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「ハイエンドに集中する方針は間違っていない」 ASUSに聞く「ROG Phone II」の秘密とSIMフリー戦略

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2019年12月12日 12:13  ITmedia Mobile

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写真ASUSのゲーミングスマホ「ROG Phone II」
ASUSのゲーミングスマホ「ROG Phone II」

 2019年から、ハイエンドモデルに注力する戦略にシフトしたASUS。ミドルレンジ以下のモデルを大幅に減らしつつも、フリップカメラを搭載した「ZenFone 6」は、その機構の独自性の高さが注目を集めた。インタビューでお話をうかがった「ROG Phone II」も、“ASUSらしさ”がいかんなく発揮された端末だ。



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 同モデルは、ゲーミングスマートフォンの1つで、2018年11月に発売された「ROG Phone」の後継機。突出したパフォーマンスの高さはもちろん、ゲームを快適にプレイするための機能や拡張性の高さが魅力の端末だ。本体を横に持ったときにキーのように使える「エアトリガー」や、ゲームに合わせて端末のパフォーマンスを引き出す「Armoury Crate」など、独自性の高い機能を搭載。ゲーミングPCのROGシリーズで培ったノウハウも、生かされているという。



 初代ROG Phoneの反響は日本でも大きく、中国、台湾に次ぐ売れ行きを記録した。後継機が投入されたのも、自然な流れといえる。ROG Phone IIは価格も抑えたうえに、ストレージが1TBの上位バージョンも用意。eスポーツ市場の拡大に後押しされる形で、販売を強化していく。そんなROG Phone IIにかける意気込みを、ASUS JAPANに聞いた。



 インタビューに答えたのはシステムビジネス事業部 プロダクトマネージャーのレイレン・リー氏、同部 テクニカルプロダクトマネージャーの阿部直人氏と、システムプロダクトマーケティング マーケティングスペシャリストの新島瑠美子氏の3人。



●初代ROG Phone、日本は世界3位の売れ行きだった



―― 昨年のROG Phoneからちょうど1年たってROG Phone IIの投入になりました。まずは、この1年をどう総括しているのかを教えてください。



リー氏 振り返ってみると、ゲーミングスマホを市場に投入したのは、去年が初めてのことでした。いろいろな情報の資料をかき集めて、市場を読もうとしていたことを覚えています。結果として11万9500円(税別※発売時)という値付けになりましたが、それで本当に市場で受け入られるのかは分かりませんでした。しかしながら、ふたを開けてみれば、ワールドワイドで3番目、中国、台湾に次いで3位の販売台数という結果を残すことができました。



―― それがIIの投入にもつながったわけですね。



リー氏 そうなります。eスポーツは昨年からが黎明(れいめい)期だと思っていますが、ASUSはその扉を開けていきたい。そこにもう1つ、インパクトのある製品を投入したいと思っていました。



新島氏 ROG Phoneは、実際にゲーマーの方に届いていました。発売直後にはコアなゲーマーの方に買っていただき、その後は、高負荷なゲームをやられる方だけでなく、通信が一瞬でも切れると勝敗に関わるようなゲームをやられる方にも、徐々に広がっていきました。初代が出たのは(eスポーツが)盛り上がり始めの時期でしたが、その間にもどんどん市場が成長しています。



●世界のスマホでも珍しい1TBストレージを搭載した理由



―― ROG Phone IIでは、どのような点が強化されているのでしょうか。改めて特徴を教えてください。



阿部氏 基本的なコンセプト自体は、背面のデザインを見ていただければ分かるように、ほぼ変わっていません。高スペックだったROG Phoneを、さらにブラッシュアップした端末で、例えばCPUはSnapdragon 845だったのがSnapdragon 855 Plusになっています。Snapdragon 855 Plusを搭載したモデルを出しているのは、国内においては現状、ASUSだけです。ベンチマークで見ても20%から30%ほど上で、Antutu Benchmarkでも50万点を超えています。



 メインメモリも、初代は8GBでしたが、ROG Phone IIは12GBで、現行モデルとしては最高峰です。これだけあれば、なかなかメモリが埋まることはないのではないでしょうか。ストレージは今回、2つのSKUを用意していて、512GBと1TBモデルがあります。512GBは先代と同じですが、スマートフォンなのに1TBというところが注目を集めています。



リー氏 PC担当の人間からも、たまに「こっちの方がスペックが……」と言われることがあります(笑)



