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室井佑月「住処は望郷として」

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2019年12月05日 07:00  AERA dot.

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写真室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
 作家の室井佑月氏は、日本の行く末を案じる。

【この記事のイラストはこちら】

*  *  *
 犬は人に付き、猫は家に付く。昔からそういわれている。犬は飼い主に従い、猫はすみ着いた場所に執着する、ということらしい。

 たとえば、飼い主の引っ越し。犬は喜んでついていくが、猫は嫌がる。もともと犬は群れで狩りをして生きてきた性質であり、猫は自分のテリトリー内で単独で狩りをする性質だから。

 さて、あたしがなぜこんな話をしたかというと、これから先、あたしたちはどうなるのだろうと不安を感じているからだ。

 世界的な投資家のジム・ロジャーズが、超少子高齢化の日本についてかなり悲観的な予告をした。この国の若い子は、もう海外にいくしかないといった内容の。

 でも、そういうことじゃない。仕事やプライベートで地方にいけば、繁華街はシャッター街となっている。人やものがたくさん集まる東京だって、ひと昔前の歓楽街は立て直しもできず、昼に見ると薄汚れている。

 テレビでは天皇の即位の式典や、来年の五輪について華々しく報じているが、四角い額縁の中だけの明るさだ。わざとらしくて、よけい自分とつながっている風景を暗く感じる。

 ここ10年で、この国の景色はかなりトーンダウンした。人はものを脳で見ているわけだから、歳を重ね、あたしが変わったということならいい。人として優しく穏やかになり、極彩色に見えていた景色がパステルカラーに変わったなら。が、そういうことじゃない。

 ほんとに世の中は暗くなった。格差は広がり、この国の6人に1人の子どもが貧困。ユニセフに心配されるまでになった。きっと、あたしの息子に見えている景色もおなじだろう。

 11月19日、日米貿易協定の承認案が衆院本会議で自民、公明、維新などの賛成多数で可決された。この協定はTPP(環太平洋経済連携協定)よりよほど日本に厳しいFTA(自由貿易協定)そのものだ。政府はFTAという言葉を頑(かたく)なに嫌ったが、その理由は、米FTAでちょっと調べるとどんなことかわかってしまうからだろう。協定の全容をいえない理由はそれだ。

 農業はもちろん、金融、保険、為替をはじめ、あらゆる分野で米国の利益が優先されていくはずだ。選挙が近いトランプ大統領が、日本に対し温情をかけてくれるはずもなく、この国はさらにガタガタになってゆくと思われる。

 この国の為政者のように、米国が我々の飼い主だと理解し、諦めるしかないのだろうか。どんな未来に連れていかれようとも、犬のように飼い主に尻尾を振ってついていくことが大事だと。

 でも、あたしたちの住処(すみか)はこの国、日本だ。猫のように、自分の住処に執着し、これ以上、変わらずにいてくれと願ってしまう。それとも、ジム・ロジャーズがいっていたように、若者はこの国を出て生きるすべを考えるべきなのか。犬のように米国に従い、猫のように自分の住処に愛着を持つ。でも、その住処は望郷として。

※週刊朝日  2019年12月13日号

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  • でも自称知識人の室井さんは政治コメンテーター達が集まる番組で会話に混ぜて貰えず、時世ニュースを読みとくバラエティでは芸人以下でしたよね。反日さえ吠えとけば犬でもコーナー持たせて貰えるAERAがお似合いといえばお似合いか
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