元女囚が考える薬物依存治療――ダルクはもっと「経験者」の知恵を生かしてほしいです

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2019年12月15日 19:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

「東京ダルク」公式サイトより

 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

田代まさしとダルク

 11月6日の田代まさしさんの逮捕はめっちゃ話題でしたが、その後はエリカ様の逮捕もあってか、再逮捕のニュースはひっそりしてましたね。こんどの実刑はどのくらいになるんでしょうかね。 

 今回の田代さんの逮捕は、薬物依存のリハビリ施設「ダルク」のスタッフとして講演活動などをしていたことも、「ダルクの名前を使っておきながらクスリも使っていた」と批判されていました。そもそも以前は「リハビリ施設なんか入らなくても薬物依存は自分で治せる」と豪語していたのに、2回目の出所後に府中刑務所からダルクに直行したのは話題になってましたね。「なら最初からダルクに行けばいいのに……」と言われてもしょうがないかも?

ダルクの代表も過去に覚醒剤を使用していた

 ところで、ダルクについてご存じでした? 改めてダルク(DARC)について考えてみたいと思います。

 公式サイトによると、「ドラッグ(DRUG=薬物)のD、アディクション(ADDICTION=嗜癖、病的依存)のA、リハビリテーション(RIHABILITATION=回復)のR、センター(CENTER=施設、建物)のCを組み合わせた造語で、覚せい剤、危険ドラッグ、有機溶剤(シンナー等)、市販薬、その他の薬物から解放されるためのプログラム(ミーティングを中心に組まれたもの)を行っております。 薬物依存症は、再犯率が極めて高いものです。しかし、適切なプログラムによって回復していくことが可能です」とあります。

 代表の近藤恒夫さんも過去に覚醒剤を使用していたことはわりと有名ですよね。ウィキペディアによると、近藤さんは、アメリカ人の神父さんが運営していた日本のアル中リハビリ施設の職員を経て、1985年に東京・荒川区に「東京ダルク」を作ったそうです。それが今では全国に90にまで増えているのだとか。

 こういう施設が世の中に必要とされているのはわかりますが、地元では「迷惑施設」として反対運動も起こっているそうです。「ポン中は何をするかわからない」ということでしょうか。ホンマはポン中はおとなしいのですが、「アブナイ人」というイメージがあるのは仕方ないですね。

 実は、私も本を出させていただいたせいか、ダルクともご縁があり、時々お話もさせていただいています。それで知ったのですが、ダルクのスタッフの方は全員が「元薬物依存症」というわけではないんですね。まあたしかに「全員が元ポン中」というわけにもいかないですかね(苦笑)。いろんな方がスタッフとして関わっていらっしゃるんですよ。

 もちろん薬物依存になんかならないほうがいいに決まってますが、薬物依存のホンマの苦しさとかは、経験のない方にはわかりません。もっと「当事者」をたくさん入れて、意見を反映されたらどうですかね。たとえば私とかね(笑)。いつでも相談に乗りますよ。

 ダルクは有名なんですから、知名度を生かして、いろいろできることはあると思います。あと、「薬物依存症」は、れっきとした病気です。田代さんもホンマ病気なんやなと思いました。治すには努力や根性だけではムリで、ちゃんと治療を受けることが大事です。

 あとは、居場所や生きがいですね。私は守りたいものがたくさんあるので、なんとか立ち直れました。でも、田代さんみたいになってしまうと、家族や仕事があってもクスリをやめられません。ガチの「病気」やから。

 とはいえ、病気を治すためのお医者さんが少ないのも問題やそうです。お医者さんもエリートやから「ポン中の治療」なんかしたくないんですね。気持ちはわかりますが、専門医の養成とか、ぜひ国家プロジェクトでお願いします。私もお手伝いしたいです。

中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)」

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