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鳥栖が戦術変更で敗戦もギリ残留。金監督「クラブは変わっていくべき」

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2019年12月08日 13:52  webスポルティーバ

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「とにかく、(J1に)残れてよかった」

 取材エリアに出てきたサガン鳥栖の選手たちは、一様に安堵の表情でそう吐き出した。降格を回避する。残留だけが、そのゲームの目標だった。彼らはその使命を果たせたわけだが――。

 サガン鳥栖がギリギリで残留できたのは、僥倖(ぎょうこう)だったのか?

 12月7日、IAIスタジアム日本平。14位の鳥栖は残留をかけ、15位の清水エスパルスの本拠地に乗り込んでいる。16位の湘南ベルマーレが松本山雅に勝利した場合、当地の敗者は16位に転落し、J1昇格プレーオフにまわる。鳥栖は引き分け以上で自力残留を決められるが、引き分けを狙うのは実は難しい。

 そこで鳥栖の金明輝監督は、決戦前に選手たちにこう告げている。

「今までのやり方を捨てる」

 鳥栖は丁寧にサイドでポジション的優位を作って攻め崩し、バランスよく守る戦術を深めてきたが、この日は内容を問わず、勝ち点を拾いにいった。トップには、高さと強さのある豊田陽平、スピード豊かな金森健志、右サイドには献身的な福田晃斗、サイドバックには運動能力が高い金井貢史を起用。ボールをつなぐリスクは減らし、単純に長いボールで押し込み、自陣に近づけない戦術を選択した。

 序盤、鳥栖はペースを握る。前線で豊田が起点となって、巧みにファウルを誘い、そのFKでゴールを狙う。豊田がGKの鼻先で合わせたヘディングシュートは際どかった。

 ただ、徐々に鳥栖は押し返されるようになる。ボールの収まりどころがない。タメを作れないことで、攻撃が単調になった。

 とりわけ、左サイドで攻撃を引っ張るはずのスペイン人アタッカー、イサック・クエンカが空転した。ボールが足につかない。ディフェンスも淡白で、心ここにあらず。簡単にラインを越えられてしまい、清水の右サイドバック、エウシーニョの独壇場となった。

 そして鳥栖は左サイドから崩れ始める。中盤の小野裕二、原川力がそのカバーに追われることによって、全体で悪循環が起こった。

「かなりキツかったですね」

小野は心情を込めて言った。相手を陣内に引き入れてしまい、清水の強力なブラジル人アタッカー、ドウグラスとジュニオール・ドゥトラの2人を抑えきれなくなる。

「(戦いのプランとして)勝ちにこだわりすぎてしまったかもしれません」

 金監督は試合後に説明している。

「それで選手たちのよさが半減した。そこは自分の責任。前回(前節のコンサドーレ札幌戦)から、チームのやりたいことと選手のストロングを考慮し、”生かしきれていない”という反省がありました。そこで(今日は)わかりやすく入ったつもりでしたが、清水の中盤が思った以上にアップダウンし、そこで後手を踏むことに。もっとボールを(左右に)振って、流れを作ろうと考えていましたが……」

 68分だった。清水は中盤に君臨していた六平光成から、右サイドへボールが出る。流れたドウグラスがこれを収めると、ディフェンスと1対1に。鋭いフェイントで逆を取ると、左足で巻き込むようなボールを狙い撃ちにした。

 1−0とリードした清水はこの後、ドゥトラを下げて立田悠悟を投入。ディフェンスの枚数を増強し、逃げ切りにかじを切った。

「長いボールに対する準備で、(立田を)入れました。5−4−1のようになると押し込まれるので、5−3−2のようにして前から2人に追ってもらって。サイドも簡単にクロスを上げさせず、よくやってくれたと思います」(清水・篠田善之監督)

 終盤、鳥栖は金崎夢生、チアゴ・アウベスというFWを次々に投入。さらに、高橋祐治、金井も前線に上げた。なりふり構わず、パワープレーを選択したが、清水の牙城を崩せなかった。

 終了直前、リードしていた湘南が松本に追いつかれる。これで清水も鳥栖も、あっけなく残留が決定した。敗れた鳥栖は湘南と勝ち点で並ぶも、得失点差で2点上回り、どうにか救われた。

「最後は決めたかったですね」

 消耗戦を戦い終えた豊田は吐露した。終了間際、左サイドからのクロスをヘディングで合わせたが、わずかに左へ逸れた。

「この試合は、勝つのみ、と思っていたので、気持ち悪さは残ります。でも、やっぱり残れてよかった。最終戦までもつれさせてしまい、難しい展開になるとは思っていました。今日はロングボールを入れて、自分のストロングを生かす戦い方だったので、結果を出したかったですが……」

 精神的に切迫した戦いだった。無念と安心と高揚を、どこかで持て余していた。

「開幕10試合はナシ。そう考えると、(順位も)真ん中くらいですかね!」

 豊田はそう言って、小さな笑みを洩らした。

 今シーズンの鳥栖は序盤、Jリーグ史上ワーストの部類に入ると言ってもいいルイス・カレーラス監督体制での躓(つまず)きがあった。選手が目に見えて下手になるほどの体たらくで、1勝1分け8敗と、何の希望も見えなかった。

 後任を任された金監督は、「選手のよさを生かす」という戦い方を志向。相手のやり方を研究し尽くし、練習で落とし込み、相手を凌駕できるようになった。フェルナンド・トーレスのようなスーパースターも先発から外すことで、正当な競争も取り戻した。

 その結果、得失点差でのギリギリの残留につながったのだ。

 スクランブルで挑んだ最終戦は、敗れた。綻びも明らかだった。しかし巻き返した戦いで、救われたとも言える。

「残留したからいいわけではありません。(来季に向けて)クラブは変わっていかないと」

 金監督の言葉である。

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