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クリスマスは両手いっぱいに!? 「プレゼント」と「二足歩行」の意外な関係

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2019年12月15日 17:00  AERA dot.

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写真プレゼントが二足歩行に関係する報告も(写真/gettyimages)
プレゼントが二足歩行に関係する報告も(写真/gettyimages)
『戦国武将を診る』などの著書をもつ日本大学医学部・早川智教授は、歴史上の偉人たちがどのような病気を抱え、それによってどのように歴史が形づくられたかについて、独自の視点で分析する。クリスマス前の今回は少し趣向を変えて「プレゼント」を“診断”する。

*  *  *
 みなさんは、サンタクロースが実は両親(あるいは祖父母)だったことに気付いたのは何歳の時だろうか。筆者は幼稚園年長組の時の夜半、枕元の靴下に父が希望の品を入れてくれたのを薄目に見て、安心すると同時に少し残念だったのを覚えている。ただ、小学校に上がっても知らないふりをして、希望の品が顕微鏡、スキー、ギター、天体望遠鏡とだんだん高額になっていったのは親不孝者として忸怩(じくじ)たるものがある。

■実在の聖ニコラス

 赤い帽子に白いヒゲを生やし、白い袋を背に、8頭立てのトナカイのひく橇(そり)に乗ったサンタクロースは19世紀半ばの産物であるが、モデルとなった聖ニコラスは4世紀の実在の人物である。

 東ローマ帝国の辺境ミラ(現在のトルコ)の司教としてキリスト教の布教に努め、無実の罪に問われた死刑囚を救ったという伝説や、貧しくて嫁げない娘のいる家の煙突に、夜中、金貨を投げ入れたという伝説が残っている。イタリアでは魔女ベファーナ、ロシアでは青服に身を包んだジェド・マロースと役者は変わるが、クリスマスにプレゼントを贈る習慣は国を越えて伝わっている。歳暮やお年玉もこれに含まれるだろう。もちろん、直接面識のない選挙区民にメロンを贈ったり、かかわりのない役人に昇進祝いや小判を渡したりしてはいけない。

■贈り物の意義

 そもそもヒトは、なぜ贈り物をするのだろうか。

 進化人類学では、両足で立って歩くことを「プレゼント」が進化させたという説がある。従来、二足歩行は、気候変動によって森林が後退し草原を長距離移動することに対する適応と考えられてきた。英国ケント州立大学人類学のLovejoyは、類人猿が森から草原に出て、獲物を森で待つ妻や子どものために持ち帰るには、口を使うよりも両前足を使った方が能率がよく、より遠くからより多くのお土産を持ち帰った個体の子孫に有利な選択圧が働いたという仮説を提唱した。つまり、妻子に対するプレゼントがヒトをヒトたらしめたことになる。

 さらに、類人猿学で世界の最先端を行く京都大学霊長類研究所から、チンパンジーによる実験的研究が報告された。Carvalhoらは、ギニアの森林に作った野外実験場に、どこにでもあって入手が容易なアブラヤシとなかなか手に入らない貴重なアフリカクルミを並べ、チンパンジーの行動を観察した。その結果、アフリカクルミが少ない場合には、チンパンジーはアブラヤシを無視して、貴重なアフリカクルミを口のみならず、両前足(手)を使って持ち帰った。しかも競争相手がいると、限られた資源を奪い合うためにさらに二足歩行の頻度が増したという。

■プレゼントを持ち帰るために

 Lovejoy博士のプレゼント説では、ハーレムを形成するゴリラや乱婚のチンパンジーと違って、ヒトの先祖では生涯分娩数が少なく、生まれた子どもを大切に育てる少産少死が進化した。そのために父親の確実な手助けが得られる一夫一婦の社会制度が主流となった。自分が腹いっぱい食べるよりは、プレゼントを持ち帰って子どもとその母親に与えるようにする父親は、より確実に子孫を残せただろうと推定している。

 面白いことに初期類人猿で二足歩行とともに犬歯の退化が始まり、歯をむいて異性を争うよりは、より多くのプレゼントを持ち帰る方向に淘汰圧がかかったらしい。

 両手が自由に使えることは雌(女性側)にも、児の哺育に自由度が増し、捕食者からの逃走、果物や昆虫など森で容易に手に入り、雄に依存しない食物の採取に有利に働く。直立歩行による難産や椎間板ヘルニア、子宮や膀胱などの臓器脱などのリスクを負っても、いったん確立した二足歩行は後戻りできない。プレゼントをたくさんもらう雌には正面から見たセックス・アピール、すなわち美貌と乳房が進化した。男性がこれに答えるのは、優れた免疫能を担保する健康な外観、外敵に対する防御能力に加えて誠実さと、それを目に見える形にするにはプレゼントという帰結になる。

 ボーナスが出た方は、たまには両手いっぱいにプレゼントを抱えるのも悪くないかもしれない。もちろん懐具合にもよるところではあるが。(文/早川智)

※AERAオンライン限定記事

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