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日本人宇宙飛行士全12人のリアル体験談を総力取材! 宇宙で得たものは神秘体験? 日常の延長?

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2019年12月11日 06:41  ダ・ヴィンチニュース

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ダ・ヴィンチニュース

写真『宇宙から帰ってきた日本人』(稲泉連/文藝春秋)
『宇宙から帰ってきた日本人』(稲泉連/文藝春秋)

 今年7月、直径約130メートルの小惑星が地球から約7万2000キロメートル(東京とニューヨーク約3.5往復分の距離)のところを通過したが、天文学者も数日前までその接近に気づかなかったというニュースがあった。また、「宇宙の膨張するスピードは従来思われていたよりも9%速い」というニュースもあった。スマホや検索エンジンを使って何でも知った気になってしまいがちな私たちだが、自分たちが生きている宇宙の成り立ちの大部分は未解明だ。
 
 そんな謎だらけの宇宙空間を舞台に仕事をする宇宙飛行士たちは、どんな人生観を持っているのだろうか。歴代の「日本人宇宙飛行士12人全員」に取材を行った『宇宙から帰ってきた日本人』(稲泉連/文藝春秋)は、2005年に『ぼくもいくさに征くのだけれど 竹内浩三の詩と死』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した作家である著者の洞察が、飛行士たちの語る声と絶妙にブレンドされた1冊だ。

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■宇宙から帰ってきて感じた新鮮な「地球らしさ」

 著者は飛行士たちに宇宙体験についてインタビューしつつ、「地球らしさとは何か」についても探っていく。多くの飛行士たちは「宇宙空間から戻ったあと、地球の生活に慣れるのは早い」と語る。宇宙から戻った直後は感覚が鋭敏で、ハッチをあけた瞬間のにおいから「地球らしさ」を感じることもあるそうだ。日本人初の女性宇宙飛行士・向井千秋氏は、帰還した直後に地球の重力について感じたことをこのように語っている。

“自分の体も重いし、紙だって重い。それに周囲の風景そのものがどこか不思議なんです。まず机の上にものが置いてあるのが不思議で、一枚の紙が机にチューイングガムか何かでくっついているように見える。”

 美術館に陳列された静物画を眺めるような視線で、机の上に物が置いてあるというごく当たり前のことに改めて向き合う機会は、めまぐるしい現代社会において非常に稀だ。風が吹くと草木がなびく不思議、とめどなく波が押し寄せては返す不思議、四季が移り変わる不思議…飛行士たちの言葉は「自分の見ている世界が、世界の全てではない」と改めて思わせ、読者の価値観をアップデートする機会を与えてくれる。

 そんな宇宙飛行士たちを取り巻く環境は大きく変化している。米ソ冷戦時代の宇宙開発競争の頃と現在では、まったく違う環境やプレッシャーのもとで飛行士たちは宇宙に行くのだという。油井亀美也氏、大西卓哉氏とともに「新世代宇宙飛行士」と呼ばれている金井宣茂氏は「宇宙で何をしてきたかが問われる時代」とその現状を表現している。

“より厳しい言葉で言えば、『宇宙に行って遊んでいるんじゃないの』という声さえあるなかで、何のために六か月間も宇宙ステーションにいるのかという問いに、きちんと答えられるよう訓練をしてきた。そうした時代や社会環境の違いが、私たちの宇宙飛行士観や宇宙に対する考え方の違いになって表れている気がします。”

 意外なことに、彼にとって宇宙に行くということは、それ自体が人生を激変させるような経験ではなかったという。実際のところ、現代の技術によって宇宙空間からSNSを更新できるし、家族との電話もしばしばできる。ただ、宇宙体験は間違いなく「宿題」のような形で自分に何かしらの問題意識を強く植え付け、5年・10年というスパンでジワジワとその意義が増してくるそうだ。

 こうしたことを知ると、読者は勇気づけられるかもしれない。なぜならば、宇宙に行かない私たちにとっても、「5年・10年たってジワジワと意味がわかってくる」というような体験は往々にして起こり得るからだ。

 そういう意味では、飛行士たちの宇宙体験は手が届かない圧倒的な非日常ではなく、あくまで地球上の生活の延長線上にあるのかもしれない。遠いと感じていた宇宙の世界にいくらか親近感を感じていただけただろうか? 残りの未知なる広い世界については、実際に本書を手にとって、飛行士たちのリアルな言葉から感じていただければと思う。

文=神保慶政

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