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31歳で現役引退。ドラ1・大石達也はなぜプロで羽ばたけなかったのか

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2019年12月12日 06:22  webスポルティーバ

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西武・大石達也インタビュー@前編

 日本シリーズ終了から1カ月が経過した11月下旬――。

 ライオンズトレーニングセンターの室内練習場のブルペンで育成捕手の中熊大智は、次々と投げ込まれる荒れ球を捕るのに四苦八苦していた。ボールはホームベースの前でワンバウンドしたかと思えば、今度は高めのボールゾーンに吹き抜けていく。

 対して、マウンドのだいぶ前から投げ込む大石達也は、人懐っこい笑みを浮かべていた。わざと暴れ球を投げ続けたのは、それが求められた仕事だからだ。

「ファーム育成グループスタッフという役職をいただけました。現時点の立場としては、育成の子が将来的に一軍で活躍できるようにサポートしたいと思っています」

 2019年シーズン終了とともに、大石はライオンズのユニフォームを脱いだ。2010年に6球団からドラフト1位指名を受けた大卒右腕は、9年間で132試合に登板して5勝6敗8セーブ、12ホールド、防御率3.64と期待に応えることはできなかった。

「プロに入る前にイメージしていた自分と、かけ離れていました」

 戦力外通告を受けた日、大石は報道陣にそう語っている。

「一番は投げるスピードですよね。大学時代は150キロを普通に投げられていたのが、プロに入ったら全然で、1年目なんて130キロ前半しか出ないですし。大学の時は投げてパッと顔を上げたらキャッチャーが捕っていたけど、プロに入ったら顔を上げてもまだずーっと球がキャッチャーのところへ行っているという感じでした」

 鳴り物入りで入団した黄金ルーキーは、1年目の4月に右肩を故障した。医師には「たいしたことない」と診断されたが、グラウンドでボールを投げると右肩の内部に痛みが走る。セカンドオピニオンを求めて病院を回るたび、「肩はきれい」と4度も5度も言われ続けた。

「どうしようもなくて、ごまかしながら投げるのがずっと続きました。ケガして、『しょうがない。それも僕の野球人生だ』と思って。『痛い』と思ったら痛く感じると思って、『痛くない』と思ってずっとやっていました。だから(キャリア)後半はキャッチボールの時点で『痛っ』と思っても、『大丈夫』と思いながら投げていたら、あまり気にならなくなるという感じでしたね」

 現役生活に終止符を打った2019年10月はゆっくり過ごし、11月から本拠地の所沢で秋季キャンプを手伝った。現役時代の盟友・武隈祥太とライオンズトレーニングセンターでキャッチボールを行なうと、ボールが届かないほど右肩に痛みを覚えた。

「痛すぎて全然投げられませんでした。別にケガしてもいいやと思って投げていたら、3週間目くらいから普通に投げられるようになりましたけどね」

 プロ野球選手は誰しも、身体のどこかに痛みを抱えているものだ。大石も例外ではなかった。

「そういうもんなんじゃないですかね(苦笑)。一軍で出ている人は、そのなかでも高いレベルでパフォーマンスを発揮できているけど、僕はそれができなかったということだと思います」

 現役時代に取材している頃、大石は自身を客観的に語ることがよくあった。

 大学時代に最速155キロを記録したものの、プロで10キロ以上遅くなったことをある意味で割り切り、今できるパフォーマンスで結果を求めていく。全盛期のような力を発揮できない自分を受け入れざるを得ないのは、峠を過ぎたアスリートが現役を続行するかぎり、当たり前のことなのかもしれない。

 だからだろうか、少し前まで「金の卵」と騒がれた男は、達観しているように感じられた。

 今から9年前、「豊作」と言われた2010年のドラフトには、早稲田大の斎藤佑樹(日本ハム)や福井優也(広島)、中央大の澤村拓一(巨人)、佛教大の大野雄大(中日)らが候補に名を連ねるなか、最多の6球団に1位指名されたのが大石だった。

 早稲田大学入学時にショートだった頃から3年半で、「世代ナンバーワン投手」の評価を受けるまでに成長できたのはなぜか。そして、プロで大きく羽ばたけなかった理由はどこにあるのだろうか。

 その謎を解き明かせるのは、大石本人にほかならない。

「早稲田で斎藤に出会っていなければ、僕がそのままプロに行けたかはわからないです」

 アマチュア時代の大石を成長させたのは、何より出会いと環境だった。

 福岡大大濠高校時代に2年秋からエースだった大石は、遊撃手としてのポテンシャルを買われて早大野球部に誘われた。だが入学後、すぐに右指をケガする。「ピッチャーと一緒にランニングをしておけ」。首脳陣からそう指示をされたなかで、大きな刺激を受けたのが斎藤と福井だった。

