ホーム > mixiニュース > ライフスタイル > 「不治の病」だった宮川花子の多発性骨髄腫 最新治療で完治も期待できる病気に

「不治の病」だった宮川花子の多発性骨髄腫 最新治療で完治も期待できる病気に

4

2019年12月11日 17:10  AERA dot.

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真宮川花子さん (c)朝日新聞社
宮川花子さん (c)朝日新聞社
 6月から休演が続いていた夫婦漫才コンビ「宮川大助・花子」の宮川花子さん(65)が11日、大阪市内で会見し、「多発性骨髄腫」で闘病中であることを公表した。車いすに乗って会見に臨んだ花子さんは、復帰について「まだ想像がつかない」としながらも、「いつお迎えが来ても幸せだけど、大助を見送るまで生きておこうと思う」と話した。

【グラフ】多発性骨髄腫の患者数

 花子さんは、昨年3月に背中に腫瘍が発見されてから放射線治療を受けていたが、今年1月に悪化。抗がん剤による化学療法をすすめられた。しかし、副作用をおそれて化学療法を約5カ月放置したところ、両足のしびれや形状変化を発症する危険な状態になって、救急搬送された。

 多発性骨髄腫は血液がんの一種で、従来「余命3年、不治の病」と言われていた。だが、近年は薬の開発によって生存年数が飛躍的に延びている。花子さんも救急搬送された後に受けた化学療法で効果が出て回復し、会見を決意したという。

 進歩した多発性骨髄腫の治療とは、どのようなものなのか。週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療 2017』から紹介する。

*  *  *
 1973年に放送された、田宮二郎主演のテレビドラマ「白い影」を覚えているだろうか。2001年には中居正広主演で放送された。田宮演じる医師・直江庸介が侵された病気こそ、多発性骨髄腫だ。

 多発性骨髄腫は、白血球の仲間の形質細胞ががん化する病気だ。血液がんの中では3番目に多い。60代以上で発症することが多く、患者数は10万人に5人だが、年々微増傾向にある。

 骨髄には、血液を造り免疫をつかさどる機能がある。がん化した形質細胞(骨髄腫細胞)があふれる骨髄では、正常な血液が造れない。また、骨髄腫細胞が作り出す異常なたんぱく「Mタンパク」は、高カルシウム血症、腎機能障害、貧血、骨の痛みや骨粗しょう症などの症状を引き起こす。病名の頭文字をとって「CRAB(クラブ)症状」と呼ばれている。

 原因は放射線の影響や殺虫剤、ダイオキシンなどの化学物質の影響が関連するとの説もあるが、明らかなことはわかっていない。

 日本赤十字社医療センター骨髄腫アミロイドーシスセンター長の鈴木憲史医師はこう語る。

「高齢の患者さんは、骨折をきっかけに見つかることもあります。背中や腰の痛みに加えて腎機能の低下や貧血があると骨髄腫を疑いますが、50代以下の若い患者さんの場合には特に痛みがなく、血液検査で見つかることが多いです」

■初期治療に使える薬が相次ぎ発売

 多発性骨髄腫の治療はこれまで、抗がん剤とステロイド薬を併用する「MP療法」と、造血幹細胞移植が中心だった。だが、近年は大きく変わってきた。都立駒込病院血液内科部長の大橋一輝医師は言う。

「MP療法の時代は、患者さんの余命は3年程度であり、治療は延命を目指したものでした。それが00年以降、新薬の登場によって生存率を示すデータが劇的に上昇しました」

 06年に、骨髄腫細胞をピンポイントで狙いその増殖を抑える「分子標的薬」のボルテゾミブが登場。その後、かつて妊婦への薬害を起こしたサリドマイドが、多発性骨髄腫に効果があるものとして09年に再発売された。加えて、サリドマイドの進化版といえるレナリドミドが10年に発売され、この三つは「新三薬」と呼ばれた。以来、患者の余命は7〜10年と大きく延びてきている。

 さらに15年には、ポマリドミド、パノビノスタットなど、それまでとは違うメカニズムでがんを抑える新薬が発売された。病気の初期の治療に使えるよう認められていたのは、「新三薬」以降はボルテゾミブだけだったが、15年末にはレナリドミドも加わった。

「レナリドミドを初期治療に使えるようになったので、今後は『VRD療法』を初期から実施できるようになります」(鈴木医師)

 VRD療法とは、レナリドミドを含めた3種の薬を併用して治療するもの。米国では初期の治療に効果を上げていたが、日本では再発や治療の難しい患者にのみおこなわれていた。

「米国では最新の薬を3剤併用して集中的に治療することで、2〜3割の患者さんの完治が期待できるようになりました。日本でも今後は延命ではなく、完治が治療の目標になっていくと考えられます」(同)