阿部氏 据え置きでも、下手なPCよりもスペックが高いですね(笑)。ちなみに、自分が把握している限りだと、1TBのストレージを搭載したスマホは、世界に3機種しかありません。1つがGalaxy S10+、もう1つが中国のSmartisanの端末で、それとROG Phone IIの3機種です。日本においてはROG Phone IIが初めてですが、そういったところでも、かなりパワーアップしているのがお分かりになると思います。



 ディスプレイ性能も前回はリフレッシュレートが90Hzでしたが、今回は120Hzと非常に高いパフォーマンスになっています。90Hzのスマホも徐々に出てきてはいますが、120Hzとなると、他にはあまりないと思います。



 パワーユーザー向けに、「これでもか」とスペックを推しているだけでなく、弊社のPCのROGシリーズに積んでいた「Game Genie」も搭載されています。ROGはノート、デスクトップともに出していてシェアも取っていますが、そういったユーザーからのフィードバックを受け、ソフトウェアも改良されました。



―― ゲームだけで言うと、そこまで大容量なストレージがいるのかという疑問もありますが、なぜ1TBモデルも用意したのでしょうか。



阿部氏 ROG Phone IIはゲーミングスマホというジャンルではありますが、ディスプレイ性能がいいので、それ以外のことにもかなり便利に使っていただけると思います。Netflix、Prime Video、YouTubeなどの動画を見てもいいですし、HDRコンテンツの再生にも対応しています。ゲームだけでなく、動画配信のコンテンツも、最上位の画質で見ることができますが、そういったものを視聴するときにも大容量が役に立つと思います。



―― ZenFone 6と共通しているところも多いので、確かにゲームだけではなく、普段使いもできますね。



リー氏 カメラに関しても、ZenFone 6と同じセンサーを搭載しています。



阿部氏 フリップ式ではないのでインカメラは違いますが、アウトカメラのハードウェアはZenFone 6と同じです。



新島氏 ちなみに、1TB版は海外だと「ULTIMATE Edition」と呼ばれていて、カラーも512GB版とは違っています。



―― SKUを増やせたのは、やはりユーザーが広がっているからということでしょうか。



リー氏 最初から同時に2つで発売したいと思っていました。一方で、初代ROG Phoneと同じ512GB版は、(初代比較で)1万4000円程度、価格は下がっています。1TBに関しても、6000円高いだけで、今回は価格面でもインパクトを残せたと思います。



●ノッチありきのデザインはどうなのか



―― 先ほどソフトウェアのお話がありましたが、前回はGame Centerだったのが、今回はArmoury Crateに変わっています。この理由を教えていただけないでしょうか。



阿部氏 Armoury Crateは、デスクトップなどに入っている統合環境で、それがROG Phone IIに入ってきた形です。ですから変更したというより、初代がむしろ異質で、IIでほかのROGシリーズと同じになったという言い方が正しいと思います。先代のGame Centerより、かなり複雑なこともできるようになりました。



 誰がやるのかというのはありますが(笑)、カーネルレベルでのチューニングもできます。ハードコアチューニングというモードがあり、ここを開くと、CPUの細かなパラーメーターを自由に変更できます。1つ1つは、調べないと私自身もどういう効果があるのかが分からないのですが(笑)。あまりいじりすぎるとマズイことになるので、分かっている人向けですね。ここまでやっているゲーミングスマホは見たことがなく、私も初めて見たときは笑ってしまいました。その意味では、ROGで培ったノウハウを元に、本当にコアな人に向けたスマホと言えます。



―― 初代からですが、ROG Phone IIにもノッチがありません。これは、やはりゲームの表示を重視したということでしょうか。



リー氏 今年の方針はいかにノッチをなくしていくかで、フリップカメラを搭載したZenFone 6も、まさにそうでした。今回、初めて台北の本社から、事前に「これはどうか?」「こっちはどう?」といった打診がありましたが、そのとき、本社側には「ノッチありきのデザインはどうなのか」という意見を返しています。その話だけで決まったわけではないと思いますが、結果としてノッチのないディスプレイが採用されました。



―― エアトリガーの機能も強化されています。



阿部氏 初代ではタップしかできませんでしたが、IIはβ版として、片方だけ有効にするや、スライド操作ができるようになっています。画面の縦スライドを割り当てることもでき、スライドの長さも調整できます。この機能は、音ゲーで使われるのではないでしょうか。速い曲で、長いスライドのあるようなときに有利になるかもしれません。



