


ーーなるほど。ここから21年目、22年目と活動を重ねていくことで、また新しいことに挑戦したり、音楽活動でも新しい曲を発表していくと思います。歌手・飯田里穂としてはここからどういう活動を見せていきたい、こういう音楽に挑戦してみたいとういうビジョンや目標はありますか?


飯田: 1年前に出させてもらったシングル「いつか世界が変わるまで」ではアニメのエンディングテーマをやらせていただいたんですが、また新しくそういう作品に携わっていきたいなとは思っていて。最近『リスアニ!LIVE』や『ANIMAX MUSIX』といったイベントに初めて出させていただいたんですが、そういうイベントにソロでは出演したことがなかったので、もっとアニメファンにも認知してもらえる楽曲をたくさん歌っていくことで、ああいう場でも盛り上がれるような存在になりたいなと、改めて実感しました。


ーー今回のアルバムもあることですし、アニメとの親和性の高い楽曲が増えるといいですよね。あと、これは個人的な希望なんですけど、こないだのアコースティックライブみたいなテイストの作品も残してもらえたらうれしいなと。


飯田:あ、もう普通にあのライブの形をCDとして出すということですか? それってすごく強気じゃないですか? 大丈夫かなあ(笑)。


ーーでも、今だからこそできるんじゃないかとも思うんです。


飯田:本当ですか? もともと私の声って速い曲とかグワーッと盛り上がるような曲よりも、アコースティック系のゆったりした楽曲のほうが合うとは思うので、求められるものも多そうですけど挑戦はしてみたいなとは思います。もともと好きな世界観ですしね。


ーー一方で、声優や俳優という演者としてこの先挑戦してみたいことや極めたいことは?


飯田:今はひとつのことにとらわれないで、いろんなことに挑戦していく時代だと思っていて。最近は映画の吹き替えをやらせてもらうことも増えたんですが、もともと吹き替えは挑戦したいことだったので、それができている今の状況はうれしいんですよ。それに、最近は舞台にも出させていただいていますし。もし舞台を経験していなかったら、今回のアコースティックツアーで「ピアノと歌で舞台をやっているみたいな感覚」ということにも気づけなかったでしょうし、そうやってお芝居でもいろんな現場と環境にどんどん身を置いて、自分の感覚を研ぎ澄ませていったほうがいいなと思っています。


ーー何かひとつのことを極めるよりも、エンターテインメントの世界を通じていろいろな形で人を楽しませることが飯田さんの性に合っているんでしょうね。


飯田:そういうことが好きなんですよ。それこそ最初の話じゃないですけど、私は飽き性なので(笑)、ひとつのことだけに執着し続けるタイプではないですから。舞台でお芝居をやったことが今回のアコースティックツアーに還元されたわけですから、たぶん私にはこのやり方が合っているのかもしれないですね。


ーーアコースティックツアーで得た経験が、さらに今後の音楽活動や演技にも還元されていくでしょうし、表現者としての幅もどんどん広がるでしょうし。


飯田:20周年というと、お祝いして「おめでとう!」「ありがとう!」で一見終わりみたいな感覚ですけど、実は全然そんなことはなくて。このお祝いの場があったことで、まだこれだけ応援してくれる人がいるんだってことがわかったからこそ、次にまた新しい挑戦が待っているんじゃないかなと思うんです。


ーー節目って振り返りのタイミングになりがちですけど、飯田さんの場合は前に目を向けて新しいことに挑むためのタイミングでもあると。


飯田:うんうん、確かに前向きですね。基本的にあんまり過去を振り返るようなタイプでもないので、私にとっては「ああ、このぐらいのときにこんなことをやっていたのか」と知ることは逆に良いきっかけだったんですよ。「だったら、まだこんなこともやれるんじゃないか?」と新たに気づくことができて、それをこうやって『rippihylosophy』という1冊の哲学書という形でまとめることができたわけですから。


ーーここからさらに活動を重ねることで、その哲学書はさらに厚みを増していくことになると。


飯田:あるいは2冊目を作ったり。1冊目で終わるわけにもいかないですから(笑)。仮に20年プラスして40周年で次を出すとしたら……20年後って……48歳。その頃の私は何を歌っているんでしょうね(笑)。(西廣智一)


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