新田真剣佑、二世俳優から抜きん出た存在に 『同期のサクラ』で両立するスター性と職人気質な一面

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2019年12月11日 06:01  リアルサウンド

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新田真剣佑『同期のサクラ』(c)日本テレビ

 奥田瑛二を父に持つ安藤サクラや、故・角替和枝と柄本明を両親に持つ柄本佑、父に三浦友和を持つ三浦貴大などの“二世俳優”たちが現在の映画界の一翼を担っているが、彼らに続く存在の一人に新田真剣佑がいる。彼が日本を代表する映画スター・千葉真一の息子であることは広く知られているところだが、放送中の『同期のサクラ』(日本テレビ系)での新田が演じる役どころも、“有力者”を父に持つ若者だ。


 『同期のサクラ』で新田が演じているのは、高級官僚の父と兄を持つ木島葵。彼は勉強にしろスポーツにしろ、兄より劣っていることをコンプレックスに感じていたが、花村建設に入社し、同期の北野サクラ(高畑充希)や仲間たちとの関係を育んでいく中で、この呪縛から解放された。フレッシャーズ時代、入社早々に「社長になる!」と『ONE PIECE』のルフィよろしく声高に叫んでいたが、これも父や兄に認められたい一心から出ていた言葉。今は地に足をつけて一つひとつの仕事にあたっているようである。


【写真】『ちはやふる』出演当時の新田真剣佑


 冒頭で述べたように、新田は“あの千葉真一”の息子だが、彼が父親の存在をどのように捉えているのかは実際のところ知りようがない。尊敬や、あるいは畏怖の念があり、仮にそれを彼自身がどこかで語っていたとしても、真実は本人の中にしかないはずである。もちろん、筆者だけでなく多くの映画ファンが、“千葉真一の息子”などという重責には耐えられないだろう……。これは千葉が日本のみならず、世界的な大スターだということもある。それほどまでに千葉真一とは、超大で強大な存在なのだ。


 こうして見ると、木島葵というキャラクターと新田の置かれている環境は似ているように思えるが、もはや新田に“千葉真一の息子”という肩書きは無用だろう。というより、今作での好演以前に、もっと前から無用である。


 アメリカで生まれ育った新田は、ハリウッドで俳優としてのキャリアをスタートさせたが、のちに活動拠点を日本へ移行。彼の認知度が急激に高まったのは、やはり『ちはやふる』シリーズ(2016-2018)での好演だ。新田が演じたのは、他の登場人物と比べてみると、どちらかと言えばキャラクター性の乏しい素朴な人物であった。同作で主演を務めた広瀬すずの“白目をむく”といったものや、矢本悠馬の“終始ハイテンション”のような、表面的な演技アプローチが彼には許されていなかったのである。これは「青春映画」とあって、彼の演じた綿谷新も例外ではなく、心の内に葛藤を抱えている若者であった。新田は物腰柔らかな佇まいを保ちながら、視線や声の調子といった細部に感情を乗せ、自身が器用な演技者であることを表明したのである。


 少女マンガ原作の恋愛モノ『ピーチガール』(2017)、少年マンガ原作のアクション映画『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(2017)、ハリウッド大作『パシフィック・リム:アップライジング』(2018)、若き天才ドライバーに扮した『OVER DRIVE』(2018)、期待の若手俳優が勢揃いしたミステリー『十二人の死にたい子どもたち』(2019)と、新田の出演作を並べてみたときにくっきりと浮かび上がってくる彼の強みは、作品ごとに演技アプローチを使い分けるその巧さだろう。


 陰のある役どころのシリアスな演技から、ピュアな恋心、はたまた硬派な無頼漢まで、演じられる役の幅の広さはもちろんのこと、作品テーマ、ジャンル、テレビや映画といった媒体の違い、新田は適宜それらに合わせた演技アプローチを図っている。彼は俳優なのだからこれは当然のことではあるが、どうしても演じる“その人自身”から離れられない者が多いのもまた事実だ。むろん、演技者自身の魅力や主張を軸に役を演じ功を奏する場合もある。しかし新田の場合は、生まれ持ったスター性を放ちながら、職人的なものも感じさせるのだ。これは今作『同期のサクラ』でも実践され、発揮されている。木島葵という一人の人物のある長い期間を演じるうえで、彼はその人間の時間による“変化”と、そして同時に“変わらなさ”を体現しているのだ。端的に見て取れるのは、やはり発声の仕方の微妙な違いなどである。


 これまで、脇でありながらも物語を駆動させるような主要ポジションを演じてきた新田真剣佑だが、今後は彼が中心に立つ主演作の公開も控えている。先に述べた『パシフィック・リム』での彼の出番の少なさに肩透かしを食らったという声も多く上がったが、あれはまだ序章に過ぎない。彼と同世代の二世の俳優は、村上虹郎、寛一郎、福地桃子らなど優れた者たちがいるが、新田のように若くして貫禄のようなものさえ感じさせる存在はまだいないだろう。すでにそうなのだが、これからますます映画界の中核を担う存在となっていくことは間違いない。


(折田侑駿)


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