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巨人には行きません! 球界の盟主を「振った男たち」列伝

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2019年12月14日 16:00  AERA dot.

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写真中村紀洋も巨人を“振った”選手の一人だった (C)朝日新聞社
中村紀洋も巨人を“振った”選手の一人だった (C)朝日新聞社
 今オフのFA戦線で、巨人は楽天・美馬学、ロッテ・鈴木大地の両獲りに動いたが、美馬はロッテ、鈴木は楽天を選び、まさかの惨敗。美馬の交渉に際しては、原辰徳監督自ら出馬し、ラブコールを送ったにもかかわらず、功を奏さなかった。この事態を「歴史的異変」と報じた媒体もあったが、実は、過去のFA戦線でも“巨人を振った”男たちは存在した。彼らはどのようないきさつと理由から巨人を袖にしたのだろうか?

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 FA制導入後、最初に巨人を振った男は、1997年、3年連続二桁勝利となる13勝6敗、防御率2.99の好成績で“野村ヤクルト”3度目の日本一に貢献した吉井理人である。

 近鉄時代の同僚・野茂英雄の活躍に刺激され、メジャー挑戦を決意した吉井は、同年オフ、球界初の国外移籍を前提とするFA宣言を行う。国内でも巨人、阪神、中日、横浜、西武の5球団が獲得に乗り出し、熾烈な争奪戦となった。

 そんななか、巨人は11月11日の第1回交渉で長嶋茂雄監督自ら出馬した。吉井の自著「投手論」(徳間文庫)によれば、巨人の条件は3年総額12億円。当時年俸9500万円の吉井は「正直心がぐらついた」という。巨人は野球を始めたころから憧れの球団だったが、やはりメジャーへの夢も捨て切れない。

 吉井が迷っていると、長嶋監督は「わかった。それなら私のポケットマネーで1億を払おう」と条件をアップした。計13億円である。憧れの人にそこまで言われたら、心変わりしても不思議はない。内心日本よりレベルが高いメジャーではたして通用するのか?と不安を感じていれば、なおさらだ。

 交渉直後、吉井は「以前は8割方、気持ちはメジャーでしたが、今は半々です」と揺れる胸中を吐露。長嶋監督も「時間はかかるだろうが、最後まで粘り強くいきます」と獲得に自信を深めた様子だった。

 だが、年末に野茂と酒席で語り合ったことが、運命の転機となる。吉井の内心の“ビビり”を見抜いていた野茂は言った。「思いどおりにやったほうが後悔しませんよ」。

 この言葉で再びメジャーへの挑戦心をかき立てられた吉井は、意を決して長嶋監督に断りを入れた。メッツと契約後、メディカルチェックで肘に問題が見つかり、当初6000万円プラス出来高の年俸が2400万円にダウン。13億円との落差はあまりにも大きかったが、99年に12勝を挙げるなど、メジャー3球団で5年プレーし、通算37勝を記録した。

 02年オフ、松井秀喜のメジャー移籍により、代役の4番を探すことになった巨人は、近鉄の主砲で、この年打率2割9分4厘、42本塁打、115打点をマークした中村紀洋に狙いを定める。

「いろいろ野球を経験したほうがプラスになる」とメジャーを含む新天地を求めてFA宣言した中村は、残留を要請する近鉄の6年総額36億円という破格の条件に満足しながらも、「全球団と交渉したうえで結論を出す」と表明した。

 争奪戦には星野仙一監督の阪神も手を挙げ、巨人も「柔軟性があって、守備もダイナミックで繊細。思い切りの良さ、パワーは日本を代表する打者です」(原監督)と、“ポスト松井”の獲得に全力を挙げた。

 だが、渡辺恒雄オーナーがトレードマークの金髪を槍玉に上げ、「巨人に来るなら、髪を黒くしてきてほしい」と要望すると、中村は11月7日の東西対抗戦に金髪オレンジまだらモヒカンという髪型で出場。「自分のスタイルを変えるつもりはない」という意思表示だった。

 その後、渡辺オーナーは「些細なことだ。オレの趣味で球団を経営しているわけじゃない」と譲歩したものの、4年総額30億円を提示した初交渉から4日後の同19日、ヤクルトの主砲・ペタジーニの獲得に成功すると、「ペタが来るんだから、土下座してまでおいで願わなくてもいい」と豹変。この発言に対し、中村が「本当に必要とされているのか?」と巨人側に問い合わせるひと幕も。

 土井誠球団代表は「(ペタジーニ獲得後も)基本的な方針に変わりはない」と交渉継続の姿勢を見せたが、12月にメジャーとの交渉を控えているのに、11月中に返事を求められた中村は納得できず、同27日、「阪神、近鉄は待っていただいている。それだけ高く評価してくれているということ。巨人にはそういう気持ちがなかったということですから」と正式に断りを入れた。

 その後、中村はメッツと契約寸前までいきながら、契約情報の漏洩に不信感を抱いたことから決裂。さらに「中村ブランドにエリートは似合わない」と阪神も断った結果、まさかの「大山鳴動して」近鉄残留となった。

「振った」と言うには若干ニュアンスが異なるが、07年オフにFA宣言した中日・福留孝介もその一人だ。

 子供のころから巨人に憧れていた福留は、11月15日の初交渉で、清武英利球団代表から「福留選手の獲得は、(ドラフト1位の抽選に外れた)1995年以来の球団の悲願。もう一度巡ってきたチャンスだと思っている」と口説かれると、「ありがたいことです」とうれしさをあらわにした。

 だが、不作といわれるメジャーFA市場で「松井秀喜とイチローを足して2で割ったような打者」は10球団前後が獲得に動き、相場も年俸12〜13億円の3、4年契約に高騰。さすがの“金満”巨人も12月10日、「日本の基準からは法外な額に高騰し、チーム内のほかの選手との年俸体系を崩すことになってしまう」(清武代表)と獲得を断念する。最終的に福留は4年総額4800万ドル(約53億円)でカブスと契約し、現在に至るまで巨人のユニホームを着ていない。

 この3人以外にも、糸井嘉男(オリックス−阪神)をはじめ、水面下の交渉で話がまとまらなかったといわれるFA選手が複数存在することを考えると、“巨人を振った男”は意外に多いかもしれない。(注)金額はいずれも推定

(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

このニュースに関するつぶやき

  • 南海に行くはずだった法政の長嶋が巨人へと心変わりした時、同様に声がかかっていた長嶋の同期生・杉浦忠は約束通り南海へ。後に巨人と対した日本シリーズで4連投4連勝、南海を初の日本一へと導く。
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  • 巨人はお金あるんですね。
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