L’Arc〜en〜Cielの「#ラルク解_」、遊び心溢れる一連の流れを振り返る

0

2019年12月12日 14:42  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

L’Arc~en~Ciel『HONEY』

 2019年12月1日、「L’Arc〜en〜Cielからの大切なお知らせ」として突如現れた「ラルク解◯」の画像。発表されるやいなや、SNS上では◯の穴埋め予測合戦が繰り広げられ、「#ラルク解_」がたちまちTwitterトレンドに。


(関連:L’Arc〜en〜Ciel「HONEY」Music Clip


 謎が明かされたのは、12月3日8時から9時50分の間、フジテレビ系列の番組合間のCM。その全容は、L’Arc〜en〜Cielの公式YouTubeチャンネル開設及び、「HONEY」「花葬」「浸食 -lose control-」3曲同時MV解禁であった。


 そのセリフと共に映像が流れ始めた瞬間、ピンと来たファンも多かったのではないだろうか。なぜかといえば、この映像は1998年「HONEY」「花葬」「浸食 -lose control-」が3枚同時で発売された時のCMのリメイク版だったからである。ちなみに当時の立てこもり犯のセリフは、「3曲同時に持ってこい!」ではなく「3枚同時に持ってこい!」であった。


 ここで、今回公開されたMV3曲についておさらいしておこう。


 「HONEY」は歴代のシングルの中でトップセールスを記録している代表曲のうちのひとつ。メンバーが円を作るように中心を向きながら演奏し、アングルがグルグルと回転する様は、楽曲の爽快さともマッチし、格好良さを際立たせている。時折現れる全裸の白人美女が蜜(=HONEY)のようなものを体に絡ませる妖艶なシーンも印象的だ。


 「花葬」は、古い洋館のような場所での演奏シーンを中心に展開される、ミステリアスな1曲。黒いスーツ姿のメンバーが時にスタイリッシュに、時に妖艶に映る。生死をテーマにした、歌詞にもメロディにも中毒性のあるナンバーとなっている。


 「浸食 -lose control-」は、サビに変拍子を大々的に用いた、L’Arc〜en〜Cielの中でも特異な曲だ。MVでは明度が低いシーンが続く。演奏が静かな場面においても、激しい場面においても、制御不可能な狂気に満ち、ある種ホラー映画のような映像展開となっている。


 ちなみに、TVで放送されたリメイク版のCMもYouTubeで公開されており、CMの後ろには「L’Arc〜en〜Ciel関連の情報は、12月11日に詳しくお伝えします。もうしばらくお待ちください」と伝える別のCMも追加されている。


 これもまた、1999年に放送されたCMのリメイク版である。当時の日付は「4月2日」で、BGMは「HEAVEN’S DRIVE」のメロディを基調としたインストゥルメンタルバージョンであった。そして、1999年4月2日当時、記者会見風のCMで確定情報として公開されたのは、シングル『HEAVEN’S DRIVE』の発売及び、アルバム『ark』『ray』の2枚同時発売であった。また、「バンドの正式名称は『ラルク・アン・シェル』ではなく『ラルク・アン・シエル』」と大真面目な雰囲気で周知するバージョンのCMまで作られた。バンド名を間違えられるというマイナスポイントを、笑いに変えてしまう彼らの遊び心を感じずにはいられないCMだ。


 あれから約20年の時を経ても、単なる宣伝をするだけではなく、いかに話題性をあげるか、そしていかにファン以外の人にも分かりやすく見せることができるか、それも遊び心を存分に添えて。彼らが心がけていることはいつの時も不変なのではないだろうか。


 なお、本稿で紹介した過去のCMはMV集『CHRONICLE』に収録されている。MV集というよりは、シュールなしりとり映像の合間にMVが挟まれている、と言ってしまった方が、ある意味正しくこの映像作品を言い表せているといっても過言ではないのだが、気になった方はこの機会にぜひチェックしていただきたい。


 そして12月11日に公開されたのは全曲・全MVのサブスクリプション解禁、YouTubeチャンネルでの一部MV公開、ライブ映像の7日間連続プレミア公開であった。ちなみに、プレミア公開につけられたタイトル「YouTube Seven days 2019」は、2003年に国立代々木競技場第一体育館にて7日間開催されたライブ『Shibuya Seven days 2003』をもじったものであることは明白だ。


 サブスクリプション解禁のポイントとしては、メジャーデビュー以降の全曲が配信されているということ。インディーズ時代にリリースされた『DUNE』は2004年に発売された『DUNE 10th Anniversary Edition』を以っての解禁となった。シングルについては、表題曲だけでなく、カップリングやインストゥルメンタルバージョンも含め公開されている。そのため、『the Fourth Avenue Cafe』に収録されている「D’ARK〜EN〜CIEL」や、2005年以降のシングルに度々収録されていた「P’UNK〜EN〜CIEL」の楽曲といった、メンバーによるパートチェンジバンドの楽曲も聴くことができる。公開する楽曲に限りがあるアーティストもいる中で、今回の解禁からはL’Arc〜en〜Cielらしい潔さとリスナーに対する真心を感じることができる。


 さて、来年から始まるツアー『L’Arc〜en〜Ciel ARENA TOUR MMXX』を直前に控えたこのタイミングで全楽曲がサブスクリプション解禁されたということは、どの曲がツアーで披露されてもおかしくないぞ、というL’Arc〜en〜Cielからの宣戦布告ともとれるのではないだろうか。そう考えると、来年にさらなる期待をせずにはいられない。(白乃神奈)


    ニュース設定