《川口いじめ裁判》市教委・学校・警察、大人がウソをつく異常事態、17歳被害者の叫び

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2019年12月23日 04:00  週刊女性PRIME

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高校2年生になった被害者。中学の卒業証書はいまだに手元にない

「学校や教育委員会は、もうウソはつかないでほしい」

 静かな口調でそう訴えるのは、埼玉県川口市の高校2年生の被害者(17)。同市立A中学入学当初から、入部したサッカー部員にいじめを受け、部員全員が入るLINEからひとりだけ省かれ、無視や暴力。さらに顧問による体罰が加わり、不登校に陥った。

「川口市教育委員会は異常」

 学校に窮状を訴えたが、問題を軽視され、偏見や噂、中傷が拡大。2年生の秋、2016年9月には自傷行為を起こすまで追い詰められてしまった。

 市の不適切な対応に、母親らは'17年6月に550万円の損害賠償を求め提訴。'18年1月にはいじめの記録の開示を求め裁判を起こした(損害賠償100万円)ことはすでに週刊女性でも報じている。

 教育評論家の尾木直樹氏は、

「これは最悪、法治国家とは思えない。川口(市教育委員会)は異常」

 とバッサリ。その損害賠償訴訟の口頭弁論で、市は「法律(いじめ防止対策推進法)として整合性を欠き(中略)欠陥がある」と、国が定めた法律を真っ向から批判した。

 教育問題に詳しいレイ法律事務所の高橋知典弁護士は、

「本人がいじめといえば、何らかの対応をするというのがこの法律です。法に対する蔑視、軽視が見て取れる本音だ」

 週刊女性の取材に対し、市教委はしどろもどろで、

「被害者に対しては可能な限り対応はしている認識です。(いじめ)防止法も(いじめを認めた調査委員会の)報告書も否定していないという認識もずっと変わらない。それに文科省や県からの指導にも速やかに対応していました」

 問題がこじれた背景には、学校や市教委の対応のまずさがある。被害者の母親は、

「学校や市教委も、こちらが頼んだことに対し、“やりました”と言いながら、実はやっていなかったり、私を『モンスターペアレンツ』に仕立てようとしました」

平気でウソをつく大人たち

 学校側の常識はずれの対応の、一端を列挙すると─。

 不登校になった被害者のため、校長が作成した文書『今後の支援体制について』が教職員に共有されることなく、「担任も知らなかった」(母親)。被害者が出席できなかった卒業式の午後、校長が突然、自宅に来たので拒絶すると、卒業アルバムを自転車のカゴに入れて帰った。弁護士が法廷で卒業証書を手渡そうとした。

 裁判には、事実を隠蔽する陳述書まで、校長や顧問から提出されたという。そこには《3年間を通じて1度も直接の言葉で訴えを聞くことができず難しい対応》《訴えは、すべて母親からのみ》と記され、顧問は「いじめの相談を受けたことはない」と、しらを切る。

 

 校長はかつて被害者からいじめの訴えを聞き、謝罪。顧問も相談に応じたことがあったが記憶はウソをつくようだ。

 さらに裁判では、埼玉県警が作成した内部文書に虚偽の疑いがあることも浮上した。

 被害者が受けた暴行について、警察が、聞き取り調査とは正反対の「被害者が2回足蹴りしていた事実があり、原因を作ったのは被害者」という文書を提出したのだ。

 大人らが平気でウソをつく、まさに異常事態。今年3月、川口市の教育長が「初期段階で組織的に迅速な対応が遅れてしまったことで、さらに生徒を傷つけて(中略)お詫び申し上げます」と謝罪したが、当事者からの被害者への謝罪はいまだないという。

誕生日に見つけた怒りと絶望のメモ

 なぜウソをつき続けてきたのか。前出・高橋弁護士は、

「勝手に法律を解釈したり、保身する背景には、教師や教育委員会らが法律より教育論のほうが上だと考え、固執していることが推測されます」

 大人たちが言い訳を重ねるぶんだけ、被害者は傷つく。

「何とか高校に通っていますが、いじめのPTSDで過呼吸になることもあります。息子は大人、学校への不信感でいっぱいです。言うことを信じてくれない、謝ってくれないって。生きていることに絶望し追い詰められています」

 母親は今年、17歳の誕生日を迎えた息子の部屋から、怒りと絶望のメモを偶然見つけた。そこには、

《俺今日で17才だけど生きじごく 何で川口市はウソばっかつく? 裁判もウソばっか ウソをやめろ!》(原文ママ)

 前任の校長、サッカー部の顧問は「係争中」「本日は会議」という理由で取材を拒んだ。

 往生際の悪い教育者らに母親はこう迫る。

「なぜ彼らはごまかしてきたことを認め“ごめんなさい”が言えないのでしょうか。守ってもらえるはずの被害者の息子が、こんなに傷つけられないといけないんでしょう」

 今月25日、次回の公判が開かれる。被害者をこれ以上、傷つけないクリスマスが訪れることを願いたい。

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