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「五輪で本物の空手を示したい」沖縄出身・喜友名諒の“特別な思い”

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2019年12月14日 17:00  AERA dot.

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写真「アーナンダイ」を演武する喜友名諒 (c)朝日新聞社
「アーナンダイ」を演武する喜友名諒 (c)朝日新聞社
 2020年東京五輪で活躍が期待される選手を紹介する連載「2020の肖像」。第12回は、空手男子・喜友名諒(29)。2020年東京五輪で初採用される空手。日本発祥の武道として、本番でのメダル獲得が期待される。その中心にいるのが男子形で世界選手権を3大会連続制覇し、現在も世界ランキング1位に君臨する喜友名。空手の発祥地である沖縄で生まれ育った、申し子だ。朝日新聞社スポーツ部・竹園隆浩氏が、喜友名の足跡を辿る。

【写真】空手が東京五輪の追加競技に決まり、笑顔の喜友名諒ら選手たち

*  *  *
 今年9月、東京五輪の舞台となる東京・日本武道館で、国際大会「空手1 プレミアリーグ東京大会」が開かれた。そこでも、喜友名の強さは群を抜いていた。

 準決勝まで3試合を危なげなく勝ち抜くと、決勝では新馬場一世(西濃運輸)との日本人対決を制し、今季プレミアリーグ5連勝を達成。「形」では国内外に敵なしのエースの存在感を見せつけた。

 相手がいると「仮想」して、演技を繰り広げる形は、試合ごとに違う演目を披露しないといけない。決勝まで4試合の場合、四つの演目が必要になる。

 大会を通して喜友名は全て沖縄で確立された劉衛流伝統の演目で臨んだ。最後の決勝で選んだのは「オーハンダイ」だった。五輪用に新しくなった点数方式の採点で、30点満点中、大会最高点となる28.38点をたたき出した。これには本人も満足げな表情を浮かべた。

「『こんなふうになるのかな』と来年の五輪をイメージしながら、楽しんで試合に挑みました。たくさんの応援を頂いて、五輪でもいい結果を取りたいなと思った。今は一番の目標が五輪の優勝なので、そこに向けてまずは出場権、それを取ったら優勝。そこに向けてやっている。そこまですべての大会で優勝して、五輪で金メダルを取ります」

 空手の出場権は来年4月の世界空手連盟五輪ランキングなどで決まるが、組手の男女6階級と形の男女の計8種目に開催国枠が与えられている日本は、全種目に選手を送り込むことが決まっている。全日本空手道連盟では、選手の消耗も考え、できるだけ早く代表を決める方針だ。来年1月のプレミアリーグ・パリ大会後の五輪ランキングで日本勢最上位者が2番手に2千ポイント以上の差をつけていれば、代表に選ぶと決めている。喜友名はそこで、問題なく選ばれそうだ。

 喜友名が空手を始めたのは5歳だった。近所の友達が空手を習い始めたので、「自分も」とせがんだのがきっかけという。

 沖縄ではそれが普通の光景だ。

 大きな転機になったのは劉衛流との出会い。中学3年で現在の師である佐久本嗣男氏に師事することになる。佐久本氏は、1984、86、88年と世界選手権の形で3連覇している。沖縄の伝統空手の一つだった劉衛流を世界の中心に押し上げた第一人者だ。

 この流派は、始祖が中国・清朝の武官養成所首席師範だったと伝わり、中国拳法の原理があちらこちらに見られる。例えば、喜友名が得意としている演目の「アーナンダイ」では、「貫手(ぬきて)」と呼ばれる指先を真っすぐ伸ばして相手の急所を突く技が、演武の中に多く取り入れられている。

 加えて特徴的なのが、防御と攻撃を一体化させたジグザグな足の運びだ。

 形の攻撃の場合、正面に出るのが普通の動きだが、まず攻めてきた相手の動きを斜め前に出ながら受けて、そこから間髪入れずに攻撃に転じ、すかさず貫手などの技を出していくわけだ。ひざを柔らかく使い、細かい動きの一つひとつに、意味を込める。

 これらの演目を、喜友名は持ち味の力強さを生かして演じきる。

 佐久本氏に言わせると、それは強靱な身体能力から生まれる。

「あの腕力を見てくださいよ。下半身が強いから、あれだけ上体が振れるわけでしょう。上半身に下半身が負けていない。彼の太ももを見てください。こんな太い。トレーニングしていますよ。見ていてほれぼれする下半身。あれに蹴られたら人はひとたまりもない」

 相手と実際に対戦する組手と違って、形は相手を想定して決められた動きを一人で披露する。それだけに審判員、観客の印象も大事だ。喜友名の海外でのニックネームは「歌舞伎」。彫りの深い顔立ちで、目を見開いて気合を込める姿から、そう呼ばれるそうだ。力強い腕と足、そして眼力。それらがそろって、あの世界最強の迫力ある演武は誕生している。

 それでも、佐久本氏は、

「完成度で言えば、まだ足りないところがある」

 と指摘する。技には、力強さだけでなく、柔らかさ、力を抜くことによって出てくる効力も大いにあるからだ。

「もう少し、技の奥深さを表現できればよいのかな。気持ちがわずかに先にいっているのかな、と思います。懸待一致というんですかね、技と心を一つにかみ合わせながらやれば、もっと味わい深い空手になると思いますね。まだ彼は進化して伸びていくだろうと思います。謙虚ですしね。十分に伸びていくと思います。まだ今は80点ぐらいじゃないですか。あんなもんじゃないですよ。楽しみにしています」

 空手界にとって、五輪はまさに悲願だった。全日本空手道連盟は64年の東京五輪を機に、将来の五輪採用を目指してそれまで個別に活動していた流派がまとまる形で誕生した。現在の世界空手連盟には約200カ国・地域が加盟しているが、過去3度、候補競技として挙がりながら涙をのんできた。今回、ようやく20年東京大会の追加競技として五輪初登場が決まった。世界の空手家にとって待ちに待った好機だ。

 さらに、「空手発祥の地」としてのプライドを持つ日本、特に沖縄出身者には、それこそ特段の意味が加わる。空手は琉球王国時代の沖縄で誕生し、日本本土から世界に広まった。

 沖縄で生まれて、今も沖縄で練習を続ける喜友名が言う。

「僕たちは普段の生活、練習から沖縄の風土を感じている。全てが本物だ。自分たちが空手というスポーツの本家だという強い気持ちがある。それを五輪という最高の舞台で示したい」

 来夏の東京五輪は、喜友名にとって空手家として、出身の沖縄在住者として、自らのアイデンティティーの証明の場でもある。(朝日新聞社スポーツ部・竹園隆浩)

※週刊朝日  2019年12月20日号

このニュースに関するつぶやき

  • 指先や拳を肥大化&サツマイモみたいな色になるまで徹底的に鍛えてる空手家って、今の時代居ないのかな?
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  • 日本発祥だから金メダル欲しいですね。
    • イイネ!15
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