Netflix、YouTubeが失速? Apple、ディズニー参戦で新時代迎える“動画ストリーミング戦争”の裏側

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2019年12月09日 07:11  リアルサウンド

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 NetflixとYouTubeは長年、動画ストリーミングを牽引する存在だったが、2020年には業界の風向きが変わるかもしれない。


(参考:Netflix『13の理由』自殺シーン削除の理由 制作サイドのコメントも


 メディアの消費動向を調査するeMarketerは最新のレポートで、NetflixとYouTubeはアメリカで視聴時間の市場シェアを今後数年で失っていくだろうという予測を発表した。


 アメリカの動画ストリーミング市場では現在、動画消費の形式で、生放送のテレビや映画館よりもサブスクリプション型の動画ストリーミングが人気を集め、契約を結ぶスタジオやクリエイター、巨額の投資や広告もどんどん流れ込んできている。


 その中でも視聴総時間をプラットフォーム別に見ると、1位はNetflixである。2位にYouTubeが続いているが、2018年にNetflixに抜かれている。だが、eMarketerは2020年から、この2大プラットフォームでの動画消費も変わるだろうと予測する。


 eMakrketerはアメリカ人の毎日の動画試聴時間をそれぞれプラットフォーム別で比較して数値化している。このデータによれば、Netflixは2019年には27%だったが、2020年には26.4%、2021年には25.7%と年々減少すると予測している。YouTubeのシェアも減少傾向で、2019年では23.4%だったが、2020年は22.4%、2021年には21.7%まで減る見込みだ。


 では、NetflixとYouTubeは、一体何に視聴時間を奪われるのだろうか。大きな理由は、動画ストリーミング同士での競争が熾烈を極め、視聴時間の奪い合いが激化するからだ。


 アメリカの動画ストリーミング市場を見渡すと、大手企業同士の競争は年々過熱している。サブスクリプション型ビデオ・オンデマンドの動画ストリーミングでは、前述のNetflixに加えて「Amazon Prime Video」や「Hulu」が成功を収めているが、後発サービスも参入している。2019年には新たなサービスとして「Apple TV+」やディズニーの「Disney+」が始まった。なおアメリカでのHuluは、日本での日テレ子会社のHuluとは異なる会社で、現在はディズニーが親会社となっている。


参考:Netflix、バブル終了で転換期へ? “ストリーミング戦争時代”にいかにメガヒットを生み出すか|Real Sound|リアルサウンド 映画部


 2020年にはワーナーメディアが運営する「HBO Max」がスタート。オリジナル映画やドラマに加えて、ワーナーの傘下であるHBOの作品である『ゲーム・オブ・スローンズ』や、ライセンス契約する日本のスタジオジブリ作品など、人気コンテンツを配信できるため幅広い層への展開を視野に入れている。またメディア企業大手のNBCUniversalも「ピーコック」をローンチする。さらにモバイル・ビデオ専門の「Quibi」(クイビ)も4月に開始予定だ。


 ここで言及されたサービスはいずれもオリジナルのドラマや映画、ドキュメンタリー、リアリティ番組の制作に注力するのが、一つの特徴だ。予算も潤沢に用意し、出演者や製作陣も世界の映像業界で評価の高いクリエイターを揃える場合もあれば、社会問題も扱うストーリー性や独創性に富むクオリティある作品を作るために、無名に近いクリエイターや映画業界やテレビ界で実績の少ないスタジオと連携するなど、オリジナル作品の作り方も多種多様に拡張してきた。こうした制作舞台の裏側には、どのサービスで会員数を伸ばすかだけでなく、いかに視聴時間を費やしてもらうかに注力する経営陣の戦略があり、そのためのオリジナルコンテンツの制作や、長期的に需要ある番組の権利獲得を強化しているのだ。


参考:Netflix、『ゲーム・オブ・スローンズ』のクリエーターと200億円超の大型契約|Real Sound|リアルサウンド テック


 さらに競争を活性化させているのが、サービスの月額料金だ。Apple TV+は月額600円(アメリカでは4.99ドル)だ。Disney+は6.99ドルと、これまで一般的だとされてきた価格帯よりも大幅な値下げした価格で勝負。Netflixはアメリカでは現在、8.99ドル、12.99ドル、15.99ドルの価格で提供している。


 アップルはまた、Apple TV+をApple Musicなどとパッケージにしたバンドル戦略を本格化すると噂されている。ディズニーはすでにDisney+とHulu、ESPN+のバンドルを12.99ドルで提供し始めた。バンドルとは少し異なるが、アマゾンはプライム会員向けにさまざまなサービスの組み合わせや価格帯を豊富に揃えた選択肢を提供することで、成功を収めてきたことはすでに誰もが知るところだ。今後アメリカや海外市場では、会員獲得に向けて価格競争、バンドル販売が一つの焦点になっていくと予想される。日本ではこうしたバンドルはまだ定着していないが、先日NTTドコモとアマゾンジャパンがアマゾン・プライムを無料で提供する発表を行ったばかりで、国内での主要ストリーミング企業の展開が注目される。


参考:アマゾンプライム1年間無料 ドコモ 利用者向けに | NHKニュース


 一方で興味深いことに、NetflixもYouTubeも平均試聴時間は伸びていくとの見通しだ。Netflixは2019年の29分から2020年には30分、YouTubeは23分から24分と、一日でプラットフォームに接触する時間が増え続けるとされている。


 これはアメリカ人のデジタル・コンテンツ消費が動画にシフトしている現状と関係する。2020年にはアメリカ人の動画消費時間が一日108分まで増えると予想され、過去数年と比較しても、2019年から8%、2018年からはなんと20%も伸びているのだ。


 NetflixのCEOリード・ヘイスティングスは11月、ニューヨーク・タイムズが主催したカンファレンスに登場し「会員数ではストリーミング戦争を勝ち抜けない」と述べ、視聴時間こそが競争を測る本当のベンチマークだと強調した。この発言の裏側には勿論、Netflixやウォール街の投資家対策が含まれるが、NetflixやYouTube2強だった時代が過ぎさろうとし、新たなストリーミング戦争に突入していることに間違いない。ヒット作をめぐるコンテンツやクリエイターのネームバリューとコンテンツ製作費、視聴時間と新規会員の加入の関係性は2020年代でまた見直されていくだろう。


参考:Netflix CEO Reed Hastings: Subscriber numbers are not that important


(ジェイ・コウガミ)


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