 16年は、ボルテゾミブの効果を強めた分子標的薬、カルフィルゾミブが発売された。さらに17年にはボルテゾミブの飲み薬版となるイキサゾミブも登場する予定だ。その後も、現在臨床試験中の新しい分子標的薬や、抗体医療と呼ばれる薬など続々と発売されるとみられる。

 ところで、65歳以下の患者の標準的な治療は、薬物療法の後に造血幹細胞移植をするという流れだ。65歳という年齢は必ずしも厳密なものではなく、患者の体力や体調によって上下する。

 移植といってもさまざまな種類があるが、現在、多発性骨髄腫の治療でおこなわれるのは主に自家末梢血管細胞移植(自家移植)だ。大量の抗がん剤で自分の骨髄ごとがんをたたき、その後、あらかじめとっておいた自分の骨髄細胞を移植して骨髄の復活を助ける治療である。

 大橋医師は言う。

「自家移植は比較的安全な治療法です。当院では、多発性骨髄腫の患者さんを対象に年間約10件の自家移植をおこなっていますが、治療中の死亡は一例もありません」

■国際的な基準変更で病気の診断も変化

 だが、薬物治療の発達によって、造血幹細胞移植の位置づけが変わりつつある。米仏共同の研究によると、がんが安定した状態を示す「無増悪生存期間」は、薬物療法のみよりも、それに加えて移植を受けた人たちのほうが長かったが、生存期間にはほぼ差がないという結果も出ている。

 鈴木医師は「移植は2次的な治療になった」と言う。

「自家移植は4週間ほどの入院が必要な上、脱毛など生活上の影響も大きい治療です。一度採取した造血幹細胞は5〜10年間の保存がきくので、当院では薬物療法を主体とし、病気が進行したら移植を検討します」(鈴木医師)

 埼玉県在住の桑野五郎さん(仮名・63歳・会社役員)は、腰痛がひどくなり近くのクリニックを受診。血液検査で異常が見られたため、都立駒込病院を紹介された。骨髄穿刺で骨髄を採取し染色体を調べると、桑野さんには17番の遺伝子に異常があった。大橋医師は、最も進行した病期IIIで、より悪化しやすいタイプと診断。ボルテゾミブと、ステロイド薬デキサメタゾンを併用する治療を提案した。

 病期は従来、痛みを引き起こす物質のβ(ベータ)2ミクログロブリンとアルブミンが、血液中にどのくらいあるかで判定されていたが、15年に国際的な診断基準が変更された。いくつかの染色体異常があることも、病気を決定する要素に加えられた。

「染色体の17番、14番、4番など特定の遺伝子が欠けていたり異常があったりすれば、悪化しやすいタイプと考えられます。そういう方には、通院の頻度が多くてもより効果の高い注射薬を使うよう提案します。それ以外の患者さんであれば、既存の抗がん剤にサリドマイドを加えた治療も検討します」(大橋医師)

 いずれの治療法でも、最も大切なことは、いかに骨髄腫細胞の数を減らすかだ。一時は病状が改善しても、骨髄腫細胞が残っていては再発の可能性が高い。最近開発された「微小残存病変(MRD)検出法」は、患者の正常な形質細胞と骨髄腫細胞とを画像処理で見分けるものだ。100万個の形質細胞をチェックすると、微量の骨髄腫細胞の数を正確に把握できる。

「薬を使った後、MRD検出法で定期的に調べることにより、効果を評価しながら的確な治療が進められるようになります」(鈴木医師)

 多発性骨髄腫の治療は“延命”から“完治”への希望が持てるものになった。ただ、現時点で染色体検査やMRD検出法が受けられるのは先進的な治療をおこなう大病院に限られた側面があり、加えてほかにも課題がある。

「多くの薬のベストな組み合わせ方はまだ確立していませんし、高齢の患者さんに安全な用法もデータが足りていません。薬物療法が確立されるまでには、もうしばらく時間が必要です」(大橋医師)

 また、医療費についての懸念もある。たとえばポマリドミドの場合、1カプセルが6万円と高額だ。

「保険制度上、すべての患者さんに集中砲火型の治療をすることは認められなくなる可能性があります。治療技術は進みましたが、医療経済とどう折り合いをつけていくかも、これからの課題です」(同)

(文・中保裕子)

※『週刊朝日MOOK 新「名医」の最新治療 2017』から抜粋

【取材協力(肩書は取材時)】
日本赤十字社医療センター
骨髄腫アミロイドーシスセンター長
鈴木憲史医師

都立駒込病院
血液内科部長
大橋一輝医師

このニュースに関するつぶやき

  • 化学療法が5か月遅れたことで病状が進行して余命も短くなってしまったであろうことは残念。話芸で楽しまる芸人がいなくなってる中、また元気な漫才を見せてほしいな。
    • イイネ!0
    • コメント 0件
  • 医療の進歩は凄いな。
    • イイネ!1
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(3件)

あなたにおすすめ

ランキングライフスタイル

前日のランキングへ

ニュース設定