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免疫記憶をリセットして体に悪影響も! 東京五輪までに急務の麻疹対策

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2019年12月11日 07:00  AERA dot.

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写真森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表
森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表
 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は、自身も1児の母である森田麻里子医師が、「五輪前に済ませたい麻疹対策」について「医見」します。

*  *  *
 産まれたばかりの赤ちゃんは、さまざまな病気に対しての自分の免疫をまだ持っていません。ワクチンで予防できる重大な病気、例えば麻疹(はしか)などについても、予防接種を打てるようになるまでは、おなかの中でママからもらった免疫で病気と闘うことになります。

 麻疹は肺炎や中耳炎、脳炎といった合併症を引き起こし、先進国でも1000人に1人が亡くなる非常に怖い病気です。感染力が強く、空気感染するため、いくらマスクや手洗いをしっかりしていたとしても、感染した人と同じ空間にいただけでうつってしまいます。

 しかし、ママからもらった麻疹の免疫はかなり早いうちになくなってしまうことが、カナダの研究で明らかになりました。

 この研究では、0歳の赤ちゃん196人の血液中の麻しん抗体を調べたところ、生後1カ月になるまでの赤ちゃんでも20%が基準値以下で、生後3カ月までには92%の赤ちゃんで基準値以下となっていました。そして生後6カ月には、調べた赤ちゃんの全員で、抗体は基準値に達しませんでした(※1)。

 麻疹の予防接種は1歳から公費で打つことができますが、生後3〜6カ月から1歳になるまでの赤ちゃんは、ほとんどが麻疹に対して丸腰の状態だということです。

 さらに、11月にハーバード大学から発表された研究によると、麻疹は体の免疫の記憶をリセットしてしまうという恐ろしい悪影響もあることがわかりました。

 人間の体は、ウイルスに感染するとその形を記憶していて、次に同じウイルスが侵入してきたときにすぐさま戦えるような仕組みが備わっています。麻疹ウイルスはこのような記憶を保持する免疫細胞に感染し、これまでの免疫の記憶を消してしまうというのです。

 この研究では、ワクチンを打っていない子どもたちの中で、麻疹に感染した77人と感染しなかった5人について、感染前と感染後2カ月の血液を調べました。すると、麻疹の感染後は、平均20%程度の抗体が減少していて、特に16%の子どもたちでは40%の抗体を失っていました(※2)。

 麻疹にかかった直後は肺炎などさまざまな合併症を起こしたり、またその後数年間の死亡率が上昇したりするというデータもありますが、このようなことが起こるのは、麻疹が免疫の記憶をリセットしてしまうことが影響しているのかもしれません。

 日本では10年ほど前に10〜20代の若者を中心に麻疹の流行がありましたが、その後追加の予防接種の勧奨などにより、2015年にはWHO(世界保健機関)により麻疹の排除状態にあることが認定されています。しかし、海外から輸入された麻疹の例は毎週報告されている状態で、来年の東京オリンピック開催時期には、多数の麻疹が発生することが危惧されています。

 実際、エボラ出血熱の流行が記憶に新しいコンゴでは、実は麻疹の流行が広がっています。今年に入ってからの麻疹の死亡者数はエボラ出血熱での死亡者数の2倍を超え、5000人を上回ったという報道もありました。

 アメリカの幼稚園や学校は医学的な理由がない限り入園・入学前にワクチンを接種することが法律で定められていますが、宗教的理由や個人的理由によるワクチン免除を認めている州もあります。しかし、そのような理由で未接種者が増えたことによる流行も起きており、例えば4月にはニューヨーク市ブルックリン地区で、ユダヤ教正統派の子どもの間で麻疹が流行しました。

 ワクチン未接種のまま、麻疹の流行するイスラエルを訪れて感染し、それがアメリカに持ち込まれたのです。数百人の子どもと大人が感染し、入院したり、集中治療室にはいったりしたケースも報告されたため、ニューヨーク市では緊急でワクチン接種を義務付け、従わない場合1000ドルの罰金を科しました。そしてニューヨーク州では、宗教的理由によるワクチン免除は取り消されることとなりました。

 日本では入園や入学に際してそのような条件はないことが多いですが、ワクチンをまだ打てない赤ちゃんや病気等でワクチンを打てない人たちを守るためには、ご家族や、周りにいるできるだけ多くの人がワクチンを接種することが大切です。

 麻疹の十分な免疫をつけるには、2回のワクチン接種が必要です。2000年度生まれの人からは2度の定期接種になっていますが、それ以上の年齢の方で自然感染をしておらず、これまで2回の接種を受けていない方は、ワクチン接種を検討していただきたいと思います。

 現在40〜47歳の男性については、本年度は風しんの対策で無料クーポンが届いていると思います。風しんの抗体検査で抗体価が低ければ、無料で麻疹対策にもなる麻しん風しん混合ワクチンを接種することができます。無料クーポンの利用率は10月時点で15%前後にとどまっていますが、ぜひこの機会を利用してご自身や周りの方々を守っていただきたいと思います。

(※1)Science M, Savage R, Severini A, McLachlan E, Hughes SL, Arnold C, et al. Measles Antibody Levels in Young Infants. Pediatrics. 2019.

(※2)Mina MJ, Kula T, Leng Y, Li M, de Vries RD, Knip M, et al. Measles virus infection diminishes preexisting antibodies that offer protection from other pathogens. Science. 2019;366(6465):599−606.

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