『グランメゾン東京』の“チーム最年少” 芹田公一の姿と重なる、寛一郎の柔軟性

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2019年12月07日 09:21  リアルサウンド

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『グランメゾン東京』(c)TBS

 グルメ界でのシェフたちの奮闘を描くドラマ『グランメゾン東京』(TBS系)にて、その動向から目が離せない若者を演じている寛一郎。彼が演じる芹田公一というキャラクターは、その情熱や素質に期待はかけられているものの、新人として、まだまだこれからといった存在だ。彼のこのポジション、俳優業を開始してまだ間もない寛一郎本人と重なるところがあるように思える。


【写真】坊主姿の寛一郎


『グランメゾン東京』で寛一郎の存在を知ったという方も多いことだろう。それもそのはず。これまでにもドラマ作品にはたびたび顔を見せていた彼だが、ゴールデン帯の連続ドラマにレギュラー出演するのは今作が初めてなのだ。しかし、彼に早くから注目していた方々にとっては、このごろメキメキと頭角を現してきている若手俳優の一人に挙げられる存在だといえるはずである。


 寛一郎が公の場に姿を見せはじめたのは2017年のことだが、この年に彼は『心が叫びたがってるんだ。』(以下、『ここさけ』)、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(以下、『ナミヤ』)と、注目度の高い2作品でメインキャストの一人を務め、新人ながら見事にその任を果たした。前者はヒットしたアニメ映画の実写化であり、後者は東野圭吾による同名小説が原作の感動作。となればとうぜん、作品自体への注目のみならず、出演する俳優たちにも熱い視線は集中することになる。どちらも若者たちが物語の中核をなす作品で、まだ20代前半の寛一郎にとって、役を競い合う相手は数多くいたはずだ。


 『ここさけ』には中島健人、芳根京子、石井杏奈らがキャストに名を連ね、『ナミヤ』には山田涼介、村上虹郎らの名が並んでいる。ここに完全なる新人の寛一郎の名が並んでいるのはやはり驚きだ。しかし、実際に作品を観てみると、その根拠は明らか。劇中での彼の役者としての佇まいは、じつに堂々たるものであった。両作とも群像劇の体を取っているとあって、彼は“共同作業”、“チームプレー”が上手いのかもしれない。


 そういった役者として以前の素質はもちろんだが、寛一郎はこの2作の前に、瀬々敬久監督による渾身の一作『菊とギロチン』(2018)にメインキャストの一人として参加している。公開されたのは昨年のことだが、撮影は『ここさけ』『ナミヤ』よりも前だったのだ。若手からベテランまで数多くの俳優が参加した本作は、大手制作会社から離れた、いわゆる自主制作映画でありながら、スタッフにも名だたる映画人が顔を揃えている。


 とはいえ、自主映画となれば潤沢な予算はないはず。ここで必要とされるのが、“共同作業”や“チームプレー”に対する意識のあり方なのではないか。撮影当時の現場が過酷なものであったことは想像に難くないが、寛一郎は初演技ながら先輩俳優たちを相手に渡り合っている。もちろん、それが実現できたのは、キャスト・スタッフら先人の方々の支えがあってのことなのだろう。ここに彼の“チームプレー”の上手さの原点を見出すことができる。これは今作『グランメゾン東京』でも同じこと。キャリアの違う俳優たちの中に最年少の寛一郎は柔軟に溶け込み、レストラン「グランメゾン東京」という“チーム”を築き上げているのだ。


 佐藤浩市を父に持ち、三國連太郎を祖父に持つ寛一郎なだけあって、将来を嘱望されてやまないところだろう。今作のようにお茶の間でその顔を広めつつ、今年は『チワワちゃん』を皮切りに、彼の出演映画が続けて公開されている。いずれも比較的規模の大きくはない映画ではあるが、着実に役者としての心得を身につけているのではないだろうか。このあたりが、寛一郎と芹田公一というキャラクターが重なるゆえんであり、期待してしまう理由である。


(折田侑駿)


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