 春季リーグ開幕前のオープン戦。ネット裏でスピードガンを持つ大石の前で、福井は150キロのストレートで三振の山を築いた。1年浪人して入学した福井の真っすぐには、「えげつない」ほどのキレがあった。

 対して同い年の斎藤は、真っすぐが速く、変化球はストライクゾーンへの出し入れが巧みだった。捕手と積極的にコミュニケーションをとりながら、配球について自分の考えを伝えていく。

「すげえわ、やっぱり」

 ふたりのピッチングから投手への思いが再びこみ上げてきた大石は、彼らの背中を追いかけ始めた。

 福井の「えげつない」真っすぐは、マネできるような代物ではなかった。一方、斎藤の変化球を参考にした。

「ツーシームとかいろいろ教えてもらったんですけど、回転するだけで(軌道的には)真っすぐが行ったりとか。合わないと思ってから、スパッとやめて自分なりにやっていました」

 器用にスライダーやツーシームを操る斎藤と、変化球をまったく投げられない自分はタイプが違う。ならば、同じことをしていてはダメだ。

 そう考えた大石は、ストレートのレベルアップを追い求めた。

「まず真っすぐを鍛えて、バッターの反応が遅れて差し込まれるような球を投げようと思いました。そこから握りやリリースの微妙な角度をキャッチボールのなかで試して、どれが一番きれいなスピンで行くかをやりながら、『これかな』と見つかりました。そうやって投げるようになってから徐々にスピードも上がって、空振りも取れるようになりました」

 当時の早大野球部には、投手コーチが存在しなかった。自分で考えながら試行錯誤したことで、大石の潜在能力は呼び覚まされていく。

 1年春の新人戦で146キロを記録すると、秋のリーグ戦では151キロを計測。1年生にしてリーグ戦初勝利を記録すると、リリーフとして欠かせない戦力になった。秋の大学日本一を決める明治神宮大会では決勝で登板している。

 以降、大石はリリーフエースの道を邁進した。2学年上の須田幸太(元DeNA)、1学年上の松下健太(元西武)、同学年の斎藤、福井のつくった試合を締めくくる役割を担った。

 常にリーグ優勝を狙う早稲田にとって、質の高いストレートを投げる大石は抑えにうってつけだった。しかも、チームには優秀な先発陣がそろっている。

 ただし、長い目で考えると、大石自身の特性、そして早稲田特有の環境はネガティブに働いた。

 当時、大石は課題を自覚していた。変化球のレベルアップだ。

 大学レベルであれば真っすぐ一本で抑えられるが、さらなる向上には、投球の幅を広げることが不可欠になる。公式戦でリリーフ登板の機会があると、あえて変化球を投げ込んだ。だが、思うようにストライクを取れない。

「変化球はいいから、真っすぐで行け」

 ベンチの應武篤良監督から、力勝負を命じる声が飛んだ。そのほうが抑えられる確率が高いからだ。

 東京六大学リーグは、同じ相手と土日月に組まれた3試合のうち2勝すれば勝ち点が取れ、「一戦必勝」の要素が強い。とりわけ、大石が登板するのはリードした試合後半が多く、指揮官は個人の課題を解消させるより、チームの勝利を何より求めた。

 それは、勝利至上主義では当たり前かもしれない。だが、大石には後悔が残っている。

「あそこで変化球をもうちょっとやっておけばなと、今思えば、思いますね」

 大学ナンバーワン投手として最高評価を受けたものの、プロの壁を乗り越えられなかったからだ。

 もし、アマチュアで変化球をもう少し磨いていれば、プロに入ってストレートの球速が落ちた時、活路を見出せたかもしれない。大石自身はそうした「たら・れば」を口にしないが、大学時代、自分の可能性をもっと広げられたはずだという自覚はある。

「ひとつの目標を達成してそこで止まったら、成長はありません。そこに達したら、さらに新たな目標設定をしていかないと、レベルは上がらないと思います。僕の場合、『変化球、いいや』となっちゃったので。若い子たちには、『もっと高いレベルで目標設定しよう』と言いたいですね」

 現役生活を終えた今になって大学時代を思い出すのは、過去への悔いからではない。西武のファーム育成グループスタッフとして”若獅子”を育て上げるという、未来への使命があるからだ。

(後編へつづく)

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  • 早大三人衆で最も評価の高かった大石が最初に去り、最も評価の低かった福井が最も結果を出すと言うんだから、わからんもんやね。
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