「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『ジョン・デロリアン』

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2019年12月06日 20:11  リアルサウンド

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『ジョン・デロリアン』(c)Driven Film Productions 2018

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、マーティに憧れ救命ジャケットもとい、オレンジのダウンベストを買った過去を持つ安田が『ジョン・デロリアン』をプッシュします。


参考:伝説の車“デロリアン”開発者が麻薬に手を染める 『ジョン・デロリアン』予告編&ポスター公開


■『ジョン・デロリアン』
 12月となりました。2019年は年間興行収入の新記録が達成されるかもしれないとニュースが飛び込んできましたが、それほどに映画ファンにとって濃い1年となったのではないでしょうか。


 今年はあと『スター・ウォーズ』を残すのみ、と臨戦体制に入っている方もいるかと思いますが、その大きな影に隠れて12月もまだまだ見応えのある作品が揃っています。そんな作品の一つが『ジョン・デロリアン』です。


 今年シネマコンサートにてオーケストラ演奏のもと上映されたり、来年には閉幕する『午前10時の映画祭』のトリを飾ることで、話題も絶えない不朽の名作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ。その作中で、天才発明家、ドク・ブラウンによって生み出されたタイムマシーンの素体となったデロリアン。本作では、その車の開発者であるジョン・デロリアンというエンジニアを描く実話に基づく物語です。


 ジョン・デロリアンは、車のエンジニアとして大成功を納めゼネラルモーターズの副社長まで上り詰めた男で、理想の車を作りたいと自ら会社を立ち上げます。お金持ちで高級住宅街でプール付きの大きな豪邸に住み、奥さんは綺麗で、金曜日には豪勢なパーティを開催し、その上夢を追い続けるという誰もが憧れるかっこいいアメリカ人として描かれます。そんなかっこいい男が、麻薬スキャンダルで逮捕され、凋落していくというのが本作の大まかなストーリーです。


 しかし実は、この映画なんとジョン・デロリアンが主人公ではないんです。映画は彼の豪邸のご近所さんで、後々ジョン・デロリアンと友達になっていくジム・ホフマンという男の第一人称で進んでいきます。


 このジムという男がなかなかの小物でして、最高です。ジョン・デロリアンは成功した男として描かれる一方、ジムは序盤から麻薬の密輸現場を押さえられ、罪を不問にする代わりにFBIの情報提供者として国から住まいを与えられ、借り物の富豪ライフを送る、というなんとも情けない男です。しかし、彼自身もただの小物ではありません。FBIの情報提供者という事実を、家族にも秘密にし嘘を重ねていきます。その上麻薬商売に関わる友人はおっかないし、二重生活のストレスに押しつぶされそうになりながらも、様々な人たちに振り回されていきます。


 そんな成功しながらも夢を追う男と、家族を守るために嘘と虚栄を重ね続ける男が仲良くなっていき、麻薬犯罪という大きなピリオドへと進んでいく本作。まるで『ブレイキング・バッド』のような良質なバディ関係を、刹那垣間見ることができるのです。本来であればデロリアンの視点で彼の成功と凋落を描きそうなものですが、この第三者の視点を挟むことでデロリアンという男の破滅が、複雑に絡み合った事象として浮き彫りになっていきます。


 80年代の雰囲気を感じさせるプエルトリコの風景や、アメリカ車のきらびやかな雰囲気を見ているとなんとも心が明るくなりますし、正義が勝ったり、人情が人を救うといった極端なハッピーエンドを見せないのもなんとも魅力的です。トゥルーエンドな結末が心にストンと来る一作として楽しんでいただけるかと思います。(リアルサウンド編集部)


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