AIが苦手な読解力を身につけるためには? 体験版テストを収録した実践本

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2019年12月19日 10:12  BOOK STAND

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『AIに負けない子どもを育てる』新井 紀子 東洋経済新報社
今年、「ビジネス書大賞2019」の大賞を受賞した『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』。日本の中高生は教科書の文章を正確に理解できないという問題に光を当て、28万部を超えるベストセラーとなりましたが、『AIに負けない子どもを育てる』はその続編となる一冊。では、子どもたちの読解力向上のためには何をすべきなのか、その対策や取り組みなどの実践法を公開したものとなっています。

 著者は、国立情報学研究所教授で数学者の新井紀子さん。彼女は2011年から「ロボットは東大に入れるか」(通称:東ロボ)という人工知能のプロジェクトを率いているのですが、AIにとって苦手な読解力の分野が多くの中高生にとっても難しいという点に着目し、「意味を理解して読むことができない」という現象が想定外に広がっているという事実に大きな危機感を抱きます。そこで彼女の研究グループが2016年に考案したのが「RST」というリーディングスキルテスト。本書では、このRSTを体験版として紙上公開し、読解力を身につける方法を明らかにしていきます。

 RSTは「答えが書いてあるのに解くのが難しい不思議なテスト」だそうですが、どんなテストなのか、実際にやってみないとわかりませんよね? たとえば、次の問題。

・幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。
・1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。

 以上の2文は同じ意味でしょうか? 答えは「異なる」ですが、中学生の正答率は57%に留まったといいます。もしかしたら、大人の皆さんの中にも間違ってしまった人もけっこういるかもしれません。

 「子どもの読解力を身につける」とひと口に言っても、こうしたスキルは一日ですぐに体得できるものではなく、「もはや親の自覚を促すことだけでは、この状況の改善を見込めないところまで来ている」というのが新井さんの持論。「すべての子どもに、ゼロ歳から十分に母語のシャワーを浴びる機会、インターネットから切り離されてリアルな外部の世界と接触する十分な機会、そして歩いたり、走ったり、同年代の子どもと喧嘩をしたり仲直りをしたりする機会が保証されるべき」だとし、こうした機会を持つことが「意味がわかって読める」子どもを育てる鍵になると書いています。

 将来、AIに取って代わられないような仕事に就くためには、子どもに基礎的・汎用的読解力を身につけさせることがいかに大事であるか、皆さんも本書を読めばきっと腑に落ちるのではないでしょうか。

そして、読解力は大人にとっても必要不可欠なもの。仕事上のメール、マンションや保険の契約、商品説明書やマニュアルなど、日常生活のあらゆる場面でそのスキルが求められます。子どもだけでなく、大人も一緒に本書のRSTに挑戦し、自分にどのぐらいの読解力が備わっているか把握することをおすすめします!



『AIに負けない子どもを育てる』
著者:新井 紀子
出版社:東洋経済新報社
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