木村拓哉は玉森裕太と“三つ星”の両方を獲得できるのか? 『グランメゾン東京』いよいよクライマックスへ

0

2019年12月16日 06:11  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

『グランメゾン東京』(c)TBS

 『グランメゾン東京』(TBS系)第9話が12月15日に放送された。


参考:『グランメゾン東京』はまさにONE TEAM “一流の”役者・料理・演出を揃える木村拓哉の凄み


 3年前のアレルギー食材混入事件の犯人が祥平(玉森裕太)であることを知ったリンダ(冨永愛)は、グランメゾン東京と祥平への復讐を決意。一方グランメゾン東京では、萌絵(吉谷彩子)がノロウィルスで倒れてしまう。三ツ星獲得を目指してメニューのリニューアルに取り組み始めた矢先、休業を余儀なくされたグランメゾン東京だったが、自ら保健所の検査を受けることで危機を脱する。


 『グランメゾン東京』のサスペンスドラマとしての色合いが前面に出た第9話では、栞奈(中村アン)の過去にスポットライトが当てられた。栞奈の父親は外務省の秘書官であり、3年前の日仏首脳会談の会場にエスコフィユを選んだ人物。その昼食会でアレルギー食材混入事件が起き、父親は責任を取って僻地へ赴任した。「エスコフィユのメンバーがいるこの店を潰したいとずっと思っていた」と言う栞奈は、リンダの意図を汲んで、事件の真相を探るためにグランメゾン東京に潜入していた。


 日仏首脳会談の会場を決める際にエスコフィユを父親に推したのは栞奈自身だった。ワイン通の栞奈はワインを主役にする尾花(木村拓哉)の料理に感動し、父に推薦したのだが、そのことが結果的に一家を苦しめることになる。自分が愛するもののせいで家族を傷つけてしまった栞奈は、後悔にさいなまれながら、それでも料理の世界を離れることができなかった。栞奈は「ほとんどの料理人は料理が主役でワインは脇役だと思っている。でも、美味しいワインにはもっと敬意を払うべきなのよ」と持論を語る。栞奈の思惑を知った尾花が国産ワイナリーを栞奈とともに訪ねた目的は、ワインを探すだけでなく、栞奈という人間を見極めるためでもあった。


 栞奈を演じた中村アンは、2019年4月に放送された『集団左遷!!』(TBS系)にも福山雅治が演じた片岡洋の部下役、木田美恵子として出演しており、日曜劇場には今年2度目の出演となる。『集団左遷!!』では歯に衣着せない言動で快活な姿を披露していたが、今回は日曜劇場らしいサスペンスを先導する役回りを見せていた。


 同じ頃、祥平はリンダに自身が犯人であることを伝えていた。動かぬ証拠を手にしたリンダは、フランス大使館のベルナール(マイケル富岡)に通報し、祥平はgakuを去ることに。アレルギー事件の犯人を突き止めたリンダは、真相を特集記事にして公表しようと画策する。第5話でリンダの記事がきっかけでグランメゾン東京は風評被害に見舞われたように、自身の顔に泥を塗った犯人をリンダは決して許さない。祥平をかばって黙っていた尾花も例外ではない。「彼(祥平)は二度と第一線に戻って来られなくなる」と告げるリンダに、「もしうちで拾ったら」と問いかける尾花。リンダの答えは「グランメゾン東京には一生星が付かないようにしてあげる」。それを聞いた尾花は祥平の元へ向かう。


 『グランメゾン東京』でクセの強い料理人として描かれる尾花だが、自身の感情を表に出す場面は多くない。一人涙を流す回想シーンもあったが、料理のことしか考えていないように見えるのは、裏を返せば、たいていのことは胸にしまい込んでいるからと言える。むしろ尾花の人物像は、倫子(鈴木京香)や京野(沢村一樹)、相沢(及川光博)たち仲間の言動から浮かび上がってくる部分が大きい。第9話でも、倫子に「あんたのバロメーターって、全部料理か味だよね」と言われていた。そんな尾花だが、ラストシーンで祥平にかけた言葉は心の叫びそのものであり、魂が震えるようだった。


 ミシュランの星は料理とサービスへの評価だが、その裏には料理人同士の駆け引きや様々な思惑が交差している。グルメの分野に影響力を持つリンダや金にものを言わせる江藤(手塚とおる)のような人物もいて、運やタイミングにも左右されることがしっかりと描かれている。三ツ星獲得は味をめぐる最難関の駆け引きを制することを意味するが、食材の特長を生かし、客一人ひとりのために料理する尾花や倫子の姿勢は愚直なまでに正攻法だ。グランメゾン東京は三ツ星に届くのか。その真価がいよいよ試されようとしている。


■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。


    ニュース設定