●ゲーム機と比べれば重くない



―― スペックは充実していますが、重量感もありますね。



阿部 240gです。バッテリーが大きくなったというのはありますが、ゲームが動くハイスペックなマシンと思うと、それほど重くはないのではないでしょうか。例えば、「PlayStation 4」のコントローラーは210gで、「Xbox one」は265gと、ROG Phone IIより重くなります。「Nintendo 3DS LL」は329gで、「2DS」でも260gです。モニターがついたハイスペックなゲーム機と比べても、重くないことがお分かりいただけるのではないでしょうか。



―― なるほど。ゲーム機として捉えれば確かにそうかもしれません。ところで、中国ではスペックを落としたTencentモデルが販売され、大ヒットしたとうかがっています。こういったプラットフォーマーとの取り組みは、日本でも検討されているのでしょうか。



リー氏 似たようなやり方は、ぜひ検討したいと考えています。



阿部氏 ただし、あのモデルは省けるところを相当省いていて、通信部分も中国の環境に最適化されているので、そのまま出すというのは難しいと思います。



―― ゲームメーカーやeスポーツの大会、チームとの連携は何かお考えでしょうか。



新島氏 オフラインでの大会には端末をお貸ししていますが、正式なスポンサーシップのようなものは、まだありません。その部分はこれからになりますが、前向きに取り組んでいければと考えています。eスポーツのプレイヤーにもモバイルゲーミングのチームがありますが、その選手に使っていただいたり、後々スポンサーになったりすることも検討しています。



●ミドルレンジやローエンドだけでは経営が成り立たない



―― 日本では、他のハイエンドモデルを出すメーカーも、ゲーミングを売りにし始めています。Black Sharkも参入しましたが、そういったところとはどう差別化していくのでしょうか。



リー氏 先ほど申し上げたように、昨年からゲーミングスマホの黎明期で、われわれはそこに合わせてROG Phoneを投入しました。各社がそういった商品を投入してくるのも想定内です。競合のスマホも、この市場を一緒に盛り上げてくれるので、それはそれでいいことだと思っています。ROG Phoneは競合にはない個性もあるので、差別化もできていると思います。



阿部氏 われわれはPCメーカーなので、そのノウハウを生かしながらスマホに展開できるのが、他社との大きな違いです。先ほどお話ししたソフトウェアのカスタマイズもそうで、PC側からのフィードバックを受けてできるようになったこともあります。



―― 今年はZenFone 6、ROG Phone IIと出してきましたが、本社側の方針転換もあり、ミドルレンジモデルが手薄だった印象もあります。1年を振り返ってみて、いかがでしたでしょうか。



リー氏 昨年のこの時期に方針転換が発表されましたが、この1年はまさにその方針にのっとってやってきました。まだ結果がどうとは言える段階ではありませんが、方向性は間違っていないと思っています。むしろ、スマホメーカー各社が同じように、単価の安いゾーンから抜け出そうとしているようにも見えます。ハイエンドはハイエンドで新たな競争もありますが、いい方向に進んでいると思います。



―― 一方で、日本のSIMフリー市場ではシェアが高かっただけに、少々もったいない印象もあります。



リー氏 ハイエンドに集中するという方針が決まったときから、シェアだけでなく、収益性や生産性とのバランスを取る方針です。



阿部氏 結局のところ、利益率の低いミドルレンジやローエンドだけを売っていても、会社としては成り立ちません。赤字を出さずに健全な経営をするには、ハイエンドの数をある程度出していかなければなりません。シェアは大事ですが、そればかりを追って利益を確保できなければ意味がないですからね。



リー氏 価格もそうですが、フリップカメラやROG Phoneのような個性のある製品を出せているのも大きいですね。こういったことは、われわれが得意とするところです。



●取材を終えて:“逆張り”の戦略でどこまで戦えるか



 ハイエンドモデルの性能が上がり、スマートフォン各社が“ゲーミング”を売りにする一方で、ROG Phone IIのように突き抜けた個性は出せていない。もともとゲーミングPCを展開してきたASUSは、この分野でブランド力も高く、差別化は十分図れているように見える。日本にはゲームメーカーも多いため、プロモーションなどで協力できれば、さらに存在感を高めることができそうだ。



 ただ、キャリアも含めてミドルレンジモデルを拡充している中、ハイエンドに注力するASUSの戦略は、ある意味“逆張り”といえる。SIMロックフリースマートフォンのボリュームゾーンがミドルレンジであることを踏まえると、今までのようなシェアを維持するのは難しくなりそうだ。ASUSとは状況が異なるが、トップシェアのHuaweiも、米国の制裁が解除されず、新規の端末を出しづらい状況が続いている。結果として、SIMロックフリースマートフォン市場での競争の構図が、大きく変わってしまうことになるかもしれない。


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