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村上春樹が猫から学んだ「人生をしのぐための術」とは?

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2019年12月08日 16:00  AERA dot.

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写真延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞
延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞
 TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回は猫好きの村上春樹について。

【写真】パネルディスカッションに登壇した川上未映子さん

*  *  *
 村上春樹さん原作・蜷川幸雄さん演出の舞台『海辺のカフカ』は2012年初演以来7年間にわたってロンドン、シンガポール、ソウル、ニューヨーク、今年2月のパリと世界各都市を回ってきたが、これが見納めなのかと切なくなった。21年早稲田大学に創設される村上春樹ライブラリー第1回シンポジウム第一部の演劇パートでこの『海辺のカフカ』の舞台映像と猫の場面が再現された(11月28日、井深大記念ホール)。

 春樹さんが通った演劇博物館を眺めながら銀杏の落ち葉を踏みしめて会場へ。この博物館同様、村上ライブラリーも大学の宝物になるのだと思いつつ。

 黒猫のオオツカさんと、木場勝己さん演じるナカタさんが舞台に登場し、猫と人間の会話が始まる。君には影が半分ないと猫に言われたナカタさんは自分の影を探す旅に出る。舞台後のアフタートークで、天気についての猫とのやりとりがニューヨークとパリで受けたと木場さんは語り、僕には思い出というものがない、それは言葉がないからというシーンが忘れられないとも。最近春樹さんはジョギング中に3匹の猫と知り合い、ちょっとした挨拶を交わしているそうだ。だから猫との会話は春樹さんには特に不思議なことではないのかもしれない。春樹さんは学生時代、猫と一緒に寝て冬の寒さをしのいだと言っているし、経営していたジャズバーの名前は「ピーターキャット」。『ねじまき鳥クロニクル』『1Q84』にも猫が登場し、新潮社のサイト「村上さんのところ」では「『知らん振り』『照れ隠し』『開き直り』。みんなうちの猫たちから学びました。だいたいこれで人生をしのいでいます」とコメントしている。

 第二部は「村上春樹と『翻訳』」と題されたパネルディスカッションだった。アメリカ文学研究者の柴田元幸さんを司会に、作家の川上未映子さん、UCLA准教授マイケル・エメリックさん、早大准教授で作家・翻訳家の辛島デイヴィッドさんが登壇した。春樹さんとの対談集『みみずくは黄昏に飛びたつ』(新潮文庫)を出したばかりの川上さんは春樹さんの文章を朗読し、文章技術、情景描写、情報のまとめ方、10代の自意識、不安、時代の描き方が素晴らしく、省略と堆積がせめぎ合いながら大きな終焉に向かっていく村上作品は「誰も真似のできない最大のレベルにある」と語った。「僕は村上世代に帰属しています」と言うエメリックさんは、50の言語で翻訳されている村上作品について、インドネシアではセックスシーンがない『ノルウェイの森』が読まれていることを例に、「いろんな世界でそれぞれ全く違う読み方で読まれている。みんな違うのに村上春樹の文学。それが強さであり、素晴らしいところだ」と話した。「世界文学をどんな風に定義しようとも、村上春樹さんは世界文学です」

 猫の話に戻ろう。獣医の知り合いによると、猫はいたずらを仕掛けたり、人によって態度を変えるのだそうだ。春樹さんの番組『村上RADIO』には日々リスナーからメールが来るが、先日はこんな質問が。「1日だけ猫になれるとしたら、何猫になって、何をしたいですか?」。さて、この答えは? それは今月の15日夜7時からの「村上RADIO〜冬の炉端で村上SONGS〜」で!

※週刊朝日  2019年12月13日号

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