『テッド・バンディ』監督、シリアルキラーを題材にしたきっかけから制作秘話まで語る

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2019年12月06日 19:51  リアルサウンド

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『テッド・バンディ』(c)2018 Wicked Nevada,LLC

 映画『テッド・バンディ』のジョー・バリンジャー監督来日記念トークイベントが、12月5日にユーロライブにて開催され、バリンジャー監督とゲストとして放送作家の町山広美が登壇した。


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 バリンジャー監督は、会場に入るなり「映画はいかがでしたか?」と観終わった直後の観客に問いかけ、観客の大きな拍手に「映画にとって一番大切なことなので、嬉しいです」と笑顔で応えた。本作の成り立ちについては、「Netflixで『殺人鬼との対談:テッド・バンディの場合』というドキュメンタリー作品が配信されているけど、計画して2本撮ったのではなくて、実はたまたまなんだ」と、偶然同じ題材を違う手法で手がけることになったことを告白。


 さらに「25年前にテッド・バンディを題材にした本を書いた著者から突然連絡があり、『テッド・バンディを取材したときのテープが出てきたから、これを元に何か作品ができないか』と話を持ちかけられたんだ。原作本も持っていたけれど、やり尽くされた題材だから迷ったんだ。でもテープを聞いてみたら、身も凍るような内容で、初めてテッド・バンディ自身の声で彼の事件が語られるのを聞いて、これだったら面白いものが作れるんじゃないかと思ったんだ」とドキュメンタリーを作るきっかけを述べた。


 また、ハリウッドで何らかの制作されず眠ったままの脚本がリスト化されている“ブラックリスト”に本作の脚本が載っている事が判明したエピソードにも触れながら「すぐに映画化したいと手をあげたけど、ブラックリストに入っている作品がすぐに動き出すとは思っていなかったんだ。だけど、主演のザック・エフロンに脚本を送ったら、すぐに出演OKの返事をくれて、彼のおかげで出資も集まり、その後はすべてスムーズに進んで、わずか4週間で制作が正式に決定したんだ。そうして、ふと気づいたら、“テッド・バンディ”を題材に劇映画とドキュメンタリーを手がけることになった」と本作の制作秘話を語った。


 リリー・コリンズ演じる、テッド・バンディの恋人のリズが描いた手記が元になった脚本については、「この脚本に魅力を感じたのは、殺人者が殺人を犯すところを描くのではなく、本性を偽って、普通の人のように生活している事を書いた点。その方がよっぽど恐ろしい行為だと感じたんだ」「多くの人は、殺人を犯してきた凶悪な犯人を“モンスター”だと思いたいけれど、実はそうではなく、そんな事をしなそうな人だったり、自分が信頼を寄せていた人が殺人犯だったりする。つまり、シリアルキラーは、善人の振りをして普通の人たちを欺いたり、誘惑したり、信頼させる能力をもっていて、自分を普通の人間であると思いこませることができるんだ。だから、テッドの一番近くにいたリズの目線から描いた方が、よくある殺人鬼を描く作品より、はるかに恐ろしい作品が作れる、作る意義もあると感じたんだ」と語った。


 町山は、テッドとリズが向き合うラストシーンについて「リズはテッドに恋をして、彼を信じてしまったんですけど、殺人者かもしれないと気づいてからは、無実を信じながら、自分が彼を助けてしまったという罪悪感も感じていて心が揺れますよね。最後にやっとテッドとの決別を決意して、彼に向って『悪いのはあなたで私じゃない、解放して』と言い放ちます。その時は、私もリズと同じ気持ちを感じて、彼女の隣にいるような感覚を覚えました。同じように共感する女性は多いんじゃないかと思わされる場面でした。テッド・バンディを題材にした映画でこんな感情になるのかと本当に驚かされました」とコメントした。 (文=リアルサウンド編集部